● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2009年4月9日  財政金融委員会
日銀の個別企業への直接支援を批判
○大門実紀史君 大門でございます。
 白川さん、一周年ということで、おめでとうございます。
 大久保さんの資料、また今日の毎日新聞の社説もそうですけれども、白川総裁の評価というのはどんどん上がっているようでございますけれども、世間の評価が上がれば上がるほど私の評価は下がるという関係にございます。
 一年前とは大違いだなというふうに思うんですけれども、まあ大変な一年だったというふうには、その点は同情はしているんですけれども、私は日銀に一貫して申し上げてきたのは、こういうときですから何もおやりになるべきではないとは決して申し上げているわけではございませんけれども、中央銀行ともあろうものが個別経営、個別企業、個別銀行の中身に入るようなことはおやめになるべきだということを再三申し上げてきたわけでございます。それは、幾ら金融システムの安定とか美辞麗句並べても、結局は市場経済のメカニズムを壊してしまうものになりますよということを申し上げてきたわけでございまして、もう多くを述べる必要はないんですけれども、そういう点でいくと、今回の劣後ローンの問題とかもまたまた踏み出されたなというふうに思っております。
 バブルのときはみんなが踊るというのがありますけれども、こういうパニックのときはみんなが右往左往して、打つ手でいえばもう何でもありと、行け行けどんどんと。行け行けどんどんという点ではバブルのときと似ているわけですね。バブルとパニックというのは、どうしてこうやってみんな同じことをやるのかといいますか、人間というのは浅はかだなというふうに思うわけですけれども。しょせん日銀のこの間の対応も、私は思うんですけれども、しょせん人間のやることだなと。まじめな顔をして議論されているかも分かりませんけれども、大した話じゃないんじゃないかなというふうに私は見ているところでございます。
 CP、社債、国債の買い増し、銀行保有株の買取り、劣後ローンの引受けと、異例の措置だというのは自覚されているようでございますけれども、何といいますか、一回一線を越えてしまったといいますか、人間というのは一度一線を越えるともう行き着くところまで行ってしまいますから、何かもうどんどんどんどん行っちゃっているんではないかという心配を私はしているんですけれども。
 例えば、日銀が今までCP、社債、国債買い増しいろいろやって、これまた買い増しやられますけれども、それに対して市場といいますかマーケットといいますか、反応が良くないとかそれじゃ足りないとか株も上がらなかったとかいろいろあると、更に何かやらなきゃと、何かやらなきゃいけないというふうな、そういう深みにどんどんはまっていくというふうな状況に少しなっているんじゃないかなと思いますけれども、白川総裁、率直な心理状態といいますか、どういうふうにお考えになっているか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(白川方明君) お答えいたします。
 まず、一番最初にお話のございました評価ということについて。
 これは、私自身に対してもそうですし、それから日本銀行全体に対する評価ももちろんそうでございますけれども、中央銀行の政策に対する評価、過去の評価をずっと見ていますと、いかに移ろいやすいかというのを常に感じております。これは、バブルのときの日本銀行の金融政策あるいはバブルが崩壊した直後の金融政策、それからゼロ金利、量的緩和のときの金融政策もそうですし、それから近年ではグリーンスパンの下での金融政策、いずれもその時点での短期的な評価と五年たち十年たった時点の評価は随分変わっているというように思います。
 そういう意味で、私自身は、仮に短期的な評価としてポジティブな評価をいただいた場合でも、あるいは否定的な評価をいただいた場合でも、日本銀行に課せられた使命に即して、つまり長い目で見て物価の安定を実現し経済の持続的な発展を図ると、その一点に照らして行動をしていきたいということでございます。それで、その上で、今、大門議員が御指摘になった点については、私自身は常にその問題は考えている、考えていると言うと非常に大変失礼な言い方かもしれません、それは意識している、重く受け止めている問題意識でございます。これは私に限らず、他のボードメンバーもスタッフも同じ思いでございます。
 中央銀行の組織というのは、先ほど大塚議員の御質問の中にもございましたけれども、これは非常にこの民主主義社会の中にあってユニークな組織だという感じがします。つまり、目的はこれは国会ではっきり規定をして、その上で、その時々、完全に政府と同じように行動しますと、これは結果として通貨への信認が失われるという苦い長い歴史を経て現在のこの仕組みができているわけであります。
 そういう意味で、中央銀行は全く独自に行動しているわけではもちろんありません。しかし、一方で、中央銀行に課せられた大きな意味での使命達成ということも日本銀行法の中でしっかり考えないといけないという、その両者のバランスでございます。
 現在、異例の政策を取っておりますけれども、確かに人間は、これは金融機関も中央銀行もそうですけれども、一回異例の政策をやりますと、だんだんそれが何か当たり前になってくる、そういう心理状態というのは私は非常に怖いものがあるというふうに感じています。
 今回、アメリカのバブルがなぜ起きたのかということを考えてみた場合に、これはいろんな理由がございますけれども、一つの理由として、これはアメリカに限らず世界的に低金利が長く続いたということは一つの要因として指摘できるというふうに思います。じゃ、そのときになぜそういうことになったのかといいますと、今思い起こしてみても、皆さん御記憶にあると思いますけれども、例えば二〇〇三年が特にそうでしたけれども、世界的にデフレのリスクということが喧伝されたわけであります。そのデフレのリスクを強く意識する余り様々な当時としてやっぱり異例の措置がとられて、米国でもとられたわけでございます。
 往々にして、危機の後の様々な問題に対処するためにいろんな政策を取って、それがまた次の危機の温床になるということは、これは長い経済の歴史、金融の歴史を見ますとよく見られる現象であります。一方で、しかし政策当局が手をこまねいたために大きく不況に陥った一九三〇年の経験もございます。
 そういう意味で、これは正解があるわけではもちろんございませんけれども、常にバランスを意識しながら中央銀行として使命を達成していきたいというのが、抽象的ですけれども、私の思い、感想でございます。

