● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2005年4月7日 財政金融委員会
○大門実紀史君 大門でございます。今日は御苦労さまでございます。
 今日、中国の人民元についてお聞きをしたいというふうに思います。
 なぜ人民元かというと、ちょっと話すと長くなるんですけれども、お手元に資料をお配りいたしましたけど、各国の米国債保有高の推移です。この問題は何度 もこの委員会でも予算委員会でも取り上げさせていただきまして、この前の予算委員会では民主党の峰崎議員も取り上げられました。つまり要するに、日本が円 高介入をする、それでドルを買う、で、外貨準備が増えてこういう米国債を購入すると、こういうことがずっと増え続けてきている問題ですね。これ、今日民主 党の平野先生からありましたとおり、ドルが急落したら大変な為替差損を生んで、かつてそれで大損したことがありますけれども、結局は巡り巡って国民負担に なりますから、そういうリスクがもう目の前にあるという問題でございます。
 これに関して財務省には何度も質問してきたわけですけれども、最近ヨーロッパは、この載っておりますイギリスを除いて米国債から引き揚げ始めておりま す。アジアは、引き続き東アジアは保有しているんですけれども、東アジアも、外貨準備という点でいくとドルだけに集中しない方向に今なりつつあるという話 も聞いております。
 そういう中で、二番目に米国債を持っている中国がこれからどうなるかと。中国も米国債から引き揚げていくということになると、何度も指摘しているように 日本がその分また買わなければいけない、買わされるというふうな状況になるというリスクがあるという意味で、その人民元の動向に大きく左右されると思いま すので、その点をお聞きしたいと思うわけですけれども。
 せっかくの機会ですので、まず総裁、絶えず円高介入のためにドル買いやるわけですけれども、この円高というのは、かつての円高不況のときと違って今随分 いろんな環境が変わっていると思うんですけれども、そんなにセンシティブにすぐ円高介入しなきゃいけないというほど今円高というのは全体として悪いことな のかどうかですね。総裁のお考え、もし、お聞かせいただければと思います。

○参考人(福井俊彦君)  日本経済の力が強くなり、そして日本経済の運営あるいは政策運営に対する信認が高いという状況の下では円の国際的な評価が上がると。つまり、円高という言 葉が本当にいいのかどうか分かりませんが、とにかく市場の評価として円が強くなるということは当然ある傾向ですし、そのこと自身は、国民的な努力の成果と して経済全体が良くなっている、政策運営がいいということの結果ですので好ましいことだということだと思います。
 実際、日本経済、過去数か年趨勢を見ますと、緩やかな円高傾向は進んできているわけですね。最近油の値段が非常に上がっていますけれども、日本の通関輸 入価格をドル建てと円建てで見ますと、円建てで見た場合の油の値段の上がり方は非常に少ない、それは要するに通貨高の好影響を受けていると。そういうふう に、通貨が高くなるということは何も悪いことばかりではないということは委員御指摘のとおりです。
 それから、個々の企業の関係から見ましても、従来のようにとにかく輸出オンリーというふうな企業はだんだん減ってきています。一つの企業が非常に輸出も していれば輸入もしている。なぜ輸入しているかというと、中国を始め海外に生産拠点を設けて、そこに投資もし、結果としてそこから輸入していると。あるい は、そのほか全く中国その他アジアの企業から輸入しているというふうに、貿易関係もワンウエーではなくてボースウエーというふうに変わってきていますの で、そして投資行動ということまで含めて考えますと、為替相場が変化した場合の影響というのは、従来のように単純に円高すぐ収益減というふうにはなりにく いところがあります。それもまた事実でございます。
 しかし、さはさりながら、やっぱり非常に短い期間の間に為替相場がいずれかの方向に大きく振れると、しかもその先の方向がいわゆるボラティリティーが増 したということで乱高下を繰り返すということになりますと、いかなる態様のビジネスモデルを持っている企業にとってもやっぱり事業計画というものをきちん と立てにくいと。事業計画を立てたとおりに決算が出てこないというふうなことでは、やっぱりその企業の経営に対する評価というものがなかなか安定しないと いうことになりますし、やっぱり経営上は非常に大きな問題だということになります。
 それは、積み重なると経済全体の、景気の動きにも不確実性を増すということになりますので、やっぱり過度の変動をなるべく避けるという点は世界共通の重 要な課題と、したがってG7等でもしばしば真剣な議論が行われるというのはそういうところにあるんじゃないかと思っています。

