● ● ● ● 大門実紀史 Daimon Mikishi  ● ● ● ●

マンション政策の発展方向と検討課題(「前衛」2000年3月号)
〔特集〕マンションの政策課題と実績
大門 紀史 党経済政策委員会
 分譲マンションは、都市型持ち家住宅の主流としてストックがすでに三百五十二万戸に達し、居住者も一千万人をこえている。その適切な管理と維持は、社会的にも重要な問題である。日本共産党は二十年近く前から、居住者の方がたと力をあわせ、マンション問題の解決にとりくんできた。近年、戸数の急増にともない、分譲マンションの管理や修繕にかんするトラブルも増加し、マスコミでも頻繁にとりあげられるようになった。一部の自治体では、マンション住民の運動と日本共産党のとりくみを反映して、さまざまな施策がおこなわれている。日本共産党以外の政党も動きだし、建設省も一定の政策を打ち出さざるをえなくなっている。
 分譲マンションは、都市居住の利便性や職・住接近をもとめる勤労者の要求を背景に、二十一世紀には都市の持ち家住宅のさらに多数をしめていくと考えられる。住宅ストックの良好な維持をはかり、マンション居住を快適な都市型コミュニティーとして育成するためには、当面の問題を解決するだけでなく、長期的視野に立ったマンション政策が求められる。日本共産党は、すでに「よりよきマンションライフのために−−分譲マンションでの活動のガイド*」(九五年三月発表、九九年三月改定、以下「ガイド」)を発表し、全国各地でとりくみを前進させてきた。本稿では、その到達点をふまえながら、今後の検討課題について考えてみたい。

* 「ガイド」は日本共産党のホームページでも参照できます。
  http://www.jcp.or.jp/seisaku/index-01-07mansyon.html
 
一 なにが問題になっているか
 
1 大手企業主導の供給・管理で侵害される居住者の利益

 分譲マンションは、複数の居住者(区分所有者)が一つの集合住宅を所有し、各住戸の専有部分と、廊下や階段などの共用・共有スペースからなる。戸建て住宅とちがい、居住面での共同生活と、共同管理が要求される。しかも、建物の管理、維持は専門的な知識を必要とするだけでなく、居住者の合意形成をはかりながら、計画的かつ継続的にすすめなければならない。居住者がこれらのことを独力でおこなうことはむずかしく、専門家の協力や管理会社の関与が必要とされる。
 ところが、わが国の場合、分譲マンションのこういう特性を十分に考慮し、居住者の立場にたった供給システムや管理への支援体制が整備されないまま、マンションの建設、販売が増大していった。
 この背景には分譲マンションが、同じ戸数の戸建て住宅を販売するのにくらべ、用地取得から販売までの期間が短く、投下資本の回収効率がよいことから、大手ゼネコンやデベロッパーが競って供給にのりだしたことがある。不動産経済研究所の調査によると、大手企業二十社だけでマンション販売戸数全体の四〇%のシェアを占めている(九八年)。マンションの管理にも、デベロッパーなどの関連企業が、管理会社として最初からかかわるケースが多い。マンション管理新聞社の調査(九八年四月)では、大手管理会社十社だけで、受託管理戸数全体の三九%のシェアを占めている。分譲マンションは、大手企業にとって販売から管理まで継続的に収益をえられる「商品」となってきた。
 大手主導の供給と管理がすすむなかで、この間、居住者が企業の不当な行為に無防備にさらされ、利益と権利を侵害されるケースが多発している。そこには、次のような問題点を指摘することができる。
 @分譲マンションの購入者は計画や建設の段階にほとんどかかわることができない。契約時に、分譲マンションの特性や建物の品質、企業責任が十分に説明されることも少ない。
 A保証期間やアフターサービス期間が分譲会社に有利に設定されていて、あとで雨漏りや結露の問題がおきたときに責任をとらない、不誠実な対応をくりかえすというトラブルが多く発生している。
 Bさらに悪質なのは、購入者の無知につけこんで、敷地面積をごまかすような販売方法や、配管をコンクリートのなかに埋め込んで修理を困難にしたり、ほかの区分所有者の専有部分に配置しているケースもある。
 C分譲会社がマンション販売で第一に考えることは、とにかく早く完売することである。そのため、あとの計画修繕に困難をもたらすことがわかっていながら、修繕積立金を異常に低く設定して、物件を売りやすくしている場合が多い。
 D管理会社も、不当に高い委託費や設備保守費、清掃費などを居住者に押しつけたり、空き住戸の管理費・修繕積立金を居住者に負担させているところがある。なかには「委託費は減額しない」などと入居者に不利な文言を委託契約書に記載したり、建物の損害保険の保険金や満期返戻金の受け取り人を管理会社にするなど、悪質な例もある。
 E管理会社が作成した長期修繕計画にもとづく工事についても、ほんとうに必要な工事なのか、費用が高すぎるのではないかという疑問や苦情がふえている。さらに修繕積立金の口座名義が管理会社になったまま推移し、管理会社の恣意(しい)的な運用や使い込み、倒産時の帰属問題などが起きている。
 総務庁の行政監察結果(九九年十一月)でも、悪質な管理会社の例が報告され、管理会社の業務の適正化や委託契約書の見直しなどが建設省に通知された。しかし建設省の対応方針(同年十一月十八日発表)は、相談体制の検討や、管理会社にかんする情報開示と重要事項説明の充実、標準管理委託契約書の一部見直しという程度のもので、抜本的な居住者保護にはほど遠いものといわなければならない。
 
