● ● ● ● 大門実紀史 Daimon Mikishi  ● ● ● ●

日本共産党国会議員団「ダム調査報告」(「議会と自治体」2001年8月号)
 無駄と環境破壊の公共事業の典型として、いま大型ダム事業が全国で問題になっています。日本共産党国会議員団は、五月に全国二十二カ所のダムについて、現地調査をおこないました。調査結果の概要は別表のとおりです。
 本稿では、今回の調査をふまえ、現在の日本の河川行政、ダム事業の問題点をあきらかにし、抜本的な見直しの方向について提案をしたいと思います。
 
一 コンクリートダムからの脱却の動きと、自民党政治との対立
 
 はじめにダムをめぐる世界と日本の新しい動きにふれたいと思います。
 
1 世界の流れはコンクリートダムからの脱却
 
 欧米では、九〇年代の初めからダムだけに頼らない治水対策に切り替えました。さらにアメリカ、ドイツなどでは、改修ずみの河川を再び自然にもどす工事も十年以上も前から始まっており、河川の自然環境としての価値を大切にする方向にふみ出しています。
 とくにアメリカでは「川の再生」をテーマにすでに五百をこえるダムを撤去したうえ、グラインスキャニオンダムなど大型ダムも取り壊し、生態系と漁業の回復や観光振興をはかろうとしています。
 この方向転換の背景には、自然のまま蛇行している川を真っ直ぐにして海に早く流す近代河川工法がかえって水害を引きおこして被害を拡大し(アメリカのミシシッピー川、ミズーリ川など)、膨大な開発費用をかけた巨大ダムが自然を破壊したうえ、将来は結局、堆砂(たいさ)などで無用の“産業廃棄物”と化すという認識にもとづいた過去の手法にたいする根本的な反省があります。
 九九年のラムサール条約国際会議でも、ダムなどコンクリート構造物が自然環境に与える悪影響が論議され、それを受けるかたちで、いままでダム建設を促進してきた世界銀行と環境保護団体などNGOが共同して世界ダム委員会(WCD)をつくり、ダム事業の検証をおこなっています。
 自然環境の保全と財政の無駄をなくすために、いまやコンクリートダムからの脱却は、二十一世紀の世界の流れといえます。
 
2 日本でも地方から新しいうごきが
 
 日本でも地方から新たなうごきが始まっています。
 昨年四月、鳥取県の片山知事は、治水と利水の両面から中部ダムは必要がないと判断し、中止を決めました。さらに、水没する予定だった地域を対象に、老朽化したまま放置されてきた公民館の建て替えや農地の整備を実施するとともに、一戸あたり三百万円を上限とする住宅再建補助や、地区の振興活動交付金などの定住促進策をもった地域振興計画案を住民に提示しました。
 こうした地域振興計画案を住民の要求に合致した適正なものにしていくことは、当然必要ですが、鳥取県が全国に先駆けて、ダム計画中止後の地域の振興と再生に具体的に踏み出したことは重要です。
 また、今年二月には、長野県の田中知事が「脱ダム宣言」を発表し、環境に多大な負担を強いるコンクリートダムは今後できるだけつくらず、造林事業や河川の改修事業に力を入れる方針を打ち出しました。
 旧建設省の河川審議会の中間答申(九九年八月)、答申(昨年十二月)にも、ダム建設以外の治水方法も検討していくことがもりこまれました。審議委員をつとめた高橋裕東大名誉教授は、「ダムや堤防は生態系にとっては、障害物である。これからは生態系を壊さないようにしなければならない。環境とのすり合わせが二十一世紀の課題である」(「朝日」二〇〇一年一月七日付)とのべています。

3 依然として大型ダムに固執する小泉内閣
 
 こういう新しい動きが始まっているにもかかわらず、小泉内閣が六月二十一日に発表したいわゆる「骨太方針」(「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」)では、公共事業の見直しについて、費用対効果の観点から事業の選択をおこなうと、従来からいってきたことをくり返しただけでした。
 同日、国土交通省がしめした「公共事業改革への取組」でも、大型ダムについては、新たに「実施計画調査」に着手することを凍結するとしたものの、現在すでに「実施計画」に入ったり建設中などのダムについては、「水需要の必要性等を厳正に吟味して事業を峻別」すると曖昧(あいまい)な態度をしめし、具体的な事業の見直しについてはいっさい言及していません。すでに着手している二百七十三の事業のうち、総事業費があきらかになっている百五十六事業の事業費を合計すると、約九兆円にものぼります。
 熊本県の川辺川ダムをはじめ、いま全国で問題になっている大型ダムの見直しや中止こそが求められているのに、あくまで計画中、建設中のダムは強行しようという小泉内閣の姿勢は、コンクリートダムからの脱却をめざす世界の流れをかたくなに拒否するものといわざるをえません。
 
二 日本のダム事業の問題点
 
 今回のダム調査で次のことがあきらかになりました。
 
1 利水、治水など事業の目的そのものが破たん
 
 党国会議員団が今回、調査したダムは、そのほとんどが利水、発電、治水などをあわせた多目的ダムの形態をとっています。しかし、利水、発電の面では、いずれのダムも、水道水や農業用水の需要を実際よりかなり多めに計算したり、電力消費も高度成長期と同じ伸びを見込むなど、実態とかけ離れた過大な需要予測になっています。
 岐阜県の徳山ダムをみても、木曽川水系での、生活用水と工業用水を合わせた都市用水の需要の実績は、毎秒四十数〓にすぎないのに、岩屋ダムなど既存の供給力はすでに六十三〓もあり、完全に供給過剰です。そのうえに徳山ダムの十二〓を加え、長良川河口堰(ぜき)などの新たな供給力も合わせれば百七〓に達し、需要実績の倍を軽く超えます。だれの目にも、水余りはあきらかです。
 熊本県の川辺川ダムや秋田県の成瀬ダムも農業用水としての利用目的はなくなり、北海道の平取ダムでも苫小牧東部(苫東)開発の破たんで工業用水の利用目的が失われています。愛媛県の山鳥坂ダムでも、建設省(当時)自身が「渇水対策ダムではない」と言明したように、市民一人あたりの水使用量と計画がかけ離れています。
 実際には水需要がないにもかかわらず、国や県がダム建設をすすめるための口実になっているのが、「水資源開発基本計画」(フルプラン)であり、政府はその過大な水需要見通しを放置したままです。
 国土庁(当時)が、九九年に策定した「全国総合水資源計画」(ウォータープラン21)は、一九八七年策定の前回の「計画」(ウォータープラン二〇〇〇)よりも、上水と工業用水を合わせた都市用水需要を五分の一に、大幅に下方修正しました。ところが、「水資源開発基本計画」(フルプラン)のほうは、いっこうに下方修正がなされていません。この問題を指摘されて、扇千景国土交通相は、「フルプラン」について「修正しなければならない」と認めました(日本共産党の緒方靖夫参院議員への五月二十四日の国土交通委員会での答弁)。
 目的を失っているのは利水だけではありません。新潟県の湯之谷ダムは、東京電力の発電用として建設が予定されているダムですが、電力需要の横ばいと電力の「自由化」のもとで、電気料金の引き下げを求める動きが活発になっているなか、巨額の事業費がかかるダムを建設してコストの高い電力を供給することは、すでに現実的ではなくなっています。
 各ダムとも、これらのことが批判されると、今度は治水対策を前面に押し立ててきています。その治水の目的さえも費用面や環境面から、ダム建設でやることの妥当性に疑問が指摘されています。多くの場合、もはや多目的ダムではなくて“無目的ダム”です。
 新潟県の清津川ダムでは、県が治水目的そのものを計画の見直し点としてあげていますし、兵庫県の武庫川ダムでは、ダムでは水害が防げず、川の拡幅や浚渫(しゅんせつ)などの河川改修のほうが有効であると指摘されています。
 しかも、治水対策でも、自然を生かした河川改修を追求するのではなく、百年に一度の大洪水を想定するなどして、できるだけ大規模なダムをつくろうという姿勢が露骨です。
 本来、治水対策は「総合治水」という観点が大切です。開発で森林を伐採すれば、当然、雨水は吸収されずに一気に川に流れ込みはんらんをもたらします。したがって治水のためには森林を保全するという治山がどうしても欠かせません。
 ところがいまの河川行政は、山林を伐採したり荒廃のまま放置したりしておきながら、一方でコンクリートダムや堤防、コンクリート三面張りの川をつくり、流れ込んだ水を一刻も早く海に流そうとしてかえって大きな水害をもたらすという、悪循環におちいっています。
 
