● ● ● ● 大門みきし Daimon Mikishi  ● ● ● ●


■2004年12月1日  法務委員会
○大門実紀史君 大門でございます。
 今日はちょっと畑の違うところに出てきておりますので、是非分かりやすい簡潔な御答弁をお願いできればというふうに思います。
 まずお聞きしたいのは、素人なりに考えても、司法というのは国の骨格を形作るものであって、その司法に携わろうとする司法修習生というのは国民的に言えば、何といいますか、国の宝みたいな、かなりそういう貴重な重要な存在だと私は思うわけです。
 今日、議論をお聞きしておりますと、先ほども財政の効率性だとか費用の問題、とにかく財政上の問題がいろいろ言われておりますけれども、本当は法務省としては、そういう制約がなければ、本来この司法修習生に対してもっと手厚くしてあげたいというのが本当の法務省の本音ではないかというふうに思っているところですが、この点を大臣はどのようにお考えですか。

○国務大臣(南野知惠子君) 法曹に関連いたしまして、法曹を質、量ともに充実させるため司法修習生の大幅な増加が求められております。もう先生御存じだと思います。また、このたびの司法制度改革を実現していくに当たりましては、国民の負担を伴うことにつきましてその理解を求めていく必要があろうかというふうに思っております。
 このような状況にかんがみますと、今後も更に国民の負担を増やして給費制を維持するということについて国民の理解を得ることは困難ではないかというふうに考えられております。そこで、司法修習生が修習に専念できる環境を確保しながら給費制を貸与制に切り替える必要があると、これもやはり国の関与でございます。
 このたびの貸与制への移行は、単に財政事情が厳しいからというようなことではなく、国民のための司法制度改革全体を実現するため財政資金をより効率的に行っていこうとするものでございます。今までの給費制もこれも正しかった、そして、今改革していこうというこの道筋も私は正しいものであろうというふうに思っております。

○大門実紀史君 私、お聞きしたのは大臣のお気持ちの部分ですので、それを後ろからペーパーじゃなくて是非答えていただきたかったと思うんですけれども。
 要するに、今も出ましたけれども、財政的な問題が何だかんだ言っても最大の理由として、効率化という言い方、いろいろありますね、合理化とか。いずれにしても財政問題でございます。それを理由にして給費を貸与にすると、私は、ただそんな程度の話だったのかと、この給費制度そのものがですね、非常に、そんな話だったのかというふうな疑問を、素朴な疑問を感じます。
 戦前から、司法試験合格者のうち裁判官、検察官になる方は有給でやってきたと、それで弁護士になる方は弁護士試補ということで戦前は無給だったわけですね。それが、戦後、司法試験合格した者すべて司法修習生にして有給にするという改革が行われたわけです。
 ならば、お聞きしたいと思いますけれども、戦前、まず、司法官試補、つまり裁判官、検察官になる者を有給にした理由は何なのか、戦後の改正で弁護士さんも有給にした理由は何なのか、お答えいただけますか。

○政府参考人(山崎潮君) まず、戦前の制度でございますけれども、この制度については余り記録がはっきり残っていないので断言はできませんけれども、いろんな資料から分かる範囲でお答えを申し上げます。
 まず、そのすべての司法官試補、これに給与が支給されていたのかどうかという点も、支給されていなかったというふうに発言されている方も、そういう方もいたという発言もございまして、ここも余り定かではございません。それからまた、支給されていた理由についてもなかなかこれはっきりしたものはございません。
 ただ、その司法官試補は、官選弁護人、今の国選弁護人と同じでございますけれども、それとして刑事弁護を行うなど、現在の司法修習生とは権限がどうも異なっていたという点が一つございます。それから、当時は、裁判官やあるいは検察官、こういうふうになる者に対しては国から給与を支給するということは当然だと考えられていたと、そういうような発言をされている方もおられるわけでございまして、そういうことでこのような制度が設けられていたというふうに理解をしております。
 それから、戦後ですが、これが理念が変わったという点につきまして、これも国会の議事録、余りはっきり言っているものがないわけでございますけれども、基本的には、その給費制は法曹の職務の重要性にかんがみまして、司法修習生が生活の基盤を確保して修習に専念することができるようにして、その修習の実効性を確保するための一つの方策として採用されたというふうに理解をしております。
 ただいま御指摘の、非常に公的な仕事をこれからやっていくじゃないかという点についてはそのとおりでございまして、したがいまして、国庫で修習を行うと、この理念は非常に大切であるということでずっとこれは守っていきたいということでございますし、今後もそういう点は続けていきたい。ただ、給与を支給するか貸与にするかというのはまた別の配慮で行っていくと、こういうことでございます。

