● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■156-参-予算委員会公聴会-1号 平成15年03月20日
○大門実紀史君 緊迫した事態になりましたが、続けたいと思います。
 日本共産党の大門実紀史です。今日は、お忙しいところ、お二人とも本当にありがとうございます。せっかくの機会ですので、今日は、先ほどから話出ております構造改革のことについてお二人にお伺いをしたいと思います。
 まず、岩本公述人に伺いますけれども、実は私、この問題、竹中大臣と何度も議論をしてまいりまして、伺っていますと、大体竹中大臣と岩本公述人、同じような考えかと思うので、同じことを聞くとまた同じ答えが返ってくるというふうなやり取りにしたくありませんので、今日は是非自由に、御意見聞く場ですので、分かりやすくいろいろ答えてもらえればというふうに思います。
 ただ、あらかじめ申し上げておきますけれども、経済政策というのは需要面と供給面とやっぱり両方いつも併せて考えていく必要があるということを思います。それと、日本経済、構造問題あるということも、問題点の指摘の部分は違いますが、私どもも思っておりますので、単に何かを先送りするとか早くやるとか、そういう議論で国会で議論してきたわけではないという上で幾つか聞きたいんですけれども。
 まず、不良債権処理の問題ですが、不良債権はない方がいいというのは、これも与野党みんな同じ意見だと思うんです。問題は、どうやってなくすか、あるいはどういうプログラムでなくしていくか、そういうことが中心だと思います。単に先送りということでもありませんので、そういう単純なことを国会では議論しておりませんので、その上でお聞きしたいんですが、岩本公述人に。どちらかといいますと、デフレであろうがなかろうが、需要低迷であろうが急いでなくすべきという御意見を先ほどからお伺いしていると思うんですけれども、そうすると、今、新規にどんどん発生しておりますね、新しく、これはどういうふうにとらえられておりますか。

○公述人(岩本康志君) 小泉政権発足当時の不良債権に比べて、その一年後、金融庁の特別検査によって不良債権が増えたわけなんですけれども、この原因は、私は、それまでの不良債権の査定が甘かったからだと、これが一番大きな原因だろうというふうに考えております。といいますのは、特別検査の対象にならなかった金融機関の不良債権額はそれほど増えなかったということが起こっておりますので、決してこの期間に起こったデフレによって不良債権額が巨額に膨らんだということが理由ではなかろうかというふうに考えております。
 したがいまして、不良債権の問題なんですけれども、デフレによって大きくなるという、失礼、経済の悪化によって大きくなるという問題も起こっているわけなんですけれども、やはりここでしっかり決着を付けなければいけないというふうに私は思っております。
 どうやるかという手順問題なんですけれども、私は、フリーハンドであればいろんなことができると思うんですけれども、やはり政策の連続性ということで、資産査定をだんだん厳しくするという方向で進んでおりますが、これが若干生殺し的になっているという気がしております。実は、こういう問題は、生殺しでやっていますとどんどん銀行がじたばたするわけでありますから、これは一気に決着を付けた方がいいわけでありますが、そのためには、政策の転換といいますか、今までの金融庁が取ってきた政策というものを本当はフリーハンドでいったん撤回して、資産の減額査定といいますか、もっと厳しくするということを本来やるべきではなかったかなというふうに思っております。
 実行可能性が非常に難しいということは重々承知していますけれども、私は政権外部におる人間でありますので、そのように申し上げたいと思います。

○大門実紀史君 もう一つ、この不良債権処理を断固早く進めるべきという御意見の中に、銀行の仲介機能のことをおっしゃっておりましたけれども、私は現場を歩いたりしているんですけれども、もちろん不良債権はない方がいいというのは先ほど申し上げたとおりですが、今、市中にお金が回っていないのは直接不良債権の存在ではないという実態がかなりあると思うんです。
 実際、日銀は超量的緩和でじゃぶじゃぶに供給しておりますし、それが市中に回らないで、これはやっぱり需要が、投資の見込みがないということで、資金需要がないということで、それでお金の行き先がなくて、国債買ったり、あるいはアメリカの国債買ってアメリカの財政支えて、今始まりましたけれども、このブッシュの軍拡予算を支えていると。変なところにお金が流れておりまして、実際には仲介機能が低下しているから不良債権急がなきゃいけないというのは、現場ではもうそういう事態になっていないと思うんですが、いかがお考えですか。