2 災害の危険のあるダム事業も
 
 ダムの基盤となる地盤に問題があり、建設することでむしろ危険が増すと指摘されるダムもあります。
 長野県の浅川ダムでは、建設予定地一体が水をふくむと劣化する裾花(すそばな)凝灰岩であり、熱水変質・モンモリトナイトの分布などで地滑りが起きやすい地質条件となっています。あまりの地盤の悪さに、浅川ダムの建設を口実に付け替えられた道路の場合、岩盤への負担を最小限にするとして、当初のダム事業費(百二十五億円)自体を上回る建設費(百四十億円)をかけてループ橋を建設したほどです。
 八〇年代に一度、ダムサイトとしては不適切だとされた地域にダムの建設を強行することは無謀であり、九五年七月の梅雨前線災害で、裾花ダムがダム自体をまもるために過剰放流をおこない、下流住民を浸水被害で命の危険にさらしたような事態を招いたり、最悪の場合、ダム決壊のおそれもあります。
 こうした危険をはらんでいるのは、浅川ダムだけではありません。岐阜県の徳山ダムも、ダムの堤体から活断層は一〓・八〓〓離れた所にあるといいますが、貯水してできるダム湖を横切る形になります。大阪府の安威川ダムでは、馬場断層など活断層が多数走っており、大阪府の調査でも「ダムサイトには全部で八系統二十四本の断層が分布している」とのべています。こうした断層の密集地域にダムを建設すること自体に問題があります。
 また、長野県の裾花川や岡山県の新成羽(しんなりわ)川のように、大雨のさいにダムからのいっせい放流がおこなわれ、そのため住民の被害が拡大した「ダム災害」の例もあとを絶ちません。
 
3 住民の声を聞かず事業を強行
 
 事業を一方的に住民に押しつけるやり方も問題です。いま全国で問題になっているダムは、住民が事業の必要性に疑問を抱いているにもかかわらず、国や県は、“ともかく水が足りない”、“生命と財産をまもるためにはどうしても必要だ”と、一方的に説明するだけで、住民が納得するような客観的な根拠をしめせないでいます。
 事業の目的そのものがいい加減だから、大切な自然環境を壊してまで、巨額の税金を使ってまでつくる必要があるのかという疑問が住民の間にわきおこるのです。
 近年、事業官庁のアカウンタビリティ(説明責任)が強調されていますが、公聴会や説明会が開かれても事業官庁がただ一方的に「必要性」をくり返すだけで、住民の意見は聞き置くだけ、学者、研究者が対案、代替案を出しても、一切検討しようとしません。
 結局、住民の疑問が払拭(ふっしよく)されないまま、事業官庁は調査に着手し、用地買収をどんどんすすめ、最後まで反対した住民には土地収用をかける、こういった強権的なやり方自体が欧米からはるかに遅れた日本の行政の実態です。
 その典型が岡山県の苫田ダム建設です。地元奥津町では、一九五七年に構想が発表されたときから、長きにわたり町民あげての強い反対運動が展開されました。しかし、県は町への補助事業を凍結するなど、前代未聞の卑劣なやり方で奥津町に「行政圧迫」をくわえ、そのために三人もの町長が辞任に追い込まれました。その一方で、国と県は、強引に用地買収をすすめ、九九年にとうとう本体工事の着工を強行しました。
 苫田ダムも、利水、治水ともあきらかに目的の破たんしているダムです。党調査団の聞き取りでは、立ち退きを承諾した住民の多くの方が、「今でもダムは必要ないと思っている」とのべています。長年住みつづけた故郷から、やむなく立ち去ることを強いられた住民の苦悩は、はかりしれません。苫田ダム問題は、日本の河川行政の汚点として記憶されるべきものです。
 土地収用法の改悪が六月末の国会で日本共産党、社民党などの反対にもかかわらず、自民、公明、保守、民主、自由の各党の賛成多数で可決されました。事業の計画段階で、住民が事業目的の妥当性を問う場が保障されていない現状で、いままで土地収用委員会での論議が唯一、公の場で「公益性を問う」機会でした。政府は、今回の土地収用法改悪で、収用委員会での公益性にかんする主張を制限するなど、その機会すら奪い、さらに強権的な事業の推進をはかろうとしています。
 
4 「お手盛り」の再評価制度
 
 ダム事業にたいする批判の高まりを受けて、旧建設省は、九五年に「ダム審議委員会」による「見直し」を始め、九八年には「再評価実施要領」にもとづき設置された「事業評価監視委員会」による見直しを開始しました。
 国や県などは、これらの手続きで必要性のない事業は見直し、中止したとしていますが、実際に中止されたダム事業はすでに休止状態にあるものや貯水池など小規模のものばかりで、もっとも無駄と環境破壊が指摘されている大型ダムは一切見直されていません。
 実質的な見直しがおこなわれない理由は、「再評価実施要領」の見直し基準が甘く設定されており、現在進行中のほとんどの事業が対象にならないこと、また「事業評価監視委員会」が第三者機関とは名ばかりで、実際には監視の役割をほとんど果たしていないことにあります。
 各地方建設局や都道府県におかれた「事業評価監視員会」の委員は、「監視」される側の事業官庁自身が選任し、審議も非公開で住民の意見を反映させるための制度的保障はまったくなく、中立性、公平性を著しく欠くものです。
 しかも、審議のやり方も、全対象事業について審議するのではなく、そのごく一部をサンプルとして抽出し、事業官庁から説明をうけるだけという杜撰(ずさん)なものです。これでは、あらかじめ事業官庁が決めた案を追認するだけで、第三者による評価とは名ばかりで事業にお墨付きをあたえるための機関といわざるをえません。こういう再評価制度では、事業の客観的な評価や見直しができないのはあきらかです。
 
5 河川改修より大型ダム建設を誘導する補助金のしくみ
 
 大型ダムの建設を誘導するような現在の補助金のしくみ、起債のあり方も問題です。国の補助事業に該当する大型ダムは、国費が二分の一、地方負担分もその六六%が交付税で措置され、最終的に全体の約八〇%の費用が国から手当てされることになります。
 ところが、地方自治体が、自然をまもるために、中小規模の改良工事で河川改修をすすめようとした場合は、基本的に単独事業にされてしまいます。また改良工事を組み合わせて「統合整備事業」として申請し、それが認可されたとしても、ダム事業より低い補助率です。
 道路建設も、ダムの関連道路として申請した場合は国の補助率が高くなり、さらに「水源地特別対策措置法」の指定を受ければ、各事業の補助率がカサ上げされることなども、大型ダム建設を誘導するしくみとなっています。
 これでは、地方自治体がコンクリートダムに頼らず自然を生かした河川改修をおこなおうとしても、財政負担が大きすぎて躊躇(ちゅうちよ)するのが実態です。
 