○大門実紀史君 私は、給費と貸与で大きな違いがあると思っておりますんでここのところにこだわるわけですけれども、要するに、修習に専念してもらうと、その義務を課すということだけだったらば戦後間もなくだって貸与にすることもあり得たんじゃないでしょうか、そのときにね。なぜ、そのときに給費にしたかと、貸与でなく給費にしたのかということが聞きたいわけです、お分かりでしたら。

○政府参考人(山崎潮君) これも資料がなかなかなくて、若干推測にわたるところあるかもしれませんが、お許しをいただきたいと思いますが。
 まず、戦前から戦後の初めのころ、法律家が非常に少なかったと思います、全国的にですね。やはり、国策として法律家を育てていくと、こういう政策があったんだろうと思います。当時は、司法試験の合格者、第一回目辺り二百数十人でございまして、しばらくは三百人台というような時代が続いたわけでございまして、そのぐらいの人数でやっぱり国策として法律家を育てるということに理解があったと、こういうことであるというふうに思っているわけでございます。
 今後は、これが三千人時代になっていくわけでございますし、法律家が現在足りないといいながら、戦後のときの足りなさよりははるかに多くなってきているということで、十分に育ってきているだろうと。それから、このように給与を支給している例というのがほとんどないと、こういうことで国民の理解が得られるかどうかと、こういう点で事情が変わったと、こういうことでございます。

○大門実紀史君 ただ、それは山崎さんの、この資料がないわけですからね、そのときなぜそうしたかという資料がないわけだから、今の時点で、かつ山崎さんの御意見としか聞こえないんでね。
 私は、財政支出上の問題で、財政上の問題でということで今回給費を貸与にするということから考えますとね、財政というのは今確かに厳しいですね、国の財政、厳しいと。だから、厳しいから給費にするか、貸与にすると、こういう問題ではなくって、戦後で間もなくだって財政厳しかったわけですよね。それでも給費にしたと。それは国策だと、何らかの国策があったと思いますけれどもね。それは今だって私は通じるものがあって、もう少し給費にした意味は重いものがあったんではないかというふうに、例えば財政に余裕があったからやってきたと、今余裕がないから貸与にするというのはこれ変な話だと思うんですよ。国の財政というのは、余裕があろうが厳しかろうが、厳格な支出を求められるわけですからね。最初から、そんなこと今更、今ごろ言うんだったら、最初から貸与にすればよかったじゃないかというふうに言われてしまうような事柄だというふうに私は思います。
 ですから、私は何人かにお聞きすると、もう少し、何といいますかね、この司法修習生に対する位置付けがきちっとして給費にしたというようなことを書かれている方がいらっしゃいます。その当時のことを知っていらっしゃる方ですね。つまり、司法に携わる者、その卵に対する、何といいますか、もっと金で考えるような話じゃなくって、もっと厳粛な、もう少し崇高な位置付けがあったんではないかと。だから、国民の皆さんも、何といいますかね、それに対して、そういう若者たちに対して、ある意味では敬意を抱いたり期待をされますからね、それを理解してけちを付けるということもなかったんではないかと。
 今だって、国民の多数は私はそう思っていらっしゃるというふうに思います。国民の理解が得られないとかおっしゃいますけれどもね、だれがそんなことを一体言っているのかと。そんなアンケートでも取ったんですか、取られていないですよね。これはもうレクでお聞きしましたから、時間の関係で聞きませんけれども。
 私、要するにこんなことを一々けち付けているのは財務省じゃないかと、非常に強く、私、ふだん財政金融委員会おりますんでね、感じるんです。
 もう一つは、今回非常に初めて、初めてじゃないかと思うんですけれどもね、財務省の財政審建議で、受益と負担の観点からと、受益者論というのが初めてこの司法修習生の話に持ち込まれております。私はこういう問題を受益者論で考えるべきではないというふうに思いますが、法務省、いかがお考えですか。