○公述人(岩本康志君) 融資残高は減少しているわけでありますから、企業はお金を返しているわけでありますよね。これは、もうかっていて、それで自分の投資先もなくて、投資先もないので、要するに余裕資金を返しているということであれば正に資金需要がないということなんでしょうけれども、そうではなく、やむなく返す、しかも銀行から返済を迫られて、融資を撤回するということで迫られて、それによって、場合によっては自分の事業を閉じなければいけないということが起こっていれば、これは資金需要がないからお金が回らないのではないと、回らないということではないということであります。
 それで、その国債を買うということなんですけれども、言わば不良債権というのは非常にリスクの高い債権であります。すなわち、もう価値として保全されているのは担保価値だけでありますので、要するに担保に投資しているようなものであります。すなわち、担保は土地ですから、もう丸ごとその土地に投資しているようなことになっています。すなわちリスクの高いものが不良債権であります。
 そうすると、銀行はそれ以上リスクを取ることができませんので、どうしても資金を安全資産の方に振り向けなきゃいけないということで、その安全な投資先として国債に回っているということでありますので、国債をたくさん購入するということは、資金需要がないというわけではなくて、やはり金融、不良債権という巨大なリスクを抱えているからだというふうに私は理解しております。

○大門実紀史君 ありがとうございました。
 それでは、大久保公述人にお伺いいたしますけれども、先ほど、大変示唆に富んだ報告聞かせていただいて、意見陳述聞かせていただいて、ありがとうございました。
 構造改革との関係で、雇用のセーフティーネットというのがずっと、二年前、骨太の方針出たときから言われてまいりました。ちょうどあのときに私は質問したことがあるんですが、五百三十万人雇用というのがぶち上げられて、最近言わなくなったんですけれども、総理も竹中大臣も胸張ってやるんだとおっしゃっていたんですね。あの中身というのは、サービス業で五年間で五百三十万人、つまり一年に百万人ずつ増やしますよ、規制緩和をやったり、不良債権処理すれば新しいところにお金が流れてと、こんな話だったんですけれども、先ほど御報告がありました中に、過去十年でサービス業は三百数十万人増えている。つまり、倍以上のスピードで、三倍近いスピードでサービス業の雇用を増やしますよというのが例の五百三十万人だったんですが、私はもう、これはもう実現不可能と、二年たって、状況を見てですね。
 ですから、構造改革論の大きな一つの目玉でありました、不良債権をやってどんどんつぶしても新しく会社は生まれるんだ、新しく雇用生まれるんだと、これも構造改革論の中身だったわけですけれども、これはもう、私はもう破綻をしていると思いますし、なかなかこの需要低迷の中でそういうふうにならないんじゃないかと。
 つまり、ちょっと専門的に言わせてもらうと、ペティ・クラークの法則というのがございまして、ほっておいても第三次産業増えるんですけれども、なぜ増えるかというと、人々の所得が一定増えて、サービスに対して需要が高まって仕事も増えると、賃金もそこにあるし仕事もあるから人が増えると、こういう基本的な法則があるんですけれども、こんなに需要が低迷している中では、そういうことはもう見込みがないというふうに私は思っているんですが、その点、雇用の関係で、この構造改革論の新しく新規雇用の点はどうお考えでしょうか。

○公述人(大久保幸夫君) 五百三十万人の見込みの問題は、私も全く同感でございます。発表された当時からあり得ないと私は思っておりました。
 ただ、何というんでしょうか、元々雇用は経済の派生需要なので、やはり経済成長をしないと雇用の場は増えないんですね。増えないという前提で何ができるのかというのが現在せざるを得ない雇用対策です。そうなると、一つは、サービス業というものが、そうはいってもまだ潜在的に成長余力があるわけですから、サービス業を活性化させたりあるいはサービス業の生産性を向上させることによって強くして、それによってサービス業の雇用を生み出すことを少しでも支援しようというのが方策だと思っていまして、ちょっと五百三十万人という数字が独り歩きをしてしまったのは、ちょっとこれは不幸なことだったんじゃないかと実は私は思っております。

○大門実紀史君 もう一つ、せっかくの機会ですのでお聞きしたいんですけれども、この不良債権処理で何十万人、何百万人失業者が生まれると私どもが民間シンクタンクの数字を紹介しますと、竹中大臣は、民間シンクタンクなんというのは当てにならない、かなり大きくやり過ぎだというふうに常におっしゃってこられたんですけれども、その点、御意見あれば。