○大門実紀史君  基本的に私もそういうことだというふうに思いますが、今財務省は、何といいますか、もう外貨準備巨額のを持っていますから、ドルが下がることそのものが外 貨準備の目減りということで、もう買わざるを得ないと、ドルを買い続けなきゃいけないというような、自縄自縛といいますか、もうドル買いのわなにはまって いるんじゃないかということを再三指摘をさせていただいてきたところですけれども、ちょうど、通告しておりませんけど、武藤副総裁、かつてその財務省を指 揮してこられましたけど、今どういうふうにお考えですか、その円高介入については。

○参考人(武藤敏郎君) 今、日本銀行の副総裁ということでありますので、財務省のいろいろ施策に余りコメントを直接加えるのはいかがなものかなとまず基本的に思います。
 そういうことをお許しいただいた上で、先ほど総裁から為替についていろいろお話がありましたけれども、私は、この為替レートというものが経済のファンダ メンタルズに沿っているということが大事なのであって、どのレベルが高いか低いかというのを直接議論するのは適切でないといいますか、いかがなものかなと いうふうに思っております。したがって、経済が強くなっていくに従って為替が変動するということは、これはマーケットにおいて通常起こり得ることでありま すので。
 そういうことだと思うんですが、しかし、実際のマーケットはしばしば思惑とかそういうことによってオーバーシュートすることが起こるわけでありまして、 それが今度は逆に実体経済にマイナスの影響を及ぼすということは、これは何とか避けたいということかと思うわけであります。そういう意味で、今まだ我が国 経済、少しずつ回復軌道に乗ってきてはいるわけですが、なお脆弱な状況の中で、仮に実体経済を反映しない急激な円高ということであれば、それは安定的な為 替レートを維持するために介入というのは政策手段として許されているのではないかと。
 ただ、その結果、御指摘のようにいろいろ問題が起こるというのは事実でありますけれども、やはりその兼ね合いといいますか、安定的な為替レートの実現と いうことはやっぱり非常に重要なことでありますので、それとの兼ね合いにおいて、これは正に財務大臣において御判断さるべき事柄であろうと、そういうふう に理解をしております。

○大門実紀史君  そういう日本の状況が続いている中で心配されるのは、人民元がどうなっていくかということを心配しているわけですけれども、お手元の資料にあるとおり、中 国は二番目に米国債を保有していて、これが引き揚げていくのかどうかということなんですけれども、外貨準備も中国は今日本に次いで六千百五十五億ドル、日 本が八千三百五十二億ドルですから、世界で二番目の外貨準備を持っているわけですけれども、この中国の動向が、先ほど言いました、ヨーロッパも引き上げて いく、アジアも引き上げていく、中国も引き上げていくと日本が、アメリカが赤字を垂れ流しているわけですけれども、その穴埋めをさせられるということがますます強まるんじゃないかという点で、人民元の問題ですけれども、人民元というのはなかなか私もまだよく分からないところがありまして、分かりにくい通貨 でありますけれども、基本的にドルペッグといって、ドルと連動させる、ドルに固定させるような、言ってしまえば固定相場制、ドルに対して固定相場制みたい なところであります。したがって、中国がドルと元とのレートを維持しようとすると、どうしてもドルを買わなきゃいけないということが、中国当局の介入が続 いて、先ほど言いました中国の外貨準備が積み上がり、米国債をこうやって買うというふうになってきたんだというふうに思います。
 その中国が今、人民元を切り上げるべきだというふうな話があちこちから、おととしですかね、アメリカのスノーさんですか、財務長官がいろいろ言及されて から特に話題になっておりますけれども、最近はちょっと鎮静化しているのかどうか分かりませんが、いずれにせよ、人民元切上げという話がかなり出ておりま すし、私も去年中国へ行きまして、中国の財務省の方とずっと何日間か一緒でお話しすると、それは考えなきゃいけない方向ではあるということで、いろいろ今 検討しているんだというお話もありましたけれども。
 まず、その人民元が、ちょっと時間がないのでかいつまんで質問させていただきますけれども、人民元が切り上がっていくとすると、当然通貨と通貨との関係 で考えますと、ドルを買わない方向に、人民元とドルとの関係でいくと、人民元が切り上げるとドルを買わなくていい方向に基本的な理屈として進むんじゃない かと思いますが、その辺、簡潔にちょっとお答えいただけますか。

