● ● ● ● 大門実紀史 Daimon Mikishi  ● ● ● ●

庶民減税と大企業の応分負担へ・・世界の流れは変わった
日本共産党参院議員 大門実紀史さんに聞く(「女性のひろば」2009年9月号)
税金の取り方を方向転換
 いま日本全国どこへ行っても、景気が悪い、仕事がない、税金や社会保険料の負担が重いという国民の悲痛な声が聞かれます。
 一生懸命働いても税金が払えない、それなのに非情な税の取り立てにあっている、そんな声も多く寄せられています。先日国会で追及したのですが、鳥取県ではある中小業者の方の納税が滞っていて、・いまは払えないので待ってください」という「納税猶予申告書」を提出したのに税務署は拒否して、お子さんのために掛けていた学資保険まで差し押さえました。まじめに働いてきた人たちを丸裸にするようなひどい税金の取り方です。同様のことは各地でおきています。
 こんなときに自民・公明政権は、ますます家計を苦しめ、さらに景気を悪化させる消費税の増税を計画しているのですから、とんでもありません。

 余ったお金が投機に
 世界中が100年に1度といわれる経済危機にあえいでいるとき、アメリカやイギリスなどでは税金の取り方に大きな政策転換をし、富裕層や大企業に税負担をもとめる方向に舵かじを切りました。
 そもそも「新自由主義」の経済政策は、ざっというと、企業や金持ちの税負担を限りなく減らし、その余ったお金を、投機やマネーゲームに回させて金融経済をふくらませるというシステムです。それが金融バブルを引き起こし破たん、昨年秋以来の世界金融危機をまねいたのです。
 そうした「新自由主義」の経済政策を先頭に立って実行してきたのがアメリカやイギリスですが、今回の経済危機を受け、大金持ちや大企業にたいし減税から増税へと180度の方向転換をしました。金融危機以前は考えられなかったことです。

 アメリカでは
 アメリカのオバマ政権は、今後10年間で約72兆円の中低所得層への所得減税をおこなう一方、高額所得者にたいし100兆円を超える増税、世界展開する多国籍大企業などには約20兆円の増税を求める方向です。その中身を少しくわしくお話ししましょう。(表)
 まず、ブッシュ政権の減税をもとにもどし、高所得者の所得税増税をおこないます。最高税率を35%から39・6%に引き上げる、高額所得者の株式譲渡益には課税を強化する、などで約60兆円の増収です。
 さらに加えて、約50兆円の高額所得者への増税(所得税率の上のせ最高税率を45%に)をおこない、それを医療制度改革の財源にすることをうちだしました。アメリカには高齢者や低所得者、退役軍人など一部を除いて公的な医療保険制度がなく大問題になっていますが、国民皆保険制度をめざす一歩をふみだすことになります。高額所得者からの増税をダイレクトに社会保障につぎこむ画期的な政策です。
 また多国籍大企業が海外で得た利益にたいする課税を強化し、約20兆円の財源をうみだし歳入増に充てるとしています。
 イギリスでも所得税の最高税率の引き上げ(高額所得者への増税)や、所得税の課税最低限の引き上げ(低所得者への減税)を実施予定です。フランスやドイツでも同様の施策を実施しています。
 日本共産党がこれまでずっと主張してきた大企業や大金持ちに応分の負担を求める政策を、アメリカなどが実行しようとしているのです。

 日本では大企業減税継続
 一方日本では、いまだに大企業・大金持ち減税を続け、さらに消費税引き上げという庶民大増税をしようとしている。これはいまや世界の流れからすればまったくの逆流です。
 自公政権は、これまでも庶民には定率減税の廃止や年金の控除を減らすなど、増税を押しつける一方、大企業や大金持ちには、最高税率の引き下げなど、くりかえし減税をおこなってきました。
 また、大企業への減税のひとつである研究開発減税は、研究開発費の10%前後を法人税額から差し引ける制度ですが、07年度の実績では、資本金10億円以上の大企業が93%、約5827億円の減税です。中小企業はわずか2・7%にすぎず、赤字経営に苦しんでいる約7割の中小企業にとっては無縁の減税措置で、経済対策としてほとんど効果がありません。それなのに今年度はもっと拡大する方向です。
 大金持ち減税では、株式譲渡益(株式の売買によって得た利益)にたいする税率は本来は20%のところ、特例で半分にしてきました。06年度には、申告所得100億円を超えた10人の大金持ちだけで183億円の減税がおこなわれていました。その減税を今年も延長しています。
 このように大企業・大金持ちに減税、庶民に増税の方向をあらためない国は先進国ではもう日本以外にはありません。