三 ダム事業の抜本的な見直しにむけて、、「六つの提言」
 
 以上の調査結果をふまえ、ダム事業の抜本的な見直しの方向として次の六点を提案します。
 
1 計画中、建設中のダムでも、目的を失ったダムはただちに中止し、必要な代替策と地域振興策をはかる
 
 利水、発電の目的を失ったダム、災害危険地域のダムについては、ただちに中止すべきです。治水目的をかかげたダムについても、強引にすすめるのではなく、河川改修への切り替えなど代替案もふくめて、住民参加で検討をすすめるべきです。
 現行の「再評価実施要領」による見直し手続きを廃止し、事業官庁から独立した「ダム事業見直し委員会」を、国、都道府県に設置し、住民参加のもとで計画中、建設中のダムを再検証し、事業の中止をふくめ抜本的な見直しをおこなうことが必要です。
 ダム事業を中止した場合は、まず、必要性もないのに事業をすすめてきた国と県の責任をあきらかにすることが重要です。そのうえで、ダム建設計画に翻弄(ほんろう)され、苦難を強いられてきた地域住民の居住環境の回復をはかるべきです。
 被害の実態にあわせて、住居の改善など、個人補償の実施も必要です。また、ダム予定地は、「どうせ水没するのだから」といって、地域産業の振興や生活基盤、公共施設の整備がおくれた状態や老朽化した状態で放置されてきました。また、ダム工事優先で、堤防の補強など必要な河川改修も後回しにされてきました。住民がくらしつづけられるように、地域の振興と再生を国と県の責任でおこなうべきです。
 
2 「森は天然のダム」、、自然環境の保全を優先する
 
 ダムがつくられれば、工事のために多くの森林が切り払われ、山肌は削られます。そのダムで貯水が始まれば、生まれるダム湖によって、さらに広い面積の森林が水没します。
 いますすめられている多くのダムの建設計画は、生態系の頂点に立つオオタカ、クマタカ、イヌワシなどの絶滅のおそれのある猛禽(もうきん)類の生息を脅かすもととして問題になっています。
 完成するとダム湖の面積が諏訪湖に匹敵し、貯水量は浜名湖の二倍にのぼるという巨大ダムである岐阜県の徳山ダムでは、水資源開発公団が当初いないといっていたクマタカやイヌワシの生息が確認されました。このことについて、公団自身が設置した「徳山ダム ワシタカ類研究会」は「工事を全面中断して数年をかけて調査しなければ最良の保存策はできない」という提言をおこない、自然保護協会は「解析に十分な調査がなされたとはいえない」、「一度全ての計画及びスケジュールを見直」すべきだという指摘をおこないました。しかし、これに耳をかさず、いまも「工期を遅らせることはできない」として工事がつづけられています。
 ダムが引き起こす環境破壊は、上流域だけの問題ではありません。ダムを土砂が埋める堆砂が、下流域にも深刻な問題を引き起こします。
 現在、国土交通省と水資源開発公団が管理中のダム八十三カ所のうち、すでに堆砂の計画容量を超えたものが二つ、二倍以上のスピードで堆砂が進行しているダムが十六、三倍以上のダムが九あり、設計どおり百年もつスピードなのは半分にも満たない三十四ダムだけです。
 富山県宇奈月町の出し平(だしだいら)ダムでは、たまった土砂の排出をおこなったところ、黒部川がヘドロ状のものでにごり、魚介類に深刻な打撃をあたえ、汚染は富山湾にまで達しました。ダム湖の底の堆積物のなかには、水が停滞し酸素が少ないため、分解がすすまずヘドロ状になった落ち葉などの有機物がふくまれているのです。ダムが埋まるという現象の一方で、ダムの下流には土砂の供給がおこなわれなくなり、生き物が必要とする豊かな生息〓・生育場所である日本の美しい渚(なぎさ)や干潟がやせ細っていくという事態も起きています。
 このような環境への影響を考えると、どうしても必要な場合を除いて、コンクリートダムに頼るのではなく、もっと森林の多面的な機能を生かした河川行政にとりくむべきです。
 森林は、浸入能や保水性の大きい表層土の存在をとおして、降雨時の流出を緩和させ、洪水時には流量のピークをおさえるという洪水調節機能を持つとともに、水源涵養(かんよう)機能をもっています。また、土砂の流出を防止するという国土保全機能ももっており、川の濁りをおさえ浄化する役割を果たしています。
 こうした機能を発揮させるためにも、スギやヒノキなどの針葉樹林の荒廃を防ぐ造林事業は、表層土の流出や山地崩壊をくいとめるためには不可欠ですし、ブナ、ミズナラ、ナラ、トチなどの広葉樹林の保全は、その豊かな水源涵養機能とともに、多様な生物による生態系の維持にとって重要です。
 政府はダム建設の輝かしい象徴として、日本にあるすべてのダムの貯水量を合わせたよりも多くの水(三百六十七億立方〓)をためているフーバーダムをよく例にあげます。しかし、そのフーバーダムをコロラド川の堆砂からまもるために、さらにグランドキャニオンの上流に、グレンキャニオンダムが建設されましたが、それによって雪解けによる洪水はなくなり、グランドキャニオンの生態系は一変しました。崖から崩れ落ちた砂礫(されき)が流路をふさぐ一方、下流では砂州が減少するなど環境の変化が起こりました。そのためアメリカ政府は、九二年にグランドキャニオン保護法を制定し、九六年にはグレンキャニオンダムから大量の水を放水して洪水を引き起こす制御放流実験を実施しました。
 現在、アメリカでは、新しいダムを建設するよりも、既存のダムについて、それが存在することによる影響や、長期的な環境コストや社会的コストなどの評価がすすめられ、環境コストがあきらかに大き過ぎる古いダムについては、撤去が検討され、実行されています。
 こうした姿勢を、日本の政府も取り入れるべきです。そのためにも、環境アセスメントの徹底した実施と、環境保全を優先した河川行政への転換をすべきです。
 
3 河川改修や森林保全の治水対策をすすめられる支援策の強化を
 
 大型ダムの建設自体が、自治体がみずから河川管理をおこなう足を引っぱる役割を果たしています。
 地方分権の動きのなかで、河川行政の地方分権化が問題になりましたが、国が直轄で管理すべき河川を広範に残す結果となりました。その根拠となった国の「直轄管理区域」を設定する基準として、下流に大都市があったり、一定の広さ以上の想定氾濫(はんらん)区域があったりすることなどとともに、これらと一体で管理すべきダムがあることが条件となっています。国の公共事業を確保するために利用されたといわなければなりません。
 自治体は、ダム計画を中心とする河川管理計画のもとに置かれており、下流の河川改修要求も、ダムの建設を前提にしたものにならざるをえません。もっと都道府県に管理の権限を与えるべきです。
 また、ダム建設など大型事業には国の補助率が高く、地方交付金で面倒をみる起債も多く認められ、周辺整備事業にも補助金が出されるなど厚い手当てがなされています。その一方で、自然をまもるために小規模な河川改修をおこなった場合は地方の単独事業となり、現在の補助金のしくみがダム推進の誘導策になっています。
 鳥取県知事が、ダムの事業費と河川改修費を適正価格で比較し、ダム事業を中止したように、河川改修の方が事業費の安くなる場合が多くあります。ダム建設に手厚い補助金のあり方を見直し、河川改修や森林造成への支援を強める政策に転換すべきです。
 さらに地域の治水対策は、地域の住民と自治体で選択できるように、ヒモつきでない補助金(統合的、一括的なもの)システムや治水財源の地方への委譲も必要です。
 