○参考人(福井俊彦君)  委員御指摘のとおり、今の中国の為替制度というのは、厳密な意味での固定平価というよりは、一九九四年に採用された管理変動相場制と、ごくわずか動いてい いよということなんですが、実際には動いていないという意味で事実上の固定平価相場、一米ドルが八・三元というところで固定されている。その固定するため に中国の政策当局は市場で大量の介入をしているということですので、これを少し動かすということになれば、その動かしていい部分だけ介入の必要性が下がる と。したがって、その部分は外貨準備の積み上げ方が減るということは確かだと思います。

○大門実紀史君 ですから、切上げするかどうかというのも非常に難しい議論があるようです。
 いずれにせよ、単純な切上げだけやるといろんな副作用が起きると。例えば、中国の方にお聞きしますと、今投機マネーが相当中国に入っていると。人民元切 り上がるだろうということを見込んでかなり入ってきていて、この間の外貨準備の半分は投機マネーじゃないかと言うエコノミストの方もいらっしゃるぐらいで ございます。そうはいっても、中国当局も、単に切上げじゃなくて為替制度そのものの柔軟化を考えているというふうな話も聞いたりしているんですけれども。
 具体的にいつごろからそういうことになるかという点でいくとすると、これは一つの私の勝手な推測で御意見聞きたいんですけれども、九九年にアメリカと WTOの加盟交渉で、中国は二〇〇七年から外資の銀行に対して開放するといいますか、いうことを約束していると思うんですけれども、外資系が中国に入って くると、今のドルペッグ、固定相場というのはかなり、それだったら入ってこないという可能性もあったりしてかなり、二〇〇七年という約束らしいですけれど も、二〇〇七年までには為替制度の柔軟化あるいは切上げも含めたそういう動きをしなければいけないような一つの目安になっているといいますか、そういう客 観状況になってくるんじゃないかと思いますが、その辺は総裁、どういうふうに見ておられますか。

