● ● ● ● 大門実紀史 Daimon Mikishi  ● ● ● ●

暮らしと日本経済を守る」の一点で大同団結を呼びかけます(「女性のひろば」2003年1号)
いま、中小企業と銀行でなにが起こっているか
この間、党国会議員団への、銀行の「貸しはがし」にかんする相談が急増しています。先日、国会の私の部屋で相談を受けたUさんのケースは最近の「貸しはがし」が、より悪質で乱暴になっていることを示す典型的な事例です。
 東京の大田区で医療関連用品の販売をおこなっているUさんは、S銀行から三千万円を借り入れ、今まで一回の滞りもなくきちんと返済してきました。ところが、二〇〇二年七月、S銀行は、突然なにも理由を言わず、この三千万円をすぐに一括返済するようUさんに迫りました。「そんなムチャな要求には応じられない」とUさんが拒否すると、十月末、S銀行は担保にとっていたUさんのお店と家1668土地を一方的に競売にかけるという暴挙にでました。
 これから年の瀬に向かうという時に、商売も住むところも奪い家族まるごと路頭にほうり出そうとするS銀行のやり口は、「サラ金」とまったく同じです。私のところに相談にきたUさんは、「S銀行とはもう二十年以上の付き合い。昔は苦しいときには助けてくれたのに、急にこんなひどい仕打ちをうけるなんて」と悔しさと怒りでいっぱいでした。
 すぐに、S銀行本店の融資責任者とこの案件を担当した支店の若い行員を私の部屋に呼び、競売をストップさせました。そのとき若い行員に「どうしてこんな卑劣な強引なことをしたのか」と尋ねると、「Uさんの場合、ご商売の先行きが見込めなかったから」と平然とこたえました。「この不況で先行きを見込める中小企業なんかほとんどない。そんなことを理由に回収に走ったらみんなつぶれてしまうではないか」と声を荒げると、若い行員は下を向いたまま黙りこんでしまいました。よく見ると、Uさんにそんなひどいことをしたとはとても思えない、真面目で気弱そうな青年です。ふと、いまの金融行政は人間そのものまで狂わせているのでは、と思いました。年配の本店融資責任者に同じことを聞くと、「銀行もいま不良債権処理で大変なんです」と、申し訳なさそうにこたえるだけでした。

背景に不良債権処理が

 中小企業にとって銀行の融資は「命綱」です。しかもこの不況時に「銀行も大変だから」という理由で強引な「貸しはがし」に走るなど、社会的に決して許されるものではありません。
 しかし、こういう銀行の姿勢の背景に、小泉内閣が「改革」の中心課題としてすすめてきた「不良債権の早期最終処理」があることも事実です。政府の政策が、大量の倒産と失業を招いているだけでなく、銀行にも借り手への厳しい査定を求め、それが中小企業全体への猛烈な「貸ししぶり」「貸しはがし」を引き起こしているのです。
 十月三十日、小泉内閣は、不良債権処理をいっそう加速するための「金融再生プログラム」を打ち出しました。この出口の見えない深刻な不況のもとで、歯を食いしばって必死に頑張っている中小企業をさらに困難に陥れ、つぶしてしまおうというのです。
小泉「改革」とはなにか
 国民や中小企業に「痛み」だけを押しつける小泉「改革」とは、いったい何なのでしょうか。
 昨年の六月二十一日、小泉内閣は「経済財政運営の基本方針」(いわゆる「骨太方針」)を発表しました。その中心は、(1)中小企業の倒産と失業を激増させる「不良債権の早期最終処理。、(2)大企業のリストラ応援などの「競争的な経済システム」づくり、(3)社会保障改悪など国民負担増をおしつける「財政構造改革」でした。
 日本共産党の筆坂秀世政策委員長は、その日の記者会見で、「『骨太方針』には、いまの深刻な不況を打開する対策も、国民の暮らしや福祉を向上させる策もなく、あるのは、『倒産・1668失業』、『社会保障改悪』、『大増税』という、耐えがたい”三つの痛み”を国民に押しつける計画だけであり、こんな『改革』を実行すれば、深刻な危機にある日本経済に壊滅的な打撃を与える」と厳しく批判しました。さらに筆坂政策委員長は、「いまやるべきは、長期不況で痛めつけられた国民の暮らしをささえ、応援する経済対策である」とし、日本共産党が提案している日本経済の危機打開のための三つの転換(@消費税減税など、国民の購買力を直接あたためる、A社会保障の連続改悪を凍結し、将来に安心のもてる体系をつくる、B雇用危機打開に本格的にとりくむ)こそ、日本経済の再生への道であると訴えました。
 当時は、小泉内閣への支持率が八〇%もあるという「小泉旋風」が荒れ狂っていましたが、はじめから小泉「改革」をニセモノの「改革」と正面から批判し、本当の改革の道はここにあるということを堂々と示した党は、日本共産党だけでした。