4 住民の負担をあきらかにし、健康をまもる
 
 水需要がないにもかかわらず、利水を口実にダムが建設されれば、下流や周辺の自治体は不要な水を押しつけられ、高い受水料を払わなければならなくなります。問題なのは、ダムが完成後、下流や周辺の自治体や住民にとって、どれだけの負担になるのかということが、あきらかにされていないことです。
 佐賀県では、ことし三月まで武雄市の水道料金が全国一高かったのですが(一般家庭二十〓あたり月額六千四百八十九円)、ダム建設の目的にあげられた都市用水や農業用水への需要がない嘉瀬川ダムが問題になっています。嘉瀬川ダムの建設や嘉瀬川〓・巨勢川〓・城原川〓・筑後川の四本の川を横断する佐賀導水事業がすすめられれば、関係の自治体の住民にさらに水道料金の値上げが襲いかかってきます。佐賀県の城原川ダムでは、「佐賀県東部水道企業団」に加盟する十一自治体の財政がきびしく、約二百億円の負担は重いとして、「水はいらない」との決議をあげています。
 水需要がないまま、ダム建設がすすめられれば、多くの自治体の住民に、水道料金の大幅値上げが突きつけられることになります。家計に被害を与えるだけでなく、自治体の財政力を奪っています。
 こうしたダムによる自治体〓・住民の負担を、建設を終えてからの後始末として押しつけるのではなく、建設に着手する前に住民にあきらかにすることは、国〓・自治体が果たすべき当然の説明責任です。
 住民にとって深刻なのは、料金の値上げだけではありません。わざわざ現在のおいしい水が飲めなくなり、まずくて、場合によっては有害物質をふくんだ水を飲まされることになります。
 新潟県の小出町では、おいしい地下水源から上水が供給されていますが、佐梨川ダムができれば、揚水ダムであるため夏場の渇水期には、同じ水を何度も上げ下げして揚水発電をおこなった「くさい水」をダムから取水して上水に使うことになります。
 長良川河口堰から取水された水は、愛知県知多半島の自治体に供給されていますが、かつては木曽川の上流から取水したおいしい水を飲んでいた住民は、いまでは“味のついている”まずい水を飲まされています。
 研究者の調査によれば、長良川など河川の下流部では、女性ホルモンのようなはたらきをする環境ホルモンが検出され、また、下痢などの症状を引き起こす感染症の原因となる原虫のクリプトスポリジウムによる汚染も懸念されており、霞ヶ浦導水事業では、水に、肝臓毒であるミクロシスチンや神経毒のアナトキシン(いずれもアオコにふくまれる有毒物質)がふくまれていることがあきらかになっています。河口近くの水を、上水に使う非常識はあきらかです。直ちに環境ホルモンやクリプトスポリジウム、ミクロシスチンなどの検査を、こうした水道用水の検査項目としてもうけることが必要な状況です。
 ダム建設のために、住民に高くてまずい、場合によっては危険な水を飲ませるようなことは、やめるべきです。
 
5 計画段階から住民が参加する「河川事業評価制度」を創設する
 
 日本共産党は、公共事業の評価制度について、計画段階から住民参加と中立〓・公正な第三者機関の点検が保障された事業評価制度の確立を提唱してきました(二〇〇〇年七月三十一日、不破委員長〈当時〉の衆院代表質問)。とくに河川事業は、規模も大きく複数の自治体にも影響する事業であることから、独自の事業評価制度が必要です。
 今後の河川行政を計画段階から住民参加でチェックするため、次のような「河川事業評価制度」を提案します。
 第一に、国、地方公共団体、公団など事業官庁は、一定規模以上の河川事業についてその必要性をあきらかにしたうえで、複数の実施計画案をつくり、費用便益の妥当性、環境への影響などを自己評価し、その評価にかかわるすべての資料を公表します。
 第二に、事業官庁から提出された複数の実施計画案、自己評価書を審査するため、事業官庁から独立した第三者機関である「河川事業審査委員会」を設置します。「審査委員会」は、コンクリートダムをできるだけつくらないことを前提に、財政と環境の両面で実施計画案を審査します。「審査委員会」の事務局は、事業担当部局以外におき、委員は、住民、学識経験者のなかから公募で選出します。
 第三に、「審査委員会」は審査にあたって、住民の意見を積極的に聴取し、寄せられたすべての意見を公表します。「審査委員会」は公開でおこない、提出資料はすべて公表されるようにします。また、「審査委員会」は、事業官庁の案にたいする代替案が住民や学識経験者などから提案された場合は、それをふくめ審査します。これらをつうじて審議をつくし、住民の合意形成に努めます。「審査委員会」は、審査の結果を事業官庁に提出し、事業官庁はその結果を尊重する義務を負います。
 
6 政官業の利権・癒着構造にメスを入れる
 
 ダムや道路などの大型プロジェクトは、ほとんど計画の段階から大手ゼネコンが関与し、どこが工事を担当するかは事実上決まっているとさえいわれています。事業の受注にさいし、政治家や民間企業に天下りした役人の関与が指摘されることも少なくなく、このことが当初の目的を失った事業が一向に見直されず強行される原因の一つになっています。
 たとえば、長良川河口堰建設では、工事認可の十五年も前から、日本土木工業会の調整で大成建設、鹿島の共同事業体に受注が内定していたことがあきらかになっています。工事を受注した大成建設、鹿島、五洋建設の三社からの国民政治協会(自民党の政治資金団体)への献金は発注時に急増し、八七年から九二年の六年間で六億円をこえました。
 また、公共事業は事業に着手してから事業費がどんどんふくらみ、最終的には当初の工事費を大幅に上回るというのが当たり前になっていますが、ダムの典型的です。長良川河口堰でも、当初予定した事業費二百三十五億円が、実に本体工事だけで千五百億円(当初倍率六・三八倍)にもふくれ上がりました。徳山ダムは事業費が二千五百四十億円とされていますが、堤体の基礎用に山を削っている段階で、すでに二千億円に上っており、これから堤体を建設すれば大幅に事業費がふくらむことはあきらかです。当初は少なめの事業費を計上し、事業が認可をうけたあとは、設計変更という名目で野放図にゼネコンへ追加工事を発注するしくみも問題です。
 ダム事業における談合の疑惑もあとを断ちません。瀬古由紀子衆院議員の調査によれば、国土交通省と農水省の主なダムの最近の契約状況では、工事の予定価格にたいする落札価格の率(落札率)が一〇〇%近くで落札しており、談合の疑いが色濃く見られます。
 小田ダム(宮城)では落札率九九・九%(落札業者は、清水建設、奥村組、鴻池組)、摺(すり)上(かみ)川ダム(福島)では九九・八%(飛鳥建設、大林組)、苫田ダム(岡山)では九八・三%(佐藤工業、鴻池組、アイサワ工業)、徳山ダム(岐阜)でも九六・三%(熊谷組、大成建設、青木建設)となっています。
 このような談合が可能になるのは、ダム建設をめぐる根深い政官業の構造的な癒着があるからです。無駄なダム事業をストップするためにも、企業・団体献金、ゼネコンへの天下りと談合の禁止と入札制度の改善は不可欠です。
**
 以上の六つの提言を実施することによって、コンクリートダムからの脱却をはかり、財政の無駄をなくして自然環境と共生する新しい河川行政に転換することができます。日本共産党は、その実現のために全力をつくすものです。
 