2 共同管理上の諸問題

 マンションの共同管理に責任をもつのは、居住者(区分所有者)全員で構成される管理組合である。ところが、東京都の「分譲マンション居住に関する意識調査」(九六年)によると、管理組合が結成されていないマンションは全体の約一割、小規模マンションでは約三割となっている。また管理組合が結成されているところでも、事実上、機能していなかったり、管理や維持が管理会社まかせになっているところが少なくない。共同管理の意義や重要性が周知されていないことや、居住者の管理への無関心が背景にあると考えられるが、このことが企業につけいるスキをあたえ、居住者の利益がそこなわれる結果をまねいている。
 管理組合が主体的に活動しているマンションでは、トラブルのあった管理会社を別の会社に変えたり、管理業務や修繕事業の一部を業者との直接契約にして、費用負担を大幅に減らすなど、居住者の利益をまもるとりくみがすすんでいる。
 管理組合が活動するうえで直面している問題には、役員の負担が重く、なり手がいない、居住者の協力がえられない、管理費の未納者をどうするかなど組合運営上の問題、長期修繕計画の策定、業者選択や工事監理など建物の維持・管理上の問題、どうやって優良な管理会社を見分けるか、自主管理と委託とのバランスをどうとるかなど管理会社への対応の問題、ペットや騒音、駐車・駐輪場問題など共同生活にかかわる問題がある。
 管理組合が自主的に機能しているところでは、さまざまな困難をのりこえ、問題の解決をはかってきている。
 住宅ストックとしての分譲マンションの良好な維持をはかり、快適な共同生活をうみだすためには、管理組合の活動がカギとなる。しかし、その社会的な重要性が行政施策のなかに位置づけられていない。分譲マンションの維持・管理が管理組合まかせにされ、必要な支援策がとられておらず、管理組合の役員や居住者に大きな負担をもたらしている。
 
3 戸建て住宅とマンションの負担の不公平

 分譲マンションでは、給排水設備、変電室、ガス配管の維持管理や更新費など当然、企業が負担すべき費用が居住者負担となっており、戸建て住宅との不公平が存在する(「ガイド」参照)。固定資産税においても、マンションは建物自体の評価額が、戸建て木造家屋にくらべ非常に割高になっているだけでなく、共有部分や公開空き地へも、一部の自治体をのぞき、一般私有地なみに課税されている。さらに「住宅用地の特例(地方税法三四九条による軽減措置)」が、五階建て以上の場合は、四分の三以上が住宅でないと全部が住宅用地と認められず、適用されないなどの不公平が存在する。
 日本共産党は、国会や地域の運動でも、負担の公平化の問題をとりあげ、一定の前進をかちとってきた(本特集の有川論文、井原論文、および「分譲マンション問題解決にとりくむ日本共産党」赤旗評論特集版九六年四月二九日号、参照)。
 これらの不公平が生じる原因は、分譲マンションが百貨店やホテルなどの大規模な商業施設(特殊建築物)と同じ扱いになっているなど、住宅として正当に位置づけられていないことにある。
 