○政府参考人(山崎潮君) ただいま御指摘のように、財政制度等審議会ではそのような御意見があったということはそのとおりでございます。私どもも、こういう御意見は一つの意見ということでありまして、これがすべてを決めたわけではございません。
 先ほど、統計とかみんな意見聴いたのかということでございますが、この前身に司法制度改革審議会というのがございまして、その中でもかなり議論がされまして、法曹の方は給費制を維持すべきだという意見が強かったと思いますけれども、それ以外の方については、やっぱりもう例外はなくすべきだという意見がかなりあったと。
 それから、私ども検討会でも、これ、もう二年間にわたって十分議論したんですけれども、最終的には、一人の反対を除いて全員が給費制をやめるべきだと、こういう御意見で、特に、法律家以外の方の強い御意見もございまして、やはりこれは国民の声を反映しているんではないかというふうに思います。

○大門実紀史君 受益者。受益者負担、どう思われますか。

○政府参考人(山崎潮君) 受益者負担ですか。受益者負担という……

○大門実紀史君 負担論。受益者負担論、お聞きしたんですが。

○政府参考人(山崎潮君) 受益者負担論というのは、それはやはり、その受益者だから、当然そういうものを負うべきだろうとかですね、それからこういうものを支払うべきだというような、その受益者というような、そういう観点ではないだろうというふうに私は考えております。

○大門実紀史君 私もそう思うんです。だったらば、何でそういう声に抵抗されて給費制度守らないのかと。だって、この貸与制度という制度そのものは受益者論ですよ。貸与制度というのは受益者論なんですよ。この制度、皆さんが提案されているのは、そのものが受益者論に成り立っているから貸与制度を提案されておるわけですよね。だから、私、こういう問題を金目のことだけでどうこう言うような、何といいますかね、貧すれば鈍するといいますかね、非常に低レベルのことで議論されているというふうに思います。
 私は、この司法修習生を給費にしてきた意義、効果というのは、いろいろお聞きしますと実態的には二つあると思うんです。
 一つは、日弁連の言葉をおかりいたしますと、公的使命を自覚をしてもらう、あるいは醸成してもらうと、司法修習生の間にですね。もうちょっと平たく言いますと、国民の税金で、かつてなら二年間ですね、司法修習生の時代に、国民の税金で御飯を食べると、その間に何考えるだろうと、これから法律家になる人がですね。やっぱりそれは先ほど言いました、多分戦後の位置付け、そういうことがあったと思うんですけれども。
 あなたたちは公的な、弁護士になろうが裁判官になろうが検察官になろうが公的な、社会の公的な使命があるんだよと。だから、国民の皆さん苦しい中で、皆さんを司法修習で勉強させるために、専念させるためにお金を出しているんだよと。この、もう最初の段階でのインプットをするという大変大きな効果があったと。日弁連なんかが公的使命の醸成とおっしゃっていますけれどもね。もちろん、後で踏み外す人もいるかも分かりませんけれども、最初の大事な時期に、大事な二年間なりに、そのときにインプットすると。政治ができるのはそこまでですよね。後その人の人生、責任持てませんから。若いときにそういうことをやるというのは非常に重要な効果、意義があったと思います。
 二つ目は、よく言われています、貧富の差を持ち込まないと。貧しい、生活が裕福じゃなくてもちゃんと司法資格取れるようにと、これ保障するためと。二つありますけれどもね、あったと思いますけれども。
 私は、重要なのは、今回の改正で何が重要かといいますと、受益者負担論という、これはもう何といいますかね、こんな考え方をこういう制度に持ち込んでいいのかというふうに思いますよ。
 もう、この非常に卑近な理屈なんですよ。金貸して、受益者論だから、金貸してやるから後で返せと。こんなことは戦後、これ何十年続いた制度ですか、この給費制、給費制度。何十年の中で、法務省の皆さんの先輩方が、これ非常に思い入れを持って給費制度を作られたのに、こんな卑近な、こんなつまらない低次元の理屈で、しかも予算的には何年か先に三十四億増えるだけでしょう。国全体の予算からしたらわずかじゃないですか。それを節約する、それを合理化するために、それだけのためにこんな理屈で、はいはいと言ってこの貸与制度に変える、そういう提案をされていることそのものが私非常に問題だと思いますし、これはどんな影響を与えるかといいますと、司法修習生に、これは目に見えぬ影響を与えます。
 給費だったらば、さっき言った原点に戻って、この制度を作った原点から始まっている、あなたは社会のために働くんだということをインプットされると思います。
 ところが、貸与ですよと、受益者なんですよとあなたは、利益を得る、生む、得るんですよと、法曹になったらですね、資格を得たらと、これをインプットしてしまうわけですね。
 これ大きなことだと思いますよ。この司法修習制度という、修習という中身に与える影響としてはですね、これはどう目に見えて現れてくるかはこれから分かりませんけれどもね。こういう国の位置付けを、大きな位置付けを今回大幅に、大幅に変えられたのが今回の改正だというふうに思いますけれども、その辺の認識はいかがですか。

