● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2005年3月29日 財政金融委員会
○大門実紀史君 まず、IDAに関して質問いたします。
 この法案は、我が党賛成でございます。
 既にいろんな点で質問がありましたので、世銀そのものの評価に、あるいは日本政府の対応について、もう時間も限られておりますから少し大きな観点で大臣にお聞きをしたいというふうに思います。
 若干経過、世銀の経過申し上げますと、これワシントン・コンセンサスという言い方が八九年辺りからありまして、つまりソ連が崩壊した後、世界経済そのも ののイニシアチブをアメリカが取っていこうと、世界各国、特に途上国に対して構造調整、構造改革政策を進めていくと。アメリカ主導のグローバリズムという ようなものがあって、そのワシントン・コンセンサスはその共通理念であって、そこに含まれるのが、世銀だとかIMFだとかアメリカ財務省だとかあるいは FRBというワシントンに本拠地を置くそういう省庁、機関がそういう戦略を取っていたという大きな流れがあったわけですね。
 その一環として世銀の構造調整融資とか構造調整政策が取られてきて、それが途上国に急速な市場経済化とかあるいは緊縮財政とか過剰債務とか福祉の切捨て とかあるいは貧富の差の拡大とかをもたらしたということで相当批判がありまして、NGOあるいは先進国の中からも批判があって、特に世銀の中にいて副総裁 をやっていたスティグリッツが、世銀の中でも批判をするし世銀の副総裁辞めてまた批判をするというようないろんなことがあって、結局、相当世銀批判があっ たところで、先ほどもありましたけれども開発政策融資の方向に転換をしてきたという、こういう経過があると思います。
 こういう経過全体をといいますか、そういう世銀全体を谷垣大臣はどういうふうに見ておられるか、まずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君)  確かに、世銀の在り方については今まで随分議論もありました。大変個人的なことですが、私もう二十年近く超党派のユニセフ議員連盟というのの事務局長をさ せていただいているんですが、ユニセフ等のような子供を中心としたいろいろな援助も、かつては随分世銀のやり方を批判していたこともありましたけれども、 現在ではそういう、何というんでしょうか、対立というものは解消に向かってきているんじゃないかと私は思っております。
 世銀で各国の発言力を示すシェアというのは出資シェアでやっているんですが、先ほどもちょっと申しましたが、日常の意思決定を行う理事会というのはコン センサス形式というので、日本的といえば日本的なのかもしれませんが、コンセンサス形式を基本として運営されていますので、世銀事務局が各国との事前協議 を重ねて、それで特定国の意見だけを反映しないで各国が合意できるというようなやり方を努めてきていただいておりますので、現在は各国の意向を踏まえなが ら、貧困削減であるとか経済成長をできるだけ効率的、効果的に進めるように努めてきているというふうに見ているわけであります。
 それから、グローバルな援助機関として、援助政策の在り方について国際的な議論とか、あるいは現地における援助の協調であるとか、それから環境、住民移 転などのセーフガード政策の在り方について相当積極的な役割を、主導的な役割を果たしてきているんじゃないかなと思っております。

○大門実紀史君 おっしゃるとおりだと思います。
 今回、先ほどもありましたけれども、ブッシュ大統領がウォルフォウィッツさんですか、を推薦するといいますか、その起用問題がこの間もいろんなところで 意見が出ていて、反対だという批判の意見がかなり出ております。先ほどもありましたけれども、ネオコンだからとか経験がないからとか、いろんな批判がいろ んな国から出ているわけですけれども、あるいはNGOからは、元の構造調整政策に戻るんじゃないかとかいろんな懸念も出されているわけですけれども、私は 実はそういうことが問題ではないんじゃないかとちょっと個人的には思っておりまして、日本政府はいち早く支持を表明されたと、その理由は先ほどおっしゃっ たと思うんですが、谷垣大臣はこのウォルフォウィッツさんの起用そのものといいますか、この人事、経過とか何かじゃなくて、日本の対応はもうお聞きしまし た、この人事の意味そのものをどういうふうにとらえておられますか。アメリカがなぜ、ブッシュが今この人をという、この人事の意味そのものをどういうふう にとらえておられますか。