日本共産党国会議員団「ダム調査」の概要
 
@平取ダム(北海道)
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 九百二十億円(九四年四月改正)
 ●調査日 五月四日
 ●参加議員 児玉健次衆院議員、池田幹幸参院議員
 ●問題点
 ●事業目的の破綻 「苫小牧東部工業地帯への工業用水の供給」という当初の利水目的が苫東開発の破綻で失われたが、「治水」等を新たな目的に建設をあきらめていない。九七年五月、平取ダム建設を検討する「沙流川総合開発事業審議委員会」で、東委員長(北大名誉教授・砂防学)が「建設に反対を表明」した。同委員会内でも「中止」が論議されている。
 環境破壊 建設予定地にハヤブサやクマゲラの生息も確認されるなど、環境省が絶滅危惧種としている鳥類がいる。
 地質の特徴 断層が発達しており、地震時には提体が不等沈下するおそれがあり、さらに地盤の崩壊がはげしく流出土砂が多い。また、地滑り崩壊の危険性が指摘されている。
 財政負担 九五年までに下流の二風谷ダムに六百五億円を使い、新たに平取ダムの着工、第三ダムの着工となると総事業費がいくらに膨れあがるか見当もつかない。
 
A成瀬ダム(秋田)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 千五百三十億円
 ●調査日 五月十四日
 ●参加議員 松本善明衆院議員
 ●現況 知事は昨年、国から事業の見直しについての意見を求められたのにたいして、推進のゴーサインを出している。党調査団が県知事と懇談したさいに、知事は、「ダムをもっと小さいものにするなど、代替案があれば受け入れる。国で考えてやってほしい」と発言した。国土交通省は、五月二十九日、事業推進のための「告示」をおこない、あくまでも建設推進の姿勢である。六月二十五日、反対住民が扇大臣に、「計画の見直し」を求める申し入れをおこなった。
 ●問題点
 事業目的の破綻 事業目的(洪水調節、流水正常機能維持、かんがい、水道水、発電)が失われている。
 住民から、「農業用水は現状でも十分足りている。減反が強化されているうえに米価下落による減収で、ダムの農家負担には応じられない」、「いまあるかんがい用水や地下水の利用を止めてダムの水をというのはおかしい」などの声があがっている。
 環境破壊 アセスメントがきわめてずさんで、再三調査やり直しをしているが問題だらけ。イヌワシ、クマタカの営巣、育雛域の可能性が高く現在観察中。ダムが成瀬川の生態系にどのような影響をおよぼすかについて検討されていない。
 地質の特徴 断層破砕帯があり、近くには大規模な地滑り跡がある。専門家は、「建設費が膨大になる」と指摘。国土交通省は、「大丈夫、通常の工事で間に合う」としているが、まだ十分なボーリング調査などはおこなわれていない。
 財政問題 住民から「ダム本体に千五百三十億円かけたほかに、かんがい事業に三百九十億円もかけるのはおかしい」という声が出されている。
 その他の問題点 現地調査のさいに、ダム以外の治水方法について現地事務所に質問すると、「検討した。パンフレットになっていないがワープロには入っている。ダムのほうが安くつく」というだけで、具体的な説明はまったくない。利水・治水の面でダムはなくても十分やれるが、「ダム建設先にありき」の姿勢で代替案の検討がきわめて不十分。
 
B湯之谷揚水発電所(ダム)(新潟)
 
 ●事業主体 電源開発株式会社 
 ●事業費 三千億円 
 ●調査日 五月八、九日
 ●参加議員 大門実紀史参院議員
 ●内容 湯之谷揚水発電計画は、県が推進している「佐梨川総合開発事業」に参画するもので、上下の二つのダムの間を水路トンネルで結び、約四百〓の落差を利用して発電(夜間は原発などの余剰電力でポンプアップ)するもの。県が計画する下部ダムの佐梨川ダム建設(六百五十億円)と連動した計画で、建設費はあわせて三千六百億円の巨費となる。
 ●問題点
 高コスト 夏場の電力需要(ピーク)に対応するための効率の割には、あまりにもコストがかかりすぎる。それは、「電力各社が発電所建設計画の凍結、撤回など設備投資の圧縮を加速し始めた。ピーク対応は投資効率が悪く、電力会社の経営を圧迫、世界的にも割高とされる日本の電気料金の大きな要因となってきた」(「日経」三月十日)との報道でもあきらかである。
 事業提携者の東京電力は、二月八日、湯之谷揚水発電所をふくむ新規発電所の建設を凍結すると発表。電源開発現地事務所は、党調査団に「東電から大幅見直しの相談があり、本社と東電で協議中」であることを認めた。
 ダム水利用の強要 県が治水、水道用水、克雪用水確保等の目的で推進している佐梨川ダム計画も、その必要性が弱くなっている。
 小出町当局は、党議員の質問に「現在の地下水源で三十〜五十年は大丈夫」と答えている。河川改修や三国川ダムの建設などで治水の役割が減少している。小出町・湯之谷村では、地下水源による上水道を利用しており、ダム水の利用によって水道料金は高くなるうえに(県・町当局も認めている)、くさくてまずい水を利用しなければならなくなるとの不安がある。
 環境破壊 イヌワシの日本で最大の生息地、自然豊かで貴重な希少動植物が住む重要な国定公園が失われる。秘境の湯「ランプの宿・駒の湯山荘」が水没。
 財政負担 揚水ダム事業のうち県負担分は約百六十億円(報道)。
 
C清津川ダム(新潟)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 二千五百億円 
 ●調査日 五月四日
 ●参加議員 木島日出夫衆院議員
 ●問題点
 事業目的の破綻 目的は利水と治水。利水量が、当初計画(八〇年)の毎秒三十五〓から九八年調査で毎秒二〓に激減し、また治水面でも、基準点での信濃川流域面積にたいし、清津川流域ではその二%の面積しかないことからその効果はほとんどなく、ダム建設の必要はない。
 財政負担 国直轄事業だが、県負担は事業費の約三〇%の約七百五十億円。推進の立場をとる知事でさえ、党県議の質問に、「利水・治水の両面をはじめ、財政状況など多面的角度から現行のダム計画案のダム規模の縮小、事業費の縮減に向けた見直しが検討されるべきもの」と答弁している。
 環境破壊 土砂堆積量および浸食量の変化による名勝・天然記念物である清津峡の保全を損なう危険性がある。クマタカ、イヌワシ等猛禽類が生息する貴重な場所で、ダム建設の影響は避けられない。
 
D八ッ場ダム、倉渕ダム(群馬)
 
 ●事業主体 国直轄(八ッ場ダム)/県(倉渕ダム)
 ●事業費 ▽八ッ場ダム 二千百十億円(一九八五年価格)、ほかに水特法事業(九百九十七億円)、基金事業(二百四十六億円)/▽倉渕ダム 二百七十五億円
 ●調査日 五月二十、二十一日
 ●参加議員 吉川春子参院議員
 ●現況、問題点
 〈八ッ場ダム〉
 水没する川原湯温泉をはじめ、住民の代替地の造成と砂防ダム、水没する国道、県道の代替道路、小学校の建設用地の造成、工事用道路などの建設がすすめられ、すでに事業費の五三・八%にあたる千百三十五億円が投入されている。
 事業目的の破綻 首都圏の水道水・工業用水確保が第一の事業目的だが、通年取水量の三七・一%を占める東京都は、現在の保有水源でも一日あたり約百万立方〓(都一日使用量の約二〇%)の余裕があり、新たな開発は不要。同じく二九・一%を占める埼玉県では、今後の水需要計画を下方修正した。
 洪水調整の目的もあるが、その根底には過大な洪水想定にもとづく治水計画がある。ダムの建設予定地である吾妻渓谷は、洪水のさいに天然のダムの役割を果たしており、新たなダム建設の必要性はない。
 水質悪化 同ダムの上流からは強酸性の水が流入し、その半分の支流については大量の石灰投入による中和がおこなわれている。これらの水と上流からの生活排水、農畜産排水が混入するため、藻類の異常繁殖など水質悪化が予想される。
 財政負担 洪水調節のアロケ率は五二・五%で、うち七割は国負担、三割は都県負担。利水のアロケ率は四七・五%で利水割合に応じて五都県負担となるが、結局は水道料金にはね返り、住民に重くのしかかる。
 〈倉渕ダム〉
 事業目的の破綻 洪水被害の防除、高崎市の水道水供給を目的としているが、過大な被害想定にもとづく治水計画であるばかりか、下流の堤防改修がおこなわわれて以来、五十年以上にわたって一切の洪水被害は発生していない。
 高崎市の水道用水の需給計画についても、相次ぐ水利用型事業所の撤退や既存の地下水の活用を考慮すれば、新たな表流水の開発は必要ない。
 財政負担 代替道路等の建設のためにすでに事業費の四七・六%にあたる百三十一億円が使われており、建設費の大幅な増加が懸念されている。水道料金の上乗せも必至である。
 