ヨーロッパは消費税率が高いから福祉が充実164D
 麻生内閣は昨年末、2011年からの消費税引き上げを閣議決定しましたが、今年2月には、今後2年間のうちに消費税増税をふくむ「税制改革」を実施することを法律に明記しました(・09年度税制関連法案・)。
 そもそも消費税は衣食住など生活必需品すべてにかかるため、どんなに収入の少ない人、収入がまったくない人にも課税され、重くのしかかる税金です。考えてもみてください。現在の5%の消費税で1世帯当たり年間十数万円の負担をしています。これが仮に倍の10%になったら、今より年間十数万円の負担が増えるということです。こんな負担増、耐えられるでしょうか。

 大企業減税の穴埋めに
 消費税が導入されて20年、「消費税は福祉のためだ」というのが政府のいいぶんでしたが、この間、社会保障は悪化の一途をたどってきました。消費税が大企業・大金持ちへの減税の穴埋めであることは多くの人の目に明らかになりつつあります。政府はこれからも社会保障費を抑えるという路線は変えていませんから、消費税が福祉のために使われる保証はまったくありません。

 社会保障財源の中身は
 政府や与党は「社会保障を充実してほしければヨーロッパなみに高い消費税が必要だ」といいます。
 本当でしょうか。ヨーロッパの消費税(付加価値税といいます)はたしかに日本よりも税率は高いですが、食料品など生活に直結する品目は低い税率だったり無税です。
 同時に私が強調したいのは、ヨーロッパの社会保障の財源は消費税だけでまかなわれているわけではないということです。グラフを見てください。社会保障財源の内訳で多いのは、むしろ「事業主保険料=企業負担」であり、「その他の税(所得税や法人税など)」です。一方で日本は、各国に比べて「本人保険料」が一番高く「事業主保険料」が一番低いのです。

 年金を消費税で
 民主党も年金財源などで消費税増税を主張しています。もともと「年金財源のために」と増税の先導役をつとめてきたのは民主党でした。
 民主党のいう基礎年金を全額消費税でを実行すれば、少なくとも消費税率は8%になります。現在の基礎年金財源20兆円は、労働者の保険料や事業主(会社)の保険料負担、国庫負担金などでまかなわれていますが、民主党は国民全体で負担するといって全額消費税でまかなおうとしています。これまで企業が負担してきた事業主分も免除するというのですから、あきれるばかりです。
 こうした消費税増税、企業負担の軽減という主張は、日本経団連がくりかえしおこなっていることで、大企業や財界のいいなりの自民党と民主党が、競い合ってやろうとしています。

モノ買う力の向上こそ
 内需(家計など)ではなく外需(輸出)に頼った経済だったため、日本は今回の世界的な金融危機で大きな打撃を受けました。その反省に立てば、内需を拡大してこそ経済もよくなります。
 内需主導の経済とはどういうことでしょうか。国内でモノが売れるということです。モノが売れるためには、国民にモノを買う力があることと、将来への不安がないことが必要です。
 モノを買う力をつけるためには、もらった給料などから税金や社会保険料を引いた可処分所得、すなわち手取り収入が増えなければなりません。手取り収入を増やすには、全体の収入を増やすことと、税金や社会保険料を軽くすることが必要です。
 ところが、この間、自公政権は、リストラや賃金抑制策を続けたうえに、増税と社会保険料の負担を増やしてきましたから、内需が冷え込んだのは当然の結果です。また将来への不安をなくすためには、社会保障を再建していくことが必要です。いくら手取りが増えても、社会保障への不安があったら貯蓄に回って、消費にお金は回りません。
 したがって内需をよくするには、社会保障を再建することと、庶民に増税しないことの両方が大事なのです。自民党や民主党の主張するように消費税を増税してしまったら、モノを買う力が落ち込み、内需は絶対によくなりません。

 庶民の家計あたためて
 「大企業と大金持ちに相応の負担を」という日本共産党の主張は、いまや世界の流れにてらしても当然の主張です。大企業をはじめ企業が健全に発展し、経済がよくなるためにも、この道しかありません。
 財界の要求のいいなりになって大企業・大金持ち減税の一方で消費税増税という庶民増税をたくらむ政党では、日本経済を立て直していくことはできません。
 日本共産党は今度の総選挙で、庶民増税に断固反対し、庶民の家計をあたためていくことで景気も暮らしもよくする方向を、国民のみなさんにうったえていきたいと考えています。
 具体的な消費税増税法は2011年度までに成立させるとしていますから、ストップさせることは可能です。「消費税増税反対」の日本共産党を大きくしていただいて、新しい国会で増税法を阻止したいですね。