○国務大臣(谷垣禎一君)  なかなか答えにくい、私の頭の中自身も十分に整理をされていないことで、私たちとしては、この間、あれ三月の何日だったか、ブッシュ大統領から小泉総理に 電話があり、私のところにもスノー長官から電話があったわけですが、その時点で、早く後任を選んでもらわないと、今年はサミット等でもやはりミレニアムプ ロジェクトあるいはアフリカをどうするかというのが多分大きなテーマになりますから、そのとき世銀がきちっとした役割を果たさなければなかなかうまく進ん でいかないなと、そのためには世銀のトップの人事というものが早く決まらなきゃいけないと思っておりましたので、ある意味ではウォルフォヴィッツさんが来 て、あ、これで進むなという気持ちもございました。
 それで、世上、先ほどありましたネオコンだ、それがどういう意味だというような議論も、要するに下馬評の中でウォルフォヴィッツさんに対してはそういう 評価もありましたけれども、私は今までのところ、ウォルフォヴィッツさんの御発言も聞いておりますと、やはり貧困削減と経済開発が世銀の主要な任務であっ て、政治的なアジェンダを追求することはしないというふうにウォルフォヴィッツさんも明言されていると。
 それから、借入国のインフラ発展への貢献度合いを高めたいというようなことも言っておられて、もちろん、今まで私見ておりますと、今までのウォルフェン ソン総裁もあるいは十年近くおやりになってやっぱり一種のウォルフェンソン色というのはあって、トップの個性というのはやっぱりそれは出てくると。ウォル フォヴィッツさんもやっぱりこれから何年おやりになるのか分かりませんが、当然個性は出てくると思っておりますが、今のところ伺っておりますと、今までの 世銀の、先ほど世銀も随分いろんな議論をして性格が昔とは変わってきている面があると思いますが、今までの議論を踏まえた対応をお取りになろうとしている んじゃないかと思っております。

○大門実紀史君  私は、ウォルフォウィッツさんの人柄とかネオコンだとかそういうことじゃなくて、この問題にはちょっと意味があるんではないかと、経過をたどると意味があ るんではないかと考えているところでございますので、谷垣大臣の意見をお聞きできればと思いますけれども。だから、タカ派だとかネオコンだとか、あるいは 元の構造調整に戻るんじゃないかとか、そういうことではなくて、これはブッシュ戦略の新しい展開ではないかなというふうに見ております。
 例えば、前任の先ほど言われましたウォルフェンソンさんだって、クリントン時代ですけれども、あの方は投資会社のソロモン・ブラザーズの会長さんでした から、元々金融資本の方ですからね。クリントン時代、民主党政権のときは、どちらかというと金融ビジネス的に世界戦略を、展開を考えるという時代でしたか ら、それにふさわしいウォルフェンソンさんだったと思うんですけれども、今度のウルフォウィッツさんはちょっとまた意味が違って、構造調整政策に戻るとい うことは私は余りないんじゃないかと。今の世銀の路線の中でおやりになるんじゃないかと私は思います。
 なぜかといいますと、例えば今の世銀の開発政策融資だって、基本的には途上国が自主的に決定した改革プログラムに沿って融資をするということですね。こ れはあり得ると、それの、その筋でやられることはあり得ると。例えば、仮にイラクだとしますね。イラクの、アメリカの支援を受ける政権だと思いますけれど も、その政権が独自に改革プログラムを立てて、それに対して世銀が融資すると。これは正に今の開発政策融資に沿うわけですからね。何もその元に戻ると、元 のやり方に戻るということではなくて、ウォルフウィッツさんはそういう筋でやられる可能性は十分あると思います。
 問題はですね、問題は、これはやっぱりもう少し大きくとらえる必要があると思っておりまして、三年前ですか、ブッシュ・ドクトリンというのが出ました。 国家安全保障戦略ですね。私、全部読みましたけれども、国家安全保障のドクトリンの割には経済のことがかなり書いてあってちょっと驚いたんですけれども。 つまり、アメリカはいわゆる単独主義とか先制攻撃主義とかだけではなくて、自由経済を、まあ括弧付きですけれども、自由経済を世界に広げると、この先駆的 役割を果たすんだというのがかなり書かれておりました。そのターゲットといいますか、その周辺の文章を読みますと、ターゲットはイスラム社会、中東だとい うことがかなり明瞭に出ていたわけですね。
