● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2009年5月8日  消費者問題に関する特別委員会
(午前の部)
○大門実紀史君 日本共産党の大門でございます。
 本当に、藤原参考人がおっしゃったクリティカルシンキングというのは大変重要なことだというように思います。私も何でも疑ってかかるようにしておりますので、参考人の皆さんの話も本当かなと思いながら聞くところもございましたけれども、まず消費者教育のそもそも論について、西村先生のお話、本当かなとちょっと思っちゃったものですから、お聞きしたいと思いますけれども。
 私は、個人的にはこの消費者教育という言葉が余り好きではございませんで、何か上から教えてやろうというか、自立させてやろうみたいな、そういうものでないんじゃないかなと。もちろん被害防止のために情報伝達するとか啓発するとか、重要なことですし、子供たちに、まさに藤原参考人が言われたように、生きる知恵みたいなものですね、これを身に付けるというのは非常に重要なことだと思いますが、特にこの消費者基本法における消費者教育の位置付けには以前からちょっと疑問を持っておりまして、消費者基本法というのは消費者政策の基本理念をちょっと変えましたですよね。消費者保護から消費者の権利尊重と同時に消費者の自立支援というふうに転換したわけです。私はこれ、消費者基本法全体を評価しておりますけれども、ここのところはちょっと危ない転換をしたなと思っていまして、大体自立支援という言葉がいかにうさんくさいかというのはもう最近分かってきているわけですね。障害者自立支援法がそうですけれども、当時はよくはやったわけです、この自立支援というのは。すっと入っちゃったんだと思いますけれども、その次に来るのが自己責任論が来るわけです、必ず。自立を支援してあげる、教育してあげる、その後は独り立ちするんだと、後は自己責任ですよということが暗に来るわけですね。
 ですから、私は国会で多重債務とかやみ金とか保険金不払とかマルチ商法とか割賦クレジット被害とか、特に悪質商法をずっと取り上げてきましたけれども、その世界でいきますと、だまされる方も悪いんじゃないかとか本人のせいもあるんじゃないかというふうなことが絶えずあって、自己責任論ですよね、それが本来もっと早くやるべき法改正が遅れてきたとかいうふうに、こう感じるものですから、この消費者教育が自立支援で後自己責任にまでつながるような流れはちょっと違うんじゃないかと私は思っておりまして。
 ただ、西村参考人も、事前にいただいた資料では、政府は消費者への自己責任を求める前提として消費者教育を一層強化する立場を取るようになってきたというように、ちょっと危ないなということは認識されたときがあったと思いますけれども、そもそも論なんですけれども、この消費者教育というのが自己責任を押し付けていく前提として行われるということは私は大きな間違いじゃないかと思いますが、西村参考人の御意見を聞きたいと思います。