二 マンション政策をどう考えるか

 日本共産党のマンション政策の基本的な考え方は、「ガイド」および本誌九五年六月号の野口功論文(「マンション問題への基本的視点と行政の責任」)のなかで明らかにされている。ここでは、最近の状況をふまえ、いくつかの点にふれておきたい。
 
1 なぜマンション問題に行政がとりくむ必要があるのか

 分譲マンションの管理の基本的な責任は、所有者である居住者と管理組合にあることはいうまでもない。しかし、分譲マンションの特質と管理の社会的重要性を考えると、国と自治体が、業界への指導と管理組合への支援のための施策を講じる必要がある。分譲マンション問題に行政がとりくむべき必要性をあらためて整理すると、つぎの点に集約される。

 〔消費者保護の立場〕
 多くの勤労者にとって住宅の取得は、一生に一度の大きな買い物であり、十分な消費者保護がはかられねばならない。とくに分譲マンションは、つぎの三つの点での消費者保護が重要である。
 一つは、建物の品質保証、瑕疵(かし)担保責任における消費者保護である。一昨年の建築基準法改正による中間検査制度の確実な実行や、今年四月から施行される「住宅品質確保推進法」の内容を充実していくことが大切である。とくに、住宅品質確保推進法は、法案作成の段階で、「瑕疵推定規定」の制度化がマンション業界などの反対で見送られた経過がある。トラブル解決の技術的な基準(ガイドライン)の内容もふくめ、消費者の保護に有効にはたらく制度にする必要がある。また工事の「丸投げ」や、下請けへの低単価の押しつけなど、大手企業の不当な行為をなくしていくことも、建物の品質を確保するうえで重要である。
 二つめには、分譲マンション管理と維持がスムーズにすすめられるように、購入時に分譲会社が提示する管理規約案、修繕計画、積立金の額などが適切に初期設定されているかどうか、行政が点検し、指導する必要がある。
 三つめは、消費者への情報開示である。居住者のほとんどは、購入の時点では、分譲マンション特有の問題について十分知らされていない。共同管理の意義や重要性、修繕計画や積立金、管理費の内容などを、事前に購入者に説明し、理解してもらう必要がある。中古マンションは、とくに修繕の実施経過と今後の予定、管理の状況などを正確に購入者へ知らせるべきである。重要事項の内容を改善するとともに、販売業者からの十分な説明が徹底されるようにしなければならない。
 しかし、こうした措置を講じても、知識の少ない購入者が、事前に問題点を見ぬいて的確な判断をおこなうことは困難をともなう。消費者保護の観点から、当事者まかせにせず、行政が直接、物件の内容や管理の初期設定事項を点検し、指導をおこなうしくみが必要になっている。

 〔街づくりの視点でマンションを位置づける〕
 マンションは、すでに都市を構成する重要な要素となっている。街づくりの視点では、大規模な建築物、集合住宅であるというハードの面と、住民自治、都市コミュニティーを育成するというソフトの面の両方で、マンション問題は位置づけられねばならない。
 街づくりのハード面では、つぎの点が重要である。
 一つは、社会資本としての住宅ストックの良好な維持と更新、そして市民の居住空間の快適な保全という視点である。
 二つめには、街づくり計画全体のなかでマンションの建設と維持・更新を位置づけることである。新たなマンション建設は周辺環境に大きな影響をあたえる。とくに最近、首都圏や京都などで高層マンションの建設がふえ、景観や街づくりにマイナスの影響をあたえている。また老朽化したマンションが放置された場合も、街づくりにとって大きな障害となる。建設計画にたいする適切な指導と、維持・更新にかんする啓発や一定の援助が必要である。
 三つめには、分譲マンションの共有・共用スペースを「公的空間」として位置づけることである。戸建て住宅より分譲マンションが重い負担となっている点をすみやかに改善し、公平性の確保がはかられねばならない。共有・共用部分の維持・管理・更新についても、その公的機能におうじて必要な助成をするのは当然である。
 住民自治、都市コミュニティーを育成するという街づくりのソフト面からは、管理組合を住民組織として位置づけ、活動のうえで直面するさまざまな問題における相談やアドバイス、技術的な支援をおこなう必要がある。また、マンションの大規模修繕や建て替えのなかで、費用の負担にたえきれなくなる高齢者世帯など、弱者の救済をはかることも行政の責任である。
 