○公述人(大久保幸夫君) 実際に、不良債権処理に伴ってどのぐらいの新たな失業者が生まれるんだろうかという計算は、私は相当難しいんだろうというように思うんですね。
 それを金銭的な計算だけで簡単にやってしまうと、大きくなるか小さくなるかはともかくとして、当たらないというふうに私は思っています。つまり、ある程度環境が厳しくても多くの労働者が、やっぱり会社にしがみつく方が優れた選択肢だと思う人たちも一杯いますし、それを考えずに、いわゆる売上げや生産性だけで何人余るはずだという議論は余り当てにならないというふうに思っております。
 そういう意味では、竹中大臣がおっしゃったことの本意は私は分かりませんけれども、当時発表された見込みについては、私もちょっと大き過ぎるかなというふうには思っておりました。

○大門実紀史君 ありがとうございます。

○大門実紀史君 今日は、お忙しい中、お二人、公述人、ありがとうございます。日本共産党の大門実紀史です。
 最初に鈴木先生、ちょっとお伺いしたいと思います。
 今日は大変新鮮な話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。
 資料の中でおもしろいなと思ったんですけれども、フィンランドのところに、育児休業、在宅育児手当、お母さんたちが育児の賃金を要求したと。日本でもそういう声はあることはあるんですけれども、このときはあれですかね、何かそういう取組とか運動とかが広がって法律になったと。何か日本とは違うと思いますけれども、大したものだなと思うんですが、何かこの辺、御存じのことあれば教えてもらえればと思います。

○公述人(鈴木眞理子君) そのいきさつについては、私は詳しいことは存じないんですが、北欧では労働人口が非常に少ないということで、女性も働くのが当たり前ということになっております。しかし、そのときに、働くのが当たり前だからといってゼロ歳保育を整備すると、日本のようではなくとも、やはり北欧でも人件費が掛かって乳児保育のコストというのは高いわけです。そこで、育児休業が当たり前になっている社会なわけで、じゃゼロ歳でなくても一歳ぐらいまで育てたい方が、自分が家で育てるなら保育に掛かる費用を自分がもらってもいいんではないかと、育児の労働をしているのだからという要求が出てくるのはごく自然のことだというふうに考えます。

○大門実紀史君 ありがとうございました。
 ただ、ちょっと私の方の専門、専門といいますか、担当の方の不良債権等々のお話を熊野先生にお聞きしたいと思いますが、まず株価のことなんですけれども、小泉内閣発足した最初は一万四千円台でした。四千円台でしたけれども、最近は八千円切るというようなところに来ていますが、この株価のこの二年間ぐらいの下落とかあるいは低迷の最大の理由といいますか、いろいろあるとは思うんですが、どういうふうにお考えになっていますか。

○公述人(熊野剛雄君) 最大の原因は持ち合いの解消だと思います。株を売る、買うのはまあとにかく株主ですけれども、投資家ですから、戦後、一九四〇年代から九〇年、八〇年代を通じて形成されたのが約七五%以上、八〇%近くの法人所有でございますから、それが解体されていると。したがいまして、株価が下落するのは当たり前のことであろうと。したがいまして、これは法人所有に代わる新たな固定的な所有、つまり機関投資家が成長して、それによる保有というものが形成されるまでは、株価は下がるし安定しないだろうと思います。
 ただ、現在は、ほぼ解消もかなり底に近づきまして、現在一番行われているのは、年金財政の破綻、これは無謀な低金利政策によって年金財政は破綻していると私は思いますけれども、その結果が、厚生年金の代行部分の返上問題がございますから、その返上に伴って各年金基金が持ち株を放出しております。これが行われているのが大体八千円割れ、この八千円、日経平均八千円の攻防の大体主体ではないかと思っております。
 そういうことでよろしゅうございましょうか。

○大門実紀史君 ありがとうございます。
 次に、インフレターゲット論の話ですが、先ほどからございましたけれども、余り効果がないといいますか、そういうお話だったと思いますが、インフレターゲット論もかなり幅があって、かなり極端なインフレターゲット論、まあ日銀がもう土地まで買うというのまでありますけれども、もしもそれ断行した場合どんなことになるかというのを、何か想像できることがあれば教えてもらいたいと思います。