○参考人(横浜国立大学教育人間科学部教授・日本消費者教育学会会長西村隆男君) 御質問ありがとうございます。
 まさにこの消費者教育が自己責任論の肩代わりというか、そういうことであってはならないのは当然のことでございます。強いて言えば、自己決定力を付けるための、まさに藤原参考人もおっしゃっているところの批判的思考力あるいは意思決定力というものを付けるというのが本来の意味の消費者教育で、先ほど時間の関係で十分お話しできませんでしたが、アメリカから移入された消費者教育というふうに申し上げたかと思うんですが、アメリカでも消費者教育の柱というのはまさにクリティカルシンキングと、それからデシジョンメーキングという考え方でございまして、結局、物事を二面、三面から見ていくという力でございます。ですから、そのことによって、経験を積みながらスパイラル的に思考力を高めて、自己決定できる力を養っていくということでありまして、決してそれは、今のおっしゃるような悪質商法における、一方的な自己責任論を押し付けられて、だからしっかりクーリングオフも覚えておけよとか、だまされないようにしろよということが消費者教育だというふうには考えておりません。
 つまり、この消費者教育のあるべき姿というのを考えたときに、本人が品質を見極めたり企業を判断したりする力を身に付けさせるということでいいますと、どうしても先生おっしゃるような上からの、当然消費者教育というのは主体があって客体がある、だれかがだれかに教育というのは仕向けて、ただしそれは一方通行ではないわけですね。これは啓発と違う点で、情報提供と違う点で、相互作用なわけですね。ですから、その対象となる子供たち、あるいは高齢者、会社にいる人たち、そういう人たちが自ら学習意欲を持って反復、継続しながら自らの能力やスキルを高めていくということが不可欠でございまして、それは決して本人に対する責任転嫁をしようということではないというふうに思うんですね。
 ただ、私が考えますのは、やはり消費者教育というのはそれだけで完成するものではなくて、私はよく言うんですが、やっぱり規制と教育というのはある種、車の両輪であると。ですから、一方で事業者に対する規制あるいは消費者保護のための制度設計をしていくということが必要ですけれども、やはりその一方で、消費者も学習をする機会を与えて、本人がそれなりに知識を身に付けて、スキルを身に付けていきませんと、やはり新たなビジネス戦略の中に巻き込まれていくということも十分考えられるわけで、そういう点で消費者教育の必要性というのはあると。
 言葉として消費者教育より消費者学習と言う方がもしかしたらいいのかもしれませんが、私どもの学会も残念ながら消費者教育学会という名前を付けておりますので、消費者教育で名前は統一させていただいているところでございます。
 以上でございます。

○大門実紀史君 ありがとうございました。
 藤原参考人は本当に今日直接お話を聞けて良かったなと思っております。是非本も読ませていただきますので、勉強になりました。
 ちょっと時間の関係で申し訳ありませんが、日和佐参考人に質問をさせていただきます。
 実際に企業の現場でコンプライアンス等を見てこられて、二つのことをお聞きしたいんですけれども、先ほども少しございましたが、企業の側からの重大事故報告という制度は一応あるんですね。重大事故報告・公表制度というのがあるんですけれども、これまさに重大事故で、死亡とか重症にかかわるような限定されたものでありますし、対象も限定されております。むしろこれからは、余り細かい事故は別として、一定の事故はどんどん企業が自ら報告していく、発表、公表していくと。その方が企業の未来にとってもいろんな意味でいいんではないかというふうに思うんですけれども、そういう企業自身の事故の報告制度の在り方について日和佐参考人はいかがお考えかという点が一つ。
 もう一つは、雪印等々でも感じることがあるんですが、公益通報者保護制度というのが今度消費者庁の方に所管になるようでございますけれども、これそのものも今のままでいいのかということが私、問われているというふうに思います。諸外国の通報制度とはやっぱり違うな、まだ限界があるなと思います。具体的に言えば、まず社内で解決しなさい、それが駄目だったら監督官庁に言いなさいと、その次に外部に言っていいですよみたいな、何段階かあって、その過程の中でなかなかこの制度が機能しないとかいうこともあるわけですね。いろいろ問題点があると思いますけれども、この通報制度についていかがお考えかという、この二つの点について御意見をお聞かせいただければと思います。