○大門実紀史君 先ほど大塚さんの資料面白いなと思って、伝統的、非伝統的の話ですけれども。本当にどんどんどんどん非伝統的な方向に、これ、ずっと右へ行けば行くほど社会主義に近づいちゃうんですよね。これ、自己矛盾なんですよ、括弧付きですけれどもね。括弧付きですけれども、社会主義的な、こうなるんですよね。だから、どうなっているのかなというふうに思っているところでございます。
 要するに、せっかくですから大塚さんのこの表を使わせてもらって言いますと、要するに日本の場合は、この金利政策が手の打ち方がもう余り手数が残っていないと。しかし、何かやらなきゃいけないと。それで、この非伝統的な、やったことないところですね、何かやらなきゃいけないというプレッシャー多分すごいと思うんですよね。そうすると、もう金利政策そのものは日本はアメリカに比べてそんなにばんばんやらなきゃいけないほど、そこまではまだ至っていないんですけれども、とにかくやらなきゃいけないとなると、金利政策でもう打つ手が少ないというか、余りやらない。だから、非伝統的なといいますか、やったことないことをやらなきゃいけないと、何かそんな程度の話じゃないかなというふうに見ていたりするわけですけれども。
 今大事なことを言われたので一つだけ。もういろんな議論する気はありません。一つだけ、国債の話だけ申し上げておきますけれども、銀行券ルールの問題ですね。つまり、今、日銀の発行している銀行券の残高七十七兆円だと。日銀が保有する長期国債の残高の上限は七十七兆を超えないようにするという話ですよね。それが一つの歯止めだというお話をされたわけですけれども。私は、これは先ほど言った両方バランス考えながらとおっしゃりながらちょっと危ないなと思っているのは、逆に言うと、七十七兆までオーケーと、七十七兆までは保有しますというメッセージにもなっているということですね。これはやっぱり気を付けてもらわなきゃいけないと思うんです。
 つまり、本来保有すべきじゃないという立場でいえば、もちろん今撤廃しろという声が多いので、それで逆に反論といいますか、守りますとおっしゃっているのかも分かりませんけれども、余りこの七十七兆といいますか、日銀券の発行残高が上限だと、そこまではやりますみたいに聞こえる場合もありますので、そこは逆に気を付けていただきたいと思いますし、もう一つ意見だけ申し上げておきますと、劣後ローンですけれども、これも日銀はまず自己資本、自力で各銀行が資本増強すべきだと、それはもうそのとおりですよね。二番目が、金融機能強化法を使ったらどうかと、ティア1の関係ですよね。で、劣後ローンですか、これでティア2やったらどうかと。この三つの方法があると、選択肢があると。
 日銀は、その三つ目の劣後ローンでティア2のところを補強する、安全弁として用意したと、こういうふうにおっしゃっておるわけですけれども、これほとんど、金融機能強化法もこの委員会でやったんですけれども、ほとんど使われないんです。使われていないんですよね。北洋銀行だとかありましたけど、あんなのはうさんくさいんですよ。金融庁が頼んだ可能性が高いんですよね。ほとんどニーズがないんですよね。さらに、この日銀の劣後ローンも私ほとんどニーズがないんじゃないかと思っていますけれども、何かやらなきゃ、出しただけみたいなふうに私は非常に感じるんです。
 そんなことを繰り返していると逆に中央銀行の信頼性を失いますので、出すなら効果のある、ニーズがあるという点でやるべきだと思いますけれども、じゃ劣後ローン、私はニーズがないと思いますけれども、どうとらえておられるか、それだけ聞いて質問を終わりたいと思います。

○参考人(白川方明君) 劣後ローンについては、今、大門議員御指摘のとおり、これはあくまでも安全弁として用意したものでございます。
 その安全弁ということの意味を少し申し上げたいんですけれども、現在、日本の金融機関は、マクロとして見た場合に、資本制約があるがために貸出しを大きく絞り込まざるを得ないという状況ではこれはございません。ただ一方で、短観の結果にも出ていますとおり、金融機関の貸出態度について厳しいというふうに回答する企業が増えていることもこれは事実でございます。実際の貸出しは今、実は他の国と違って日本は増えているわけなんですけれども、しかしなぜ企業がそういうふうに感じているかということを考えた場合に、金融機関からしますとそれなりの理由はやはりあるんだというふうに思います。
 それは、先々、例えば世界の金融システムがまた混乱する、その過程で株価が下落するという可能性も排除できないなというふうに市場参加者が思いますと、それは当然株価が下がり、金融機関の自己資本にも影響してきます。そのときに、金融機関はできるだけ自力でやっていく、これはこれでもちろん立派なことなんですけれども、しかし、個々の金融機関が自己資本を、基盤をしっかり守るというために頑張れば頑張るほど、実は全体として信用は収縮し、一種の合成の誤謬が生じてしまうということを我々は強く懸念しています。
 そういう意味で、今直ちに使うニーズがなくて、むしろない状態の方が望ましいわけですけれども、しかしそういう安全弁がないと、最後、経済の収縮の危険性はやっぱり排除できないという、そういう意味で、これは非常に苦渋の選択ではございますけれども、今議員が御指摘の点も十分認識した上で決断したものでございます。

○大門実紀史君 終わります。
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