E思川総合開発(栃木)
 
 ●事業主体 水資源開発公団 
 ●事業費 千七百四十億円(南摩ダム、変更後)、三百十億円(東大芦川ダム―県事業)
 ●調査日 五月十八、十九日
 ●参加議員 塩川鉄也、矢島恒夫両衆院議員
 ●現況、問題点
 〈南摩ダム〉
 事業目的の破綻 高度経済成長期に首都圏の水需要にこたえるために計画されたが、今後の水需要も横ばいが推測され、建設目的の妥当性は失われている。利根川の治水対策は「二百年に一度の洪水」を想定し過大な洪水予測であるが、ダムだけに依存するのではなく総合的・科学的な見直しが求められる。
 住民同意 水資源開発公団は、水没予定地域の住民七十八世帯にたいする補償基準提示を五月におこなった。ダムサイトの洪水吐き予定地の住民十一戸は、「南摩ダム建設絶対反対室瀬協議会」を結成し、公団との話し合いを拒否している。
 財政負担 計画縮小で二千五百二十億円から千七百四十億円とされたが、九二年度の単価で算出した金額で上積みが予想される。関係自治体の負担と水道料金へのはね返りが必至。
 環境破壊 思川水系の上流は、クマタカ、オオタカなど希少な猛禽類が生息している。スギ、ヒノキなど豊かな森林、魚類も多く、その保護を訴える声が多い。
 〈東大芦川ダム―県事業〉
 県知事は、五月の記者会見で、県の最終判断を保留し、結論を二年間先送りすることを発表した。しかし、ダム建設で水没する地域(水没する世帯四戸、工事で立ち退きが迫られる世帯十戸)住民の半数以上がすでに転居している。ダム本体の工事の取り付け道路の工事は着手していない。
 財政負担 三百十億円としているが、上積みが予想される。内訳は、国が約百六十億円、県が約百三十二億円、鹿沼市が約六億円などで、自治体の負担が重い。
 事業目的の破綻 鹿沼市の水需要と東大芦川の治水が事業目的だが、現在鹿沼市の水道水は一〇〇%地下水でまかなっているし、人口増もあまり見込まれていない。治水では、東大芦川の河川氾濫で被害が出たのは一九〇二年(明治三十五年)のみであり、河川改修、堤防のかさあげなどで対処できる。
 環境破壊 「関東随一の清流」といわれるほどの清流と豊かな森林がある。清流にはイワナやヤマメが生息し、渓流釣りの名所として釣り人から親しまれている。オオタカなど希少な鳥類も生息している。
 
F霞ヶ浦導水事業(茨城)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 千九百億円
 ●調査日 六月二十五日
 ●参加議員 塩川衆院議員
 ●現況 霞ヶ浦開発事業、霞ヶ浦用水事業、水源地域整備計画は完了し、残るは霞ヶ浦導水事業である。
 ●財政負担 工事のすすみ具合は約三割だが、事業費はすでに六割を超えており、事業費がかなり増えていることは確実である。うち県負担は、三割強の六百二十六億円である。
 新規の開発量は日量百十万立方〓で、二〇一〇年の完成をめざしている。県は、六月定例議会で、施設規模見直しを国に要望していたことをあきらかにした。また、県は、三十万立方〓の削減を要望している。
 ●問題点、、各分野の反対意見
 ・アオコにふくまれる肝臓毒、神経毒をもつミクロシスチン、アナトキシンの飲料水基準を定めること、浄水場に除去装置をつけること。(彼谷国立環境研究所研究員)。
 ・漁業と生態系をまもるために霞ヶ浦導水に反対。那珂川の取水口建設に同意しない。計画撤回を実現してほしい。(関係漁協組合長)
 ・建設の中止・凍結を知事に要望した。国会で、計画撤回について追及してほしい。(「霞ヶ浦導水を考える県民会議」)
 
G相模大堰(神奈川)
 
 ●事業主体 県内広域水道企業団
 ●事業費 三百四十四億円
 ●調査日 五月二十一日
 ●参加議員 大森猛衆院議員、畑野君枝参院議員
 ●現況 企業団は、相模川水系建設事業(第一期)として首都圏最大級の宮ヶ瀬ダム(総貯水量約二億トン)と取水施設の相模大堰を建設。総事業費は七千四百六十九億円で、宮ヶ瀬ダムは今年度から本格稼働。相模大堰の事業費は、取水施設、沈砂池などをふくめて三百四十四億円。
 ●問題点 企業団を構成する四自治体(神奈川県、横浜市、川崎市、横須賀市)の水需要(給水量)は、九二年をピークに減少し横ばいとなり、予測を大幅に下回っている。一方で、関係自治体の受水費負担は増大し、横浜市は年間五十〜六十億円負担が増える見通し。
 
H利賀ダム(富山)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 九百億円
 ●調査日 五月十二日
 ●参加議員 木島衆院議員、小泉親司参院議員
 ●問題点
 事業目的の破綻 庄川沿川地域の洪水調節については、関係市町村からの切実な要望とはなっておらず、百五十年に一度の洪水対応策という過大な計画であり、他の方法もふくめ科学的な検討が必要。工業用水の確保は、現在必要性は認められない。
 河川環境の保全については、ダム建設予定地の上流にある豆谷ダム(関西電力)や利賀川ダム(富山県)は築造四十数年が経過しており、十数年前に土砂でほぼ埋まっており貯水能力はゼロであり、ダム建設によってむしろ河川環境は悪化する懸念がある。
 環境破壊 山全体の地盤が弱い。クマタカ、イヌワシの生存が確認されているが、建設省は「環境への影響がほとんどない」というだけで、調査結果をあきらかにしていない。一方、道路建設などはすすんでおり、深刻な環境破壊が危惧されている。
 
I足羽川ダム(福井)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 二千二百億円 
 ●調査日 五月六日
 ●参加議員 木島衆院議員
 ●問題点
 事業目的の破綻 二〇一〇年度を目標年次とする県の「水資源総合計画」でも、足羽川ダムを除いても、各用水とも供給が需要を上回っている。県の担当者も党との懇談で、足羽川ダムによる日量五万立方〓の工業用水の需要は見込めないとのべている。治水についても、これまでの実績洪水を大きく上回る流量を見込んでおり、過剰予測といえる。
 財政負担 美山町での現計画は千五百億円といわれているが、四年前の「足羽川ダム建設事業審議委員会」で、水没戸数が多く「大きな犠牲をともない適当でない」と否定されたため、上流の池田町での代替案が出されたが、これは、導水トンネルを使う計画で、事業費が二千二百億円に膨れあがった。
 環境破壊 観光資源のアユ漁が壊滅状態になる。自然護岸の部子川の環境が破壊される。現計画では、旧大野郡内では、平泉寺につぐ古(こ)刹(さつ)である折立山称名寺など貴重な文化財が水没する。
 