○参考人(雪印乳業株式会社社外取締役日和佐信子君) まず、企業の事故情報の開示ですけれども、先ほども申し上げましたように、大きな重大事故でなくても消費者にかかわる問題を起こした場合、それは積極的に公表をしていくということが非常に重要なことだと思います。ですから、そういう観点で企業が積極的に自社のデメリット情報ですね、マイナス情報ですね、自社にとってはマイナスだけれども消費者が必要だと思っている情報については積極的に開示をしていく。
 そこで、一つ問題なのは、これが変にマスコミが取り上げて、こんなことまでやっていたというようなことで過大に報道されることを企業は非常に恐れます。ですから、そこは冷静な社会の対応というのが一方では必要で、過敏な対応をすれば、企業は大したことがない情報だと思えばそれが消費者にかかわる情報であっても開示をしなくなってしまうわけですね。ですから、そこは社会がどう受け止めるか、マスコミがどう受け止めるか、消費者がどう受け止めるか、そこが冷静な受け止め方をするということとのバランスも必要なのではないかというように思っております。
 一つ事例を申し上げますと、トランス脂肪酸が問題になったことがあります。マーガリンにはトランス脂肪酸を含有しておりまして、そして食品安全委員会は日本人の平均的な摂取量であるならば問題ないという情報を出しました。けれども、消費者は具体的に雪印のマーガリンにどのぐらいのトランス脂肪酸が入っているか、そこを知りたいわけですね。雪印乳業はこれはもう本当に社内で激論をしたわけですけれども、データが出ておりましたので、それは開示をすることにいたしました。
 そのようなことがちゃんと世の中に、これは非常に好評だったんですね、世の中にきちんと受け止められていくということになれば、企業にとってデメリットな情報であっても開示をしていくことになるということになると思います。まずは、でも消費者にかかわる情報については開示をしていくようにということを促すことが必要だというように思います。
 それから、おっしゃいますとおり、公益通報者保護法は二段階になって、まず社内に言っていけ、そこで解決しなかったら社外に出していい。これはもう一元的に、構わないから社外に言ってもよいという制度にした方がいいと私も思います。
 それから、受付場所が今は様々にあるわけですよね。ですから、例えば事故米に関しても、農林水産省に情報は内部告発して行っていたんだけれども、それへの対応が非常に遅れたという事実があります。そういうケースはたくさんあるわけです。
 ですから、個別ではなくて、どこか一つに相談窓口等が設けられて、とにかくそこに言っていけば、そこから関係の部署に回されて、なおかつ、それがきちんと解決されたかどうかまでチェックできるというような新たな仕組みというものが必要ではないかというように思っておりますので、それは消費者庁が設置された後には是非前向きに検討をしていただきたい事項だというように思っております。

○大門実紀史君 日和佐参考人のペーパーの中に社員教育、社員研修というのがございますね、消費者教育の中で。私も、消費者教育というと、まさに買う方の、消費者の側の教育というふうに考えられがちなんですけれども、サプライサイドといいますか、まさに企業のそういうコンプライアンスをずっと見てこられてお考えになったことだと思うと、非常に重い提案だと思います。
 西村参考人にお伺いしたいんですけれども、この消費者教育の中で、企業の中の消費者教育といいますか、企業の中の教育も必要だと思いますけれども、その辺はいかがお考えか。

○参考人(西村隆男君) 消費者保護基本法から消費者基本法に変わりましたときに、消費者教育の場の中に、これまで学校、地域、家庭ということであったところに職域というのが加わったと思うんですね。それはまさに、なかなか学ぶチャンスのない、あるいは企業の中にどっぷりつかり込みますとなかなか、自分も本来消費者であるはずなのに消費者であることを忘れてしまうということで、それが必要であるという認識だと思われます。
 やはり私自身も、社員教育あるいは何年次研修とか、そういった中で是非やっていただきたいですし、またその消費者相談の窓口というようなものが社内にあってもよろしいんじゃないかと。社内の社員の方が相談できるような、まあ労組を持っていらっしゃるところなんかでは多重債務の問題を受けたりするようなこともあるようでございますけれども、そういったことで常にサプライヤーでありながら消費者であるということを認識させるような機会を定期的につくっていただけたら有り難いというふうに思っております。

○大門実紀史君 もう時間が来たのでやめます。
 私が申し上げたかったのは、加害者になるかもしれない側の教育という意味でございますので、是非そういうこともまた今後検討していただければと思います。
 ありがとうございました。