○参考人(福井俊彦君)  介入によって固定相場を守っている状況から、介入を緩めてその相場を少し動かすと投機マネーが誘発されやすいというのはおっしゃるとおりですね。とにか く、投機マネーというのは、一体どこまで為替が動くものかということが分からない限りは限りなくアタックしてくる。したがって、中途半端に相場を動かし始 めると、かえって投機マネーを呼びやすいということはもう当然だと思います。
 普通は必ず相場というのは経済の均衡点を求めて動くわけですから、市場関係者は相場が均衡点に近づきつつあると思ったら、それ以上の投機は絶対しないで すね、もう自ら損をするようなものですから。ところが、中国の場合に、人民元を操作することによって市場が自ら均衡為替相場レートを見いだしやすい条件に あるかというと、そこがなかなか難しいんですね。WTOに加盟したといっても、中国経済の実態は国内的にはまだ多くの規制を残している。資本移動も部分的 な自由化はしたといっても、まだ多くは不自由である。それから、金融システムもお金を最も有効に流すような機能度の高い金融システムになっていないとかい うふうに様々なことがございます。
 したがって、今中国政府が本当に苦しんで懸命になって検討しておられることは、人民元を技術的にどうするかということよりは、むしろそうした国内の様々 な規制、資本移動、金融システム、こういったものをいかに整備しながら、人民元を動かしたときに、その人民元の為替相場が言わばファンダメンタルズといい ますか均衡レートを見いだしやすいような条件を国内的にいかに整えるかということの研究の方がきついんじゃないかと思っています。
 今おっしゃいました二〇〇七年、外資系の金融機関に門戸を開放するというふうな話は非常に重要なファクターですが、それだけでは私はやっぱり、中国当局 の検討対象としては一つの重要な課題でしょうが、それ以外のもっと広範囲な規制緩和とか資本移動、金融システム絡みのことを総合的に検討しておられるん じゃないかと。したがって、タイミングについてなかなか中国当局がおっしゃりにくい状況というのは、そういう問題の幅の広さ、根の深さにあるんじゃないか というふうに思っています。

○大門実紀史君  いろんな条件がもちろん必要だというのは私も思いますが、一つは、やっぱり二〇〇七年が一つの大きな変化のときになるんじゃないかなというふうに思います し、切上げも含めてですけれども、特にこのドルが急落したら為替差損を生むという点では中国も同じでありまして、ドルが一割下がると中国のGDPの三・五 %に匹敵する為替差損が生まれるという試算もありますから、中国は米国債から、ドルから、ドルにこれからもっと入るんじゃなくて引く方向になるのは、私、 二〇〇七年に向けて間違いないと思うので、日本の通貨、財務省もそれに合わせて、さっき言ったきちんとした日本の判断を持たなきゃいけないときが来ている というふうに思います。
 最後に、そういう中国の、今日本銀行と中国人民銀行でいろんな意見を交換をされていると、私は大変いいことだなと思っておりますので、もしお話しできる範囲で、どういうふうな意見交換されているか、最後にお聞きして質問を終わりたいと思います。

○参考人(福井俊彦君) 日本と中国の間には、公的部門、民間部門を問わず、年々この関係強化を図る動きが進められているということは、私ども金融政策を行います立場からも、周辺の環境が進んでいるということで好ましい状況だと受け止めています。
 日本銀行自身は中国の中央銀行であります人民銀行と、もうかなり古い時期から、ずっと以前から親密な関係を持っています。ただ、単に心情的に親密というんではなくて、実務面を中心にした実務的な交流というものを非常に深めてきております。
 人民銀行、日本銀行、それぞれが金融政策とか金融機関に対する対応の仕方など、実際にどうやっているかというふうなレベルから、正確な情報を持ち合うと いうことをやってきておりまして、これはもう大変長い歴史を持っています。三十年以上なって、まあそんなにはなっていないと思いますが、かなり長い間やっ ていると思います。実際、総裁以下様々なレベルでのより広い交流ということになりますと、もう三十年以上の歴史を持っています。
 そして、円と人民元とを交互に融通し合う日中間のスワップ協定というふうなものも、これは非常に特色あるものでございますが、持っていると。そして、人 民銀行は東京に事務所を開いていますが、我々も北京に事務所を開いているというふうに、これはもう中央銀行間の関係としては、まず足らざるところがないぐ らいに緊密な関係を結んでいます。
 したがいまして、為替相場をめぐる議論についても、日本の過去の様々な経験について中国は真摯にこれを知りたいというふうなこともあります。私どもも十 分情報提供を差し上げていまして、非常にそういう意味から人民銀行は真剣に検討しておられるということは承知しております。
 だけれども、具体的にどういうふうな内容になっており、かついつごろどんなことをやりそうなというふうなことは、これは政策的秘密でありますので、そこまではお互いにジェントルマンとしてタッチしないと、こういうことでございます。

○大門実紀史君 終わります。
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