○公述人(熊野剛雄君) インフレターゲット論というものと、それから日銀にいろんな資産を買わせるというのとは、また全然別の問題がいろいろ混同されて議論されているかと私は思っております。
 インフレターゲットというのは、これは先ほどもちょっと申し上げましたように、ターゲットを提示すれば期待が形成されると。これは金融理論上の仮説の一つにすぎない。金利はいかにして形成されるかと、それはその期待によって形成されるというのが、これがアメリカにおいては通説でございますね。大門先生の御専門の方では、マルクスは何か利潤か何か、剰余価値か何かで形成されるとか、いろいろ仮説があるわけでございまして、期待によって形成されるというのはアメリカにおいて通用している仮説の一つにすぎない。
 したがいまして、唱えれば、それでいかにして仮説が、つまりみんながそう思うようになる、それによって新しい金利が形成されるようになるだろうという具体的なことは、何らその証拠が示されておらないわけでございまして、これは私は空理空論にすぎないと思っておりまして、日銀がやれることとすれば、日銀信用、日銀が供給するのはベースマネーでございますから、いわゆるマネーじゃありませんから、日銀の供給するのは準備であってマネーではないというので、これに関する誤解が多うございます。しかしながら、日銀が供給するマネーが直接需要に供給するのは財政資金の供給、つまり日銀の国債の直接引受けだけでございます。
 ただ、ほかに日本銀行が直接資産を供給するというのは、これは中央銀行のなすべきらちを越えているわけでございまして、もう既にそれは、そういうことは日銀が中央銀行で半分なくなっていると、日銀に中央銀行でない仕事もさせることであって、私は日銀にやらせるべきことを越えていると思います。
 強いてそれをやるならば、かつて株価形成の際に田中角栄氏が大蔵大臣、総理大臣じゃなくて大蔵大臣のときだと思いますけれども、それは日銀資金を使いましたけれども、別途日本共同証券あるいは日本証券保有組合という、共同証券は株式会社で、保有組合はたしか匿名組合であったと思いますけれども、別途の法人、法的主体をそこへ設立して、それで日銀が市中銀行を経由して資金を供給して株価を支えたと、こういう、これはあくまでも中央銀行としての行為、それだけでもやや、中央銀行として取るべきらちをやや越えているんではないかという議論がないでもありません。しかしながら、強いてやれるとすれば、そういうことであろうと。
 日銀自体が日銀の資産においてそういった資産を獲得するということは、私は日本中央銀行としてのらちを越えているものであって、恐らくグリーンスパンその他、各国中央銀行においては笑い者になっているのではないかと私は思っております。

○大門実紀史君 ありがとうございます。
 もう一つ、銀行への公的資金注入という、これをどう考えるか、お聞きしたいんですけれども、かつて九八年のときには、国会では通りましたけれども、国民の中にはかなり銀行に公的資金を入れるのは反発がありましたし、今でもそういう話が出るとかなり反発はあります。その金融システムの安定とかいうことと、この公的資金との関係をどう考えたらいいのか、お考えがあればちょっとお聞きしたいと思います。

○公述人(熊野剛雄君) 公的資金の供給ということと、それから最終的な損失をだれが負担するかということが、しばしば混同されて議論されているかに私は思っております。
 金融システムを安定させるためには、現実に私が先ほど申しましたように、銀行は債務超過状態にあるわけでございますから、したがいましてそれを生かして銀行業務をやらせるためには、これは貸借対照表を健全な状態に戻さなければ仕方がないわけでございまして、このためには公的資金の供給は、これはやむを得ない。これはもうだれが、私に総理大臣、じゃ大蔵大臣ないしは金融担当大臣をやらせていただいても同じことをやると思います。
 ただ、それからある程度とにかく穴が空いて埋まらないわけでございますから、それをだれが埋めるかと。つまり、公的資金の供給、即国民の税金を投入するということとはやや話が違うのではないかと。最終的に損失が確定したときに、それをだれがどうして埋めるか。どうしても国民の税金を投入するのを避けるのであるならば、かなり長期にわたって徐々に穴を埋めていくという方策を取らざるを得ないであろうと。
 現実に、日銀の計算におきましても、既に不良債権は九十兆円処理したわけでございます。九十兆円処理したということは、この十年間に九十兆円始末を付けたのでございますから、したがいまして日銀の計算においては今九十兆円処理して、なお大体四、五十兆円ぐらい残っているんじゃないかと言われておりますですね。そうすると、なおこれ今後四、五十兆円投入するとして、そうすると四、五十兆円、何年間で償却するか。これはもし貸すに時をもってするならば、預金保険機構で、銀行界の負担において十年、二十年あるいは三十年掛けてもいいじゃないかと、そうすれば私は国民のこれ以上の負担は避けられるのではないかなと、私は個人としてはそう思っております。

○大門実紀史君 どうもありがとうございました。
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