(午後の部)
ジャーナリスト川戸惠子君及び信州大学教授樋口一清君

○大門実紀史君 大門でございます。本日は御苦労さまでございます。
 川戸参考人はTBSでございますか。私は、TBSは大変すばらしいなというふうに思っております。消費者問題で一番熱心なのが、この間いろいろお付き合いしていますけれども、TBSじゃないかなというふうに思っております。私の質問も何回も取り上げていただいておりますので、先進的なメディアじゃないかなというふうに思っているところでございます。
 せっかくの機会ですので、私もちょっとメディアの消費者問題の報道について思うところがございますので、別にTBSという意味じゃありませんですよ、全体の報道の在り方なんですけれども。
 とにかく、偽装表示にしろ何にしろ事故が起きると、そうすると、まずメディアが行って徹底追及が始まるわけですね。犯人捜しがまず一番になってしまって、もう徹底的にたたくわけですよね。うその上塗りでもしたら大変なことになって、もうバッシングがすごくなるわけですね。ちょうどそういうときに限って、そういう会社からたたかれやすい顔の人が出てきたりして、もう徹底的にやられて、国民も映像で見ていて、ああ、どいつが悪いんだと、こういうところにずっと引き込まれてしまうところがあるわけですね。
 その一方で、本当の事故原因の究明とかあるいは消費者に伝えるべきこととかが、全くやっていないわけではありませんけれども、後になったりするところもありますし、あるいは危険をただあおるだけというようなことも報道の姿勢としていかがなものかなと思いながら見ているところもあるわけです。
 ただ、記者の方々とお付き合いしていますと、みんな、社会部の人といっても日替わりメニューでやっているんですよね。その問題だけやって、また違うテーマで行くわけですね。そうすると、結局同じことが繰り返されてしまうと。
 私は、消費者庁ができるきっかけで、各報道局も、テレビ局等も含めて、この機会に消費者室みたいなものを中につくられた方がいいと、外から教育してくれとかじゃなくて自ら報道改革をされるべきじゃないかなというふうに、ちょうどいい機会じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○参考人(ジャーナリスト川戸惠子君) 先ほど私がちょっと申し上げましたメディア教育というのはまさにその点でして、やはり消費者庁の広報室とメディアがどういうふうにするか。今までの単なるPRの広報ではなしに、それから自分の間違ったところを隠すための広報ではなくて、やっぱりお互いに賢い消費者になる。メディアの取材者もこれは消費者ですから、そういうところをやっぱりつくっていくという先生の御意見には全く賛成でございます。
 それから、ただ、逆に言えば、私たちは発表されたものを追いかけるというところもございますよね。そうすると、今回の豚インフルエンザ、新型インフルエンザの例がいい例だと思うんですけれども、あれは早いうちから、まずは豚は関係ない、これは熱すれば大丈夫だということも言いましたし、それから逐一、どんな方法で検査をして、これがなぜこんなに検査結果が遅れているかというのは、アメリカに検体があって日本にはないからこれはどれだけの時間が掛かるというのを、それを全部一々発表しているわけですよね。
 逆に言えば、それは政府側の広報の対応が今回はうまくいっているということであって、それは何もメディア側だけの問題ではなくて、やはりどういうふうに広報するか、逐一公開するか。先ほど樋口先生がおっしゃったように、一々公開をして、それでその段階でのものを発表していって、それがなぜ遅れたか、なぜ発表できないかという理由を付ければ納得できるわけですよね、メディアもそれによってそれをちゃんとお伝えするわけですから。
 そういう方向で、より良い広報というんですか、そういうより良い広報をみんなでつくっていくということがすごく大事だと思います。

○大門実紀史君 是非努力してもらいたいと思いますけれども。
 川戸参考人の御提案、ほとんど私も同意するところなんですけど、一点だけちょっとお考え違うのかなと思うところだけ意見を聞きたいと思いますけど、資料の一番最後のところに書いてございますが、スクラップ・アンド・ビルドの徹底の中で、国民生活局、国民生活センター、各省の消費者対策室など関連組織を統合と書いてございます。私は、むしろ、特に各省にある、ないところが多いんですけれども、消費者対策室などは各省の中にきちっと、ないところは置けと、この機会に置けと、その方がよっぽど効率的に消費者庁も動きやすいと。どこかにこれまとめてしまいますと、もう各省庁にそういうセクションがなくなっちゃうと。もう産業育成組織に完全になっちゃうというよりは、むしろ統合しないで置いた方がいいと、セクションをきちっと置いた方がいいと。昨日も参考人の質疑の中で全国消費者団体連絡会の参考人の方が同じことを御主張されておりましたけど、私はそういうふうに思うんですけれども、ここに書かれたことの意味をちょっと教えてもらいたいと思います。