2 国と自治体の役割分担

 国がやるべきことの第一は、マンション問題の重要性を認識し、政策の方向性と基本事項を制定すること、自治体の課題を明確にし、技術的・財政的な援助をおこなうことである。第二に、関連業界への指導・監督責任をはたすことである。消費者保護と居住者の立場にたって、宅地建物取引業法、建築基準法、区分所有法など必要な法改正をおこなうとともに、分譲会社、管理会社など企業が業務上まもるべき基準を制定する必要がある。
 自治体の基本的な役割は、消費者保護と街づくりの立場から、個別のマンション建設にたいする具体的指導、入居後の管理組合への支援にある。地域内のマンションの現状を把握し、建物の維持・更新への適切な指導と援助をおこなうこと、管理組合を住民組織として位置づけ、その活動を支援することが必要である。これらのことをすすめるために、分譲マンションの位置づけと自治体の施策の方向を明確にした「マンション条例」の制定がすすめられねばならない。また景観や環境を保護し、調和のとれた街づくりをすすめるために、基礎自治体のマンション建設にたいする認可の権限を強化すべきである。
 
3 マンションの長寿命化を政策の基本に

 この間、建設省と東京都が、今後は築後三十年以上のマンションが増加していくという予測をだし、建て替え問題がクローズアップされている。建設省は「マンション建て替え指針」の検討に入り、公明党も「建て替え促進法」の制定を提唱している。しかし、鉄筋コンクリート(RC)構造のマンションが、本当に築後三十年程度で老朽化し、すぐに建て替えを考えなければならないものかどうか、はなはだ疑問である。RC構造が三十年で使い物にならなくなるということは考えられない。構造的には、少なくとも七十〜八十年はもつといわれている。業界団体の需要予測も三十年程度での建て替えを前提にしていることを考えると、三十年建て替え説の背景には、大手ゼネコンやデベロッパーなどの都市再開発志向が反映していると思わざるをえない。
 マンションの建て替えは、住宅にたいする要求や資金負担能力が異なる多数の居住者(区分所有者)の合意をはからなければならないという、特別の困難がある。さらに居住者に高額の負担をもたらし、その力のないものは所有権を手放さざるをえない場合もでてくる。容積率に余裕があれば、等価交換方式(建て替えによって戸数をふやし、その売却収入を建て替え費用にあてる)もありうるが、それは街づくり全体のなかで位置づけられねばならず、一般化することはできない。現在、政府がすすめている安易な容積率の規制緩和が、高層マンションの乱立や傾斜地を利用した巨大マンションの建設などを誘導し、全国で住環境の悪化や危険箇所を発生させる要因となっている。
 また、マンションが三十年前後で建て替えられていくなら、膨大な解体コンクリートを発生させ、現在、建設廃材のなかでもっとも多いコンクリート塊をいまの何倍にもふやすことになる。産業廃棄物問題をさらに深刻化させ、資源の多大な浪費と環境破壊につながることは明白である。
 安易な建て替えを前提とするのではなく、マンションの長寿命化(少なくとも五十年以上をめざす)を、行政施策の基本にすえるべきである。そのために、耐久性の高いマンションの供給を促進すること、長寿命化をはかるための積極的な維持管理と補修・リフォームの計画的な実施を誘導、支援することに行政は力を入れなければならない。
 もちろん、適正な診断をおこない、建て替えが必要と判断されたものについては、安全面からも、居住者の合意形成をはかり、建て替えをすすめるのは当然である。この場合も、行政は街づくりや周辺住民との関係を考えながら、適切な援助をする必要がある。
 