J徳山ダム(岐阜)
 
 ●事業主体 水資源開発公団
 ●事業費 二千五百四十億円
 ●調査日 五月八日
 ●参加議員 瀬古由起子衆院議員、笠井亮、八田ひろ子両参院議員
 ●現況 未買収地を強制収用しながら、「本体の基礎掘削工事が六〇%ほどのところ」(公団)まできている。来年度から提本体のもりたてを開始。二〇〇六年の秋から試験堪水をおこない、二〇〇七年度で建設事業を終える。ダム湖面積は諏訪湖と同じ広さで、総貯水容量は浜名湖の二倍となり日本最大である。
 ●問題点
 財政負担 二千五百四十億円とされているが、現段階ですでに二千億円が使われており、事業費が大幅に上回ることは確実。四千億円にもなるともいわれている。
 事業目的の破綻 「治水に不可欠」がダム推進勢力の理由だが、徳山ダムがカバーする集水域は、揖斐川水系全体の一六%にすぎない。いつも徳山ダムの上流域にだけ豪雨がくるわけではない。個別の洪水対策が必要である。ところが、揖斐川の堤防等の改修は、“徳山ダム頼み”のおかげで、あとまわしとなり大きく遅れている。
 三十万人分の水を供給する予定であり、下流の大垣市が四割、その他の市町村が六割という配分。大幅な人口増予測のもとに計画が立てられたが、九一年から二〇〇〇年度までの給水対象地域の人口増はわずか四千人にすぎない。どこでも水は余っている状態。給水対象地域の神戸町町長は議会で、「水を買うつもりはない」と明言している。
 環境破壊 クマタカなど貴重な猛禽類に影響が出ており、専門家などは「工事を中止して環境アセスメントを実施すべき」と指摘している。
 地質の特徴 活断層がダム堤体に近接しており危険性が指摘されているが、公団は「一・八〓〓離れているから大丈夫」としている。しかし、活断層がダム湖を横切っており、けっして安全とはいえない。
 
K長良川河口堰(三重、岐阜、愛知)
 
 ●事業主体 水資源開発公団
 ●事業費 千八百五十億円
 ●調査日 五月十五日
 ●参加議員 笠井参院議員
 ●問題点
 運用開始から六年がたつが、さまざまな問題が生まれている。
 環境・観光・漁場破壊 長良川や伊勢湾の環境をいっそう悪化させ、生態系を破壊している。河口近くの水を上水にするという非常識なやり方で、危険な水を知多半島の住民に飲ませている。環境ホルモンやクリプトスポリジウムの検査が必要。
 アユやシジミなどが激減し、三重の漁業や岐阜の観光など地元経済に打撃を与えている(アユの激減で鵜飼いが成り立たなくなっている。鵜飼い集客数を維持するために、小学校五年生を半額料金で動員している。郡上八幡など、日本で一番アユがおいしい町として観光客を集めてきたが、それも成り立たなくなってきている)。河口付近の浚渫(しゅんせつ)で、漁場の破壊がつづいている。
 
L設楽ダム(愛知)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 二千億円
 ●調査日 五月九日
 ●参加議員 八田、笠井両参院議員
 ●問題点
 事業目的の破綻 利水、治水の目的の根拠が乏しい。利水については、水の供給量はわずかに毎秒一・一立方〓にすぎず、農業用水も将来の食料対策といいながら、園芸用を想定している。
 渇水対策もあげられているが、豊川は節水はするものの断水はない。蒲郡市も豊橋市も緊急用に矢作川から導水管を引いて渇水対策をおこなっている。
 豊川は、いくつもの支流が集まってできており、その一番奥地にダムを建設することよりも、それぞれの支流への対策をおこなわなければ治水策にならない。
 環境破壊 オオタカ三つがい、クマタカ一つがいの営巣が確認されている。川には、東海三県にしか生息していない天然記念物のネコギギがいる。
 地質の特徴 岩盤が弱いことから、当初は川にたいして垂直にダムを建設するはずだったが、はすかいに建設することになった。ところが設楽ダム調査事務所に新所長がきて、当初岩盤が弱いことから予定していたロックフェラー方式が、岩盤は大丈夫と重力式コンクリートダムに変更された。
 住民合意 地権者の了解が得られず、調査事業のまま止まっている。
 
M安威川ダム(大阪)
 
 ●事業主体 大阪府
 ●事業費 八百三十六億円
 ●調査日 五月二十日
 ●参加議員 吉井英勝衆院議員、山下芳生、宮本岳志両参院議員
 ●問題点
 事業目的の破綻 洪水防御の治水対策として計画されたが、その後、利水もふくめた多目的ダムに変更。
 治水対策については、六七年の北摂水害がほとんどが内水災害としての浸水であったという実際にてらして、ダム建設による治水効果は当初から疑問視されていた。川底が高く天井川である安威川の現状では、下水道で集めた水をポンプアップして流しても、逆流し溢水する不安を解消するほうが先決で、対策としては、むしろ、川底に堆積した土砂の除去などの河川改修をはじめ、流域の保水・遊水機能を確保するための施設整備など、総合的な治水対策を推進することこそが必要である。
 利水についても、大阪府の過大な水需要予測にもとづいた計画で、ダム建設の必要性はない。
 地質の特徴 馬場断層など活断層が多数走っており、かねてより危険性が指摘されてきた。大阪府の調査でも、「ダムサイトには全部で八系統二十四本の断層が分布しており、……複雑な岩盤状況を呈している」と報告している。加えて、府や茨木市自身が、ダム湖周辺を、地滑り危険個所、土石流危険渓流、急傾斜地、山腹崩壊地区に指定しており、まさに危険地域である。
 こうしたところにダムを建設することは危険であり、安全対策をおこなうとしても多額の工事費が必要となる。
 財政負担 総事業費は八百三十六億円だが、見直しが予定されており、千億円を超えるといわれている。その八割が国庫負担とされ、府は国に「水源地域整備指定」を申請(二〇〇〇年十二月認可)し、推進を促進している。
 
N武庫川ダム(兵庫)
 
 ●事業主体 県
 ●事業費 三百億円
 ●調査日 五月十九日
 ●参加議員 筆坂秀世、大沢辰美両参院議員、藤木洋子衆院議員
 ●現況 県内の医師、弁護士、生物学者、山岳愛好者などの団体や、個人が、見直し・中止の意見書を出す(昨年三月の“事前アセス”では、七百件、五千人から反対の意見書が提出された)など、運動が急速にひろがっている。
 日本共産党も県議会で一貫してとりあげ、専門家集団と現地調査をくり返し、ダムが洪水に役に立たないことをあきらかにし、総合治水の対案を提案している。知事は総合治水の検討を約束し、河川整備計画をつくること(昨年九月議会)、ダムの根拠数値の再検討をふくめ必要性の有無の検討をおこなう(三月議会)との方向をしめしている。しかし、本年度予算に一億三千万円の予算が計上されるなど、ダム建設の路線は変更されていない。
 ●問題点
 事業目的の破綻 ダムの計画は約三十年前から構想され、八〇年代後半に利水目的を追加した。さらに、九〇年代には、利水を目的からはずし、本ダム上流に貯砂ダムをつくり、それを観光利用する計画へと目的はころころ変わったが、ダム建設の姿勢は変えようとしない。
 県は、全国初のゲート操作なしの穴あきダムというが、水害常襲危険地域はダムができても安全にならず、抜本的な河川改修が必要である。しかし、これを先延ばししたまま、ダムの必要性のみを強調している。
 現在の下流部の堤防ができて八十年近くになるが、この間、武庫川下流域の水害は内水被害ばかりで、本川の氾濫による被害は一度もない。また、ダムの建設の根拠となっている洪水想定が過大で、実態調査にもとづかず建設省(当時)の基準を上回る数値を採用している。
 