○参考人(川戸惠子君) これは、スクラップ・アンド・ビルドの徹底という意味で、何もこんな大きな窓口とかそういう対応室を置くことはないと。やっぱり消費者庁の中にもそれぞれの省庁関係のそういうことが分かる人をまずは持ってこなきゃいけないというのがありまして統合というのを書きましたけれども、今、大門さんのおっしゃったように、やっぱり各省庁にはそれは残しておかなきゃいけないというのは当たり前だと思います。小さくても強力な権限で各省の省庁を全部動かすぐらいの意気込みで消費者庁やっていただきたいんですが、そのためにもそれに対応するセクションはやっぱり残しておく必要はあると思います。全く賛成です。

○大門実紀史君 ありがとうございます。
 樋口参考人にお伺いいたします。
 これからは、もうこの委員会でも議論されているとおり、消費者庁ができたらすべてうまくいくものではなくて、地方の消費者行政がどう前進するかがかぎだというふうに思います。そういう点で、体制、予算も大事なんですけれども、私は、同時に、地方自治体そのものがどういう指針を持って、方向性を持ってやっていくのかということも厳しく問われてくるんじゃないかなと思っているところです。
 そういう点で、長野県の消費生活条例に大変関心を持っておりまして、一番遅れてできただけあって大変いいものができているんじゃないかというふうに思っております。こういうものは全国に普及する必要があるんじゃないかなと思っていまして、実は、私の友人がちょうど長野県で消費者運動にちょっとかかわっているもので、できる前のときからいろんな情報をもらっていて、今実際に条例も手元に持っていますけれども、大変優れた条例だなというふうに思っております。
 率直に言って、一番遅れてできたというのはありますけれども、既にあるわけですよね、全国に。ところが本当に機能してきたのかというのを非常に強く思うわけですし、長野県が今の段階では多分一番優れた条例になっていると思いますけれども、少なくとも長野レベルの条例に、それ以上のものにしてほしいと思いますけれども、変えていく必要があるんじゃないかなと私は思っているところでございます。
 そういう点で、幾つかこの条例そのものを苦労して作られたことも含めてお聞きしたいと思いますけれども、樋口先生の資料の中にも一文字だけ書いてありますが、立証責任の転換というのがあります。
 これは私、大変重要なことで、要するに、十八条のことをおっしゃっているんじゃないかと思いますけれども、不実の告知、これは消費者問題をやっている人たちには分かりやすい言葉ですけれども、要するに、うその説明ですね、虚偽の説明の疑いがある場合、疑いのある事業者に対して、その説明が事実なのかどうか、このことの立証責任を事業者に課すと。私、大変画期的なことを入れられたなと思っております。これは東京と茨城、あと一つ二つぐらいのところしか条例に入れていないんじゃないかと思いますが、そういうものを採用されたんだなと思います。
 これ、説明の合理的根拠を示すような資料がなければ県としては、長野県としては不当取引だとみなすという強いものが含まれているので非常に画期的だと思いますけれども、これを今回この条例にわざわざ入れられた背景といいますか、そういうものがあればちょっと教えてもらいたいなと思います。