三 いくつかの検討課題

 以上ふれてきたように、日本共産党のマンション政策の基本は、「住民が主人公」という立場で企業の横暴から居住者をまもること、マンション居住を都市の新しいコミュニティーとして積極的に育成することにある。その立場から今後、必要となるであろう課題についてふれてみたい。
 
1 マンション供給時の消費者保護

 分譲マンションの計画・建設・分譲の段階で、建物の性能や保証内容が基準をみたしているか、管理規約案、修繕計画、積立金の額など初期設定が適切かどうかについて、行政のチェックと指導がおこなわれていれば、マンション問題の相当部分は解決されるといってよい。
 この点では、アメリカのカリフォルニア州で実施されている「パブリック・リポート」制度が参考になる。
 カリフォルニア州では五戸以上の住宅の開発は、すべて販売の段階で開発業者が州の不動産局に申請しなければならない。開発業者が申請しなければならない内容は、物件の状況(開発の種類、周辺環境、基本的な設備の整備状況)、管理と運営にかんする事項(管理規約、管理費等の額、予算案など)、税金、契約関係、各種図面の準備状況などである。申請がおこなわれると、不動産局の職員が現地に行き、物件の調査をする。不動産局が見積もった評価額と実際の販売予定額との差が一〇%以内であれば、その物件の販売が認可される。
 認可された物件には、不動産局から「パブリック・リポート」とよばれる報告書が発行される。「パブリック・リポート」の目的は、消費者保護のために分譲物件についてのあらゆる情報を行政がチェックし、公表することにある。「パブリック・リポート」には、その物件が計画(設計)どおりにつくられているかどうか、管理規約や修繕計画が適正か、さらに周辺環境や上下水道の整備状況などが記される。このほかにも、不動産局の職員が調査の段階で知りえたすべてのことが記載される。「パブリック・リポート」は購入者全員にわたされ、購入者は契約時にこのリポートを読んだという署名をしなければならない。また不動産局は、購入者にたいし、分譲マンションの内容を簡単に説明した小冊子を発行し、マンション管理への理解が深まるように啓発活動をおこなっている(以上、斎藤弘子・梶浦恒男「生活環境学」『大阪市立大学生活科学部紀要』第四十巻より抜粋)。
 カリフォルニア州の「パブリック・リポート」制度は、欠陥マンションや設備の不備なものが販売されることを防ぎ、管理や修繕が適切にすすめられるように分譲会社に管理規約や修繕計画を初期設定させることで、消費者保護に大きな効果をあげている。
 日本でも、供給時の消費者保護制度が検討されるべきだと考える。
 
2 建物の長寿命化のために「定期診断制度」の創設

 建物の長寿命化をはかるうえで大切なことは、マンションのライフサイクルに応じて定期的に建物診断をおこない、その結果を長期修繕計画に反映させ、適切な時期に修繕をおこなっていくことである。
 昨年、十二月三日開催された日本共産党の団地・マンション宣伝組織者全国活動交流会議では、石灰組織局長の報告のなかで、マンションの長寿命化のための「定期診断制度」の必要性が強調された。「定期診断制度」とは、行政がマンションの建物の定期的な診断を位置づけ、診断費用の助成をおこなうものである。
 現在、建築基準法第一二条第一項により、特定行政庁(建築確認をおこなっている自治体)が指定する特殊建築物等(劇場、百貨店、ホテル、共同住宅など多くの人が利用する建築物)の所有者が、定期的に建築物を調査し、その結果を特定行政庁に報告しなければならない「定期調査報告制度」が設けられている。この制度は、防災と安全対策の面から、設備の状況や建築物の構造の劣化を点検し、報告することを義務づけている。東京都の場合、マンションは三階以上で五百平方メートル以上が対象となっている。調査は建築士などの資格者がおこない、一定の費用がかかるが、国や自治体の助成措置はなく、居住者の負担となっている。
 この「定期調査報告制度」を土台に、劣化診断の検査項目を充実して国と自治体からの助成をおこなえば、「定期診断制度」に発展させることができる。定期診断の実施時期は、建物の保証期間や瑕疵担保責任期間に対応させるとともに、長期修繕計画にも連携させる必要がある。
 また現在、建物の耐震診断への助成制度が百五十二自治体(九八度末現在)に設けられているが、ほとんど利用されていない。埼玉県など補助を中止した自治体も現れはじめている。この制度が利用されない理由は、住宅耐震補強への住民の関心のうすれもあるが、より根本的には防災の町づくりが個人まかせになっていることがあげられる。阪神・淡路大震災ではマンションの損壊によって大勢の人命が奪われた。地震に強いマンションをめざすことは行政の責任である。住民への啓発活動の促進と、耐震診断への助成の拡大、耐震改修への補助の確立と拡充がおこなわれなければならない。
 分譲マンションについては、「定期診断制度」の適当な時期に耐震診断を組み込んで特別の助成をおこなえば、飛躍的に耐震診断を促進することができる。
 