O苫田ダム(岡山)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 千九百四十億円
 ●調査日 五月十五、十六日
 ●参加議員 林紀子、大門両参院議員
 ●問題点
 住民合意 水没戸数全国最大規模(四百七十七戸)で計画が発表されてからすでに四十四年。国は、いまも水没予定地で水田を営む住民や千二百人の土地共有者に同意のないまま、九九年六月にダムの本体工事に着工したうえ、その土地を強制収用しようとしている。
 国の事業だが、県が「県政百年の大計」として全面に出てダム建設推進の強引な旗振りに徹した。ダム阻止を主張する地元奥津町へは、町が求める補助事業や起債などほとんど認めず、また八五年に建設省が損失補償基準を提示すると、一段と、まさに札束で頬(ほお)をたたくようなやり方で反対する地権者を賛成へと変え、阻止同盟の弱体化に全力をあげた。 
 事業目的の破綻 当初は農業用水の確保だったが、食糧需給の緩和で農業用水需要が減退すると工業用水の必要性が強調され、それも破綻すると今度は洪水調整(治水目的)と生活用水の将来にわたっての確保が強調されている。しかし、その生活用水も三分の一が余っている。このように、主目的が猫の目のように変わっても、中止は一度も検討されていない。
 地質の特徴 ダムサイト地点は、断層破砕帯に囲まれ寄せ木細工のようになっており、基礎岩盤としていちじるしく劣化しているなど、「危険なダム」との批判がある。
 
P山鳥坂ダム(愛媛)
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 二千億円
 ●調査日 五月二十日
 ●参加議員 春名真章衆院議員、大門参院議員
 ●問題点 
 事業目的の破綻 八〇年代に右上がり水需要予測にもとづいて計画されたが、今日、人口は微増、市民一人あたりの水使用量は計画量とかけ離れており、計画の破綻があきらかになっている。
 また、建設省(当時)でさえも、「渇水対策ではない」(二〇〇〇年九月、申し入れへの回答)と言明していたにもかかわらず、松山市は、渇水時に水がくるかのような宣伝をしている。
 昨年九月の与党三党による公共事業見直しで中止対象にあげられたが、知事が「斡旋」に奔走し、「事業の継続」が強引に決定された。このさいにも、肱川水系の関係住民の声を十分に聞く努力をしていないことは問題である。
 治水上もダムは必要なく、急ぐべきは霞堤などの対策もふくめた対策、堤防の整備等である。
 環境破壊 クマタカの飛翔が確認されたが、その事実を県民が知ったのは調査から二年後であり、しかも国は、たった一回の営巣調査で「営巣なし」、「ダム工事に影響なし」と発表した。
 さらに地元紙の調べによると、昨年春、繁殖行動に直結する一つがいの巣づくり行動を国が確認しながら、これを県民に隠していたことがあきらなになっている。松山市議会では、こうした国の態度を批判する声があがっている。
 
Q川辺川ダム(熊本)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 三百五十億円
 ●調査日 四月十八、十九日
 ●参加議員 市田忠義書記局長・参院議員、小沢和秋衆院議員、岩佐恵美、大門両参院議員
 ●現況、問題点 事業の当初目的は水害対策で、いまは治水、利水、発電、調整機能などがあげられているが、いずれもその破綻は明確になっている。
 現在、ダム反対のたたかいは、新しい重大な局面を迎えている。球磨川漁協総代会は、国土交通省との漁業補償契約にかんする議案を否決し、二年連続で年度内着工をくい止める。また、八代海の三十七漁協が環境アセスメントで影響がないことが確認されるまで工事の中止を求めた等々の動きがある。
 一方、国土交通省は、漁業権の強制収用に踏み切る可能性があり、各漁協へのはげしい切り崩しをおこなっており、予断を許さない状況となっている。それだけに、今回の党国会議員団の調査は時宜を得たもので、ダム建設に反対する住民のたたかいに大きな励ましを与えた(調査の詳細は、「しんぶん赤旗」四月十九、二十日付参照)。
 今回地質学の専門家に同行していただいたが、国土交通省の資料やみずからの調査をふまえ、ダム建設予定地は地質学的に見て危険であることが強く指摘された。国土交通省は、ダム建設先にありきという姿勢でなく、地質学上の危険の指摘に謙虚に耳を傾けるべきである。事業費は当初の三百五十億円を大きく上回り、すでに二千六百五十億円に膨れあがっている。
 
R嘉瀬川ダム・城原川ダム(佐賀)
 
 ●事業主体 国直轄
 ●事業費 千百八十億円(嘉瀬川ダム)、千億円(城原川ダム)
 ●調査日 五月八日
 ●参加議員 小沢衆院議員
 ●現況、問題点
 〈嘉瀬川ダム〉
 事業目的の破綻 洪水調整、かんがい用水、水道用水、工業用水を目的にあげているが、ことごとく破綻している。佐賀市の水害は有明海の内水によるもので、河川の浚渫やポンプアップで対応できる。農業用水としては、四割以上の減反で水需要は伸びず、料金を負担してまで水はいらない。水道料金にはね返り金がかかるので水はいらない(以上、富士町での聞き取り)。
 まして、王子製紙への工業用水の需要にいたっては、国土交通省現地事務所でさえ「将来の事業拡張に備えたもの」と話している。
 財政負担 事業費は九〇年度を基準として見積もったもので、同現地事務所では「当初の千百八十億円はこえる」と話している。工事のすすみ具合から見て、二〜三倍に膨れあがる可能性がある。
 〈城原川ダム〉
 予備調査から三十年が経つが、住民の了解が得られず地元調査に入れず実施計画を策定する作業をしている状態。本体着工の見通しがたたず、五月に知事が、「将来をふくめ議論を」と関係市町村から意見を聴取し、八月に態度を決めると記者発表した。
 住民団体「神埼町仁比山地区ダム対策委員会」がこれまで調査に協力してきた態度を変えて、ダム建設反対決議書をあげた。今年三月、地元十一団体でつくる「佐賀県東部水道企業団」内で、同企業団加盟の自治体財政がきびしく約二百億円の負担は重いとして、「水はいらない」と首長らが声をあげている。
 
 S中部ダム(鳥取)
 
 ●事業主体 県
 ●事業費 二百億円  
 ●調査日 五月十二日
 ●参加議員 大門参院議員、佐藤洋党政策委員
 ●現況 洪水調節、河川環境の保全、水道用水の確保等を目的とした中部ダムを、昨年四月、県(知事)は中止を発表した。県が「県公共事業再評価委員会」に中部ダムの再検討を要請し、同委員会が「中止することが適当と判断します」と県に答申(昨年三月)し、県はそれを受けて中止したものである。
 同委員会の中止の理由は、「治水については、ダム建設と河道改修の事業費比較及びダムの洪水調節等による経済効果などについて総合的な検討を行った結果、治水の方式としてのダム建設は適当ではない」、「利水については、上水道需要の検討の結果、必ずしも緊急性を要するものではない。なお、ダム以外の水源開発により、将来の安定的な水道用水が確保できる可能性がある」等である。
 事業中止にともない、県が建設予定地の三朝町にたいし、住宅再建助成、地活性化資金等総額百六十八億円(内訳、国九十一億円、県五十八億円、町十九億円)の振興計画を提示した。行政がダム事業の中止を受けて公共基盤整備以外の地域再生策に公的資金を投入する計画は初めて。
 党調査団は、水没予定地であった三朝町の福田・下谷地区の現地を視察、関係者と懇談し要望を聞いた。

戻る▲