消費、内需を冷え込ませ

 小泉内閣が発足して一年半、日本共産党が指摘したように、日本の経済・景気の悪化が急速にすすみました。個人消費、設備投資、失業率、中小企業の倒産、経済成長率――どれをとっても、マイナス、史上最悪という深刻な数字がならんでいます。日本経済が坂道を転げ落ちるように、悪化していることは、どの分野をみても明らかです。まさに、小泉「改革」が国民の所得と消費、内需を冷え込ませてきた結果です。あれほど叫んできた不良債権の最終処理も、この不況とデフレで、処理しても処理しても新しい不良債権が発生し、結局、昨年度より残高が十兆円(主要銀行ベース)も増えてしまいました。
 小泉内閣が、「改革なくして景気回復なし」どころか、「改革」をやればやるほど、景気も悪くなり不良債権も増えるという悪循環に陥っているのはもはや明らかではないでしょうか。
 そもそも、小泉「改革」は、九〇年代に自民党政治がすすめてきた「景気対策」の二つの手法――大手ゼネコン救済のための巨額の公共事業積みまし、大銀行救済のための金融緩和というやり方が破たんするもとで、それに代わるものとして、押し出されてきたものです。
 しかし、小泉「改革」がかかげる「競争的な経済システムづくり」も、個々の大企業の利潤追求を最優先に、その障害になるすべてを切り捨てるというものであり、今までの大企業応援の政治と本質は何ら変わるところがありません。しかも、九〇年代の自民党の政治以上にひどいのが、リストラ推進、社会保障の改悪、庶民増税など、国民生活への厳しい切り込みです。
 これでは、国民の所得は減少、将来不安もますます増大し、経済の六割を占める個人消費は落ち込むばかりで、景気が回復するわけなどありません。国民の暮らし中心の経済政策への転換が、いまほど切実に求められているときはないのに、相変わらず大企業中心主義にしがみつき国民に犠牲を強いる――小泉「改革」そのものが、現在の経済のゆきづまりをもたらしているのです。

失敗の道をさらに暴走

 ところがいま、小泉内閣は、「不良債権処理の加速」だけでなく、不況で苦しむ国民にさらに追い討ちをかけるように、社会保障の三兆円を超える負担増を強行し、所得税・住民税増税などの庶民増税まで国民に押しつけようとしています。まさに、すでに失敗が明らかになった道を暴走するものであり、国民の暮らしと日本の経済を破壊する所業と言わなければなりません。
「緊急要求」での共同を広げ、「小泉「改革」にストップを
 政府の失敗による経済危機を繰り返させてはならない―日本共産党は、九月二十七日に、「深刻な経済危機から国民の暮らしを守るための四つの緊急要求(@社会保障三兆円負担増の中止、A国民・G1668中小企業への増税反対、B「不良債権処理」の名による中小企業つぶし政策の転換、C職場での無法の一掃と失業者の生活保障―全文は47ページから)を発表しました。
 「四つの緊急要求」は、社会保障制度や税制の将来像について考え方の違いはあっても、「暮らしと日本経済を守る」という一点で大同団結をよびかけるものです。この間、私たち党国会議員団でも、「緊急要求」にもとづく各地の中小企業団体、労働組合などとの懇談をひろげ、そのなかで「痛みをおしつけられるのは弱い立場の者ばかり」「ともかく、これ以上、もう景気を悪くしないでほしい」「これは、誰でも一致できる要求だ」など、小泉内閣への怒りの声や「緊急要求」への支持、共感がたくさん寄せられています。
 「緊急要求」の実現こそ、長期不況から、景気・経済を立て直していく大きな力です。同時に「緊急要求」での対話と共同をひろげていくことは、小泉政治と対決し、それを転換する国民の世論と運動を広げていくことにもつながります。このとりくみをつうじて、小泉「改革」にストップをかけ、国民の暮らしと経済を立て直す方向へ、政治を大きく転換させようではありませんか。
戻る▲