○参考人(信州大学教授樋口一清君) 長野県の条例は、これまでの各県の取組の一つの最大公約数という形でまとめられたものというふうには言えると思いますが、まだまだ委員会の中でも議論がありまして、実現していない部分もございます。委員会自体が最近はすべてオープンになっておりますので、記録にはいろいろ残ってはいるんですけれども。
 今御指摘の立証責任の転換の部分ですが、私ども、特にこれが重要だと考えますのは、消費者被害の迅速な救済ということでございます。特に、個々の消費者の方が立証するということはもう不可能に近い。特に、今悪徳業者などはプロでございますから、法律とか条例に触れないようなぎりぎりのところでいろいろなことをするという実態がありますので、そういったものに対してきちっと行政が対応していくためにはそのような形で立証責任を事業者側に課すということが重要ではないかと。
 もう一つ言えば、実はこれはどこの県もそうなんですが、消費者行政自体が十分なスタッフを持って行政をするほどの余裕がないというのが実情でございます。相談員の方がせっかく努力をして問題があるということに気が付いても、行政そのものに、行政の方も大変日夜御尽力されていますけれども、手が回らないというふうな状況もございます。そういうところにプロの業者、プロというか精通した業者がいるわけですので、明らかに問題があるということが分かっていても、今まで実行、処分、指導ができなかったということが他県でもいろいろあったのではないかと。
 そこで、そういう行政そのものの機能を高めるという意味でもこういう形を取ったということと、実はそれと併せて、不当な取引行為の類型の中に、ちょっと細かい話になりますが、準ずる行為というのを設けまして、脱法行為を許さないと。要するに、不当な取引行為として掲げたもの以外のことをする人間が必ずいます。ぎりぎりのところで取引行為の条文に書いてないことをすると。そういうものに対しては、準ずる行為を入れて、更にその立証責任を転換すると。こういう形で、悪質業者、悪徳業者が横行するようなことがないようにという条例を作ったということでございます。

○大門実紀史君 はい、分かりました。
 もう一つは、先ほど情報の集中の問題お話しされましたけれども、私、もちろんいい条例だと思うんですけれども、そう簡単に情報がきちっと都道府県段階に、長野県に集まるのかなというのを心配しております。
 例えば、警察が得た事故情報とか消防署が得た事故情報、そう簡単には来ないですよね。あるいは事業者が持っている情報、こういうものが都道府県にきちっと集まらないと消費者庁にも行かないわけですから、一番大事なのは現場、まさに現場の情報がどう集まるかだと思うんですけれども、長野県の中では警察あるいは消防署等々、今情報の交換ではどういうふうな関係になっているか、ちょっと教えてもらいたいと思います。

○参考人(樋口一清君) 長野県では、今回の条例制定に合わせて県庁内の十二の課室の係長レベルの方々が消費生活庁内連絡員制度というものをつくりまして、おっしゃった警察などの方もメンバーになっていまして、定期的に個別の事業者情報等を交換するという形がスタートしておりまして、これをうまく活用していただきたいというふうに私ども思っております。

○大門実紀史君 最後にもう一つ樋口参考人にお聞きいたします。
 形と道具はそろったということだと思うんですが、例えば東京都の条例は私はなかなか優れていると思うんですけれども、その東京都もなかなか、ひどい事例があったんですけれども行政処分を打とうとしないとか、あるいは、ほかの県では全く行政処分を一度も打ったことがないとか、そういうこともあるわけですね。実際にやるかどうかというのは今度は本当に問われるわけですけれども、長野県の場合も。そういうことのいろんな議論も反省もあったかと思うんですけど、そういう権限を使わないといいますか、実際に何もしない都道府県、こういうものは、何が原因で今まで、私なりに思うことはあるんですけれども、私の意見を言う場ではありませんので、樋口参考人として、なぜそういうことが今まで行われなかったのかという点はどういうふうに分析されておりますか。

○参考人(樋口一清君) 私は、行政というものは、ある面では消費者の意識というものを反映する部分があるんではないかと。私がこの場でも人材の養成ということを申し上げましたのは、消費者市民社会といいますか、市民全体の消費者問題に関する意識を高めることによって行政の背中を押すことができるのではないかと。そういう努力を並行して進めていかないと、消費者庁ができても、消費者庁だけで、消費者庁の担当の方が幾ら立派な方で一生懸命やっても、それだけでは問題解決しないだろうと。やっぱり消費者運動、あるいはより広く市民の方々のそういう意識、そしてその問題を指摘をしていく、透明で公開された行政の中でそういう意見を言っていくと、そういう形が大事じゃないか。
 長野県でも是非そういう形を実現したいというふうに思っております。

○大門実紀史君 時間になりましたので終わります。ありがとうございました
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