 そういうブッシュ・ドクトリンがあって、いわゆるネオコンの方々がこう入ってくると。ネオコンというのはただの新保守主義、タカ派ではなくて、かなりも うそういう業界からの出身者多いわけですけれども、利権といいますか、いろんな業界とのつながりの多い方々です。特に、この間でいえば石油利権とか、そう いうことでつながっている方はかなり多いわけですね。ですから、ネオコンというのは単に政治的タカ派じゃなくて、何といいますか、クリントンのときは金融 資本と一緒になったことが多かったわけですけれども、今度のネオコン、ブッシュの場合は、どちらかというと重厚長大産業とも一緒になって、もちろん金融投 資戦略もありますけどね。
 そういう中で、このウォルフウィッツさんが今出てくると。で、ウォルフウィッツさんというのは、中東の民主化とか中東の自由経済化とかをかなり主張され てきた方だというふうに思います。ですから、私は今回のウォルフウィッツさんの起用というのは、単にタカ派だからどうのこうので見るんじゃなくて、やっぱ りブッシュ戦略でちゃんと見ないと間違うんじゃないかと。つまり、イラク戦争ありましたけれども、ありますけれども、中東へのあめとむちがあるとします ね、むちの方は軍事戦略ですけれども、このあめの方を担う、そういう使命をかなり色濃く帯びて、このウォルフウィッツさんは今回世銀の総裁に起用された と。わざわざ何でウォルフウィッツさんなのかと、そうじゃなければですね、私はそういうふうに見て取るわけです。
 したがって、そういう深い意味がある人事で、だとすれば、日本政府としても、単に早く決まった方がいいとか、別にあの人問題ないんじゃないかとか、そう いうのじゃなくて、そういうことを見抜いた上で、見抜いた上で、私たちとは立場は違うかも分かりませんけれども、それはそれで、アメリカの筋が通っている ということで判断されて支持されるというのは分かるんですけれども、何となくじゃなくて、私はそこまでこう見ているものですから。特に、谷垣大臣は昨日も 次期総理という声がかなり出る方ですし、ただ、私、四年間ここに座っておりますけれども、大臣変わるたびにそういう声は出て、出なかったのは塩川大臣ぐら いだと思いますけれども、そういうこともありますけれども、見識のある方だというのは立場は違っても思っておりますので、そういうちょっと分析をした上 で、支持するかどうかというのはきちっとお考えいただくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君)  今後、ウォルフォウィッツ新総裁の下で世銀がどういう方向に進んでいくかというのは、やはり私たちは余り予断なく見ていかなきゃなりませんし、私どもとし ては世銀というのは大事な機関だと思っておりますから、やはり開発戦略として日本の主張すべき点は主張していかなきゃいけないと思っております。
 そういう中には、かなり今、先ほどもちょっと申しましたけれども、長期間にわたって経済の低開発国の安定的な経済発展を考えながら、インフラ整備に目配 りしたり、その国のやはり、何というんでしょうか、クレジットカルチャーというのか、そういうものを育てて、長期的な発展に、成長に結び付けていくような 成長戦略を一番強く主張している国は私は日本ではないかと思っておりますので、世銀の中でも予断を、ウォルフォヴッツさんがどうされるか予断を持たずに、 日本は日本としてそういう主張をしていくべきではないかと思っております。
 その上で、なるほど大門委員のような分析もあるのかなと思って聞かしていただきました。昨年はG7は議長国がアメリカでございまして、財務大臣会合で も、今おっしゃったような中東から北アフリカの開発援助をどういうふうにしていくかというのが議長国であるアメリカからかなり強く提案をされたという経緯 もございまして、そのアメリカから出られた、今のアメリカの現在の政権、この間までおられた方が世銀に来られるということは、そういったような提案とも全 く無関係ではないかもしれません。私どもも、予断は余りしないで、できるだけ幅広く見て、日本の主張はきちっとしていくということでいきたいと思っております。

○大門実紀史君 終わります。
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