3 マンション管理にかんする立法措置の必要性

 昨年、建設省が発表した「総合マンション対策」は、自治体での相談窓口の設置や修繕積立金の住宅金融公庫受け入れなど、部分的なもので、総合とは名ばかりで、その場しのぎの抜本的対策を欠くものという批判をまぬがれない。現在、マンション政策をうちだしている自治体も、東京都など一部の自治体をのぞき、長期的視野でマンション問題を検討しているところは皆無である。
 分譲マンションの居住者が一千万人をこえている状況を考えると、マンションの供給から管理、維持、大規模改修、そして何十年後かの建て替えまで、全体のライフサイクルを視野に入れた総合的な行政施策の確立が必要になってきている。
 隣の韓国でも、七〇年代なかばから分譲マンションが大量に供給されてきた。韓国では、日本の区分所有法にあたる「集合建物の所有及び管理に関する法律」以外に「住宅建設促進法」で分譲マンションの位置づけを定め、「共同住宅管理令」で管理業務の内容や、瑕疵補修から管理費の内訳・徴収・積立まで詳細事項を規定するという、総合的で一貫したマンション政策をもっている(金印曾「韓国の分譲マンション管理における行政政策」『マンション学会誌』第四号)。
 アメリカや韓国とくらべ、日本は区分所有法を制定し、周辺法制を若干、整備してきただけで、マンション問題を管理組合まかせにしてきた傾向が強い。業界への指導も、通達をだして、標準管理規約などの「手本」をしめすだけで終わっている。
 国と自治体のマンション問題への姿勢を抜本的にあらため、総合的なマンション政策を確立する必要がある。
 第一に、マンション対策を国・地方自治体の重要な施策として位置づけ、それぞれの役割分担と基本施策を明確にすること、分譲マンションが地域の住宅の一定比率をこえる自治体には、マンション対策を専門的にあつかう担当部署(マンション課など)を設置するなど、具体的な体制を整備することである。
 第二に、通達行政に終始するのではなく、居住者の権利と利益にかかわる事項は法定化する必要がある。
 昨年、十二月十四日にマンション管理組合団体の全国組織である、全国マンション管理組合連合会の代表と、日本共産党の筆坂秀世政策委員長(参議院議員)との懇談がおこなわれた。連合会の申し入れのなかにも、分譲マンションの基礎資料である建築確認申請書(副本)・設計図書・竣工図書の管理組合への引き渡しや、管理組合の資産である預貯金、損害保険、修繕積立金保険などの管理組合の資産の名義は管理組合とすること(管理会社または第三者名義契約の禁止)、などの法定化を求める事項がある。これらの事項はすみやかに、法定化されるべきである。
 また区分所有法における管理組合の位置づけも、もっと高める方向で検討されなければならない。管理会社の業務の適正化と健全な育成をはかるための認定制度も必要である。
 第三に、管理組合の自主的な活動を支援するための相談・アドバイス体制を整えること、管理組合の連合会や協議会などNPO(非営利組織)の交流をはかり、活動を発展させることにも行政は努力しなければならない。
 マンションに関連する諸法制の必要な改正と、総合的な立法措置が検討されるべき時期にきていると考えられる。
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