○政府参考人(山崎潮君) 確かに、御指摘のとおり、国の人材を育てていくと、大変な重要なことでございます。したがいまして、国庫でですよ、国庫で教育をしていくと、これでも何十億掛かっているわけでございますので、そういう点ではそこの認識はきっちり持っているはずでございます。それについては、だから受益者負担とは言っていないわけでございます。正に国がやっているわけでございます。
 ただ、その給与を払うか払わないかについては、現在、司法界では皆大事だというふうに言うかもしれませんけれども、それ以外の方の賛同がなかなかもう得られない時代になっているということでございまして、それを反映してやむなくこういう制度にするということでございますので、そこは御理解を賜りたいと思います。

○大門実紀史君 ですから、私は、国民の皆さんからそんな声出ているんですか。司法修習生、貸与にしろなんて、出ていないでしょう。だから、賛同得られないのは財務省だけでね。だれも言っていないじゃないですか。国民の皆さん、司法修習生、給費でけしからぬなんて声出ていないですよ。その審議委員の人たちは何を聞いてこられてそんなこと言われたか知りませんけれども。
 もう一つは、法曹資格に貧富の差を持ち込まないという点でいきますと、これ実態的にいきますと、簡単に言いますと、法科大学院で奨学金制度、最高七百二十万もし借ります、司法修習生で貸与、最高三百万借ります。弁護士になって、若いうちから払わなきゃいけないのは、毎月六万円です。若いうちの、若いころの弁護士さんの給料というのは五百万から六百万ぐらいですよね。私は、これ返せないとは言いません、返せるでしょう。だけど、どんなインセンティブが働くんですか、その弁護士さんに。やっぱり、一定稼がなきゃいけないと。世のため人のために働けば働くほど、貧しい人のために働けば働くほど、弁護士さんの収入というのは減るんです。だから、余計なインセンティブが働くというふうに申し上げたいと思います。
 時間が来ましたので、申し上げたいことは、こんな大事な問題を、今、新自由主義的といいますか、何でも受益者負担だとか財政効率性だとか、そんなことがまかり通り過ぎちゃって、国が守るべきものとか譲ってはいけない一線までどんどん崩されていると私は思うんです。それがこの一つだということを指摘して、質問を終わります。

○委員長(渡辺孝男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。

           ─────────────

○委員長(渡辺孝男君) 委員の異動について御報告いたします。
 本日、尾辻秀久君及び関谷勝嗣君が委員を辞任され、その補欠として中川雅治君及び岡田直樹君が選任されました。

           ─────────────

○委員長(渡辺孝男君) これより討論に入ります。
 御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。

○大門実紀史君 日本共産党を代表して、反対の討論を行います。
 反対理由は今申し上げた質疑の中で明らかにいたしましたので、簡潔に整理して申し上げるだけにします。
 反対理由の第一は、給費制度とは法曹養成の根幹を成すものであり、財政上の理由などで廃止するものではないということでございます。
 貸与制にすることは、法曹になることを受益者とみなす受益者負担論を取ることであります。弁護士、裁判官、検察官、いずれにしても、法曹とは個人の利益のみを追求する職業ではないはずです。法曹養成に関する国の負担は、財政が厳しくなったからやめてしまうといった種類の問題ではございません。
 反対理由の第二は、資質、能力があっても経済的事情から法曹への道を断念する事態が想定されることです。
 国民各階層から多様な人材が法曹となることを可能にしてきた給費制度を廃止し、貸与制にするために、資力に貧しい修習生の勉学・生活環境の悪化を招くことが想定できます。今後の司法を支えるにふさわしい資質、能力を備えた人材が経済的事情から法曹への道を断念する事態も想定され、その弊害は極めて大きいと言えます。修正して実施を先延ばししても、法案の本質は変わりません。
 以上の点から、本法案に反対するものであります。
 終わります。
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