● ● ● ● 大門実紀史 Daimon Mikishi  ● ● ● ●

「グレーゾーン金利」廃止にむけて
サラ金被害なくすたたかい(「経済」2006年10月号)

 七月六日、与党の金融調査会が、高金利引き下げ、・グレーゾーン(灰色)金利」廃止の方向を打ち出した(・貸金業制度等の改革に関する基本的考え方・)。これは被害者の会や弁護士、司法書士の方々、そして心あるジャーナリストたちの長い間のたたかいの成果である。日本共産党も、長年にわたる「しんぶん赤旗」でのサラ金問題追及や国会議員団の奮闘で大いに貢献した。
 「グレーゾーン金利」廃止の具体的な内容は、今後、政府、与党の法改正作業と国会審議にゆだねられることになるが、特例措置など法案の「骨抜き」をめざすサラ金業界と関係議員たちの巻き返しも活発化しており、予断は許されない。本格的なたたかいは、まさにこれからである。本稿では、国会論戦の最前線でこの問題に取り組んできた立場から、現在の到達点と今後の課題について述べてみたい。

「構造改革」が生む生活苦からサラ金被害に
 多重債務者とは、本人の返済能力をこえて複数のサラ金業者などから借金をしている債務者のことをいう。
 貸金業界系の個人信用機関である「全情連(全国信用情報センター連合会)」の調査(今年五月二二日現在)によれば、サラ金の利用者数は一五八五万人、借入残高は全体で一四兆一九六五億円、一人当たりの平均残高は一〇一万五〇〇〇円となっている。
 うち四社以上のサラ金から借り入れている債務者は約三五七万人(平均残高約二〇七万円)、五社以上は約二二九万人(平均残高約二三〇万円)にのぼる。債務者のうち延滞者の占める比率を見ると、四社以上の借り入れに陥った段階から、三割をこえている。この調査からも、現在、多重債務者の数は二〇〇万人を大きくこえていることは間違いない。
 全国の消費生活センターに寄せられた多重債務に関する相談件数も、九五年度の約六四〇〇件から、〇四年度の約五万六五〇〇件へと八・八倍に急増している。
 図1は多重債務に陥った人たちの理由を時系列でまとめたものである(財団法人「日本クレジットカウンセリング協会」資料)。バブル期では「遊興・飲食・交際費」や「贅沢品の購入」などが多重債務の要因の上位であったが、ここ数年は「生活費不足・、・収入減少・失業・倒産」が上位を占めている。
 国民生活センターの調査(・多重債務の現状と対応に関する調査研究」〇六年三月二二日)でも、多重債務者がはじめて借り入れをしたときの年収は二〇〇万円未満が最も多く(二九・二%)、年収四〇〇万円未満が全体の七四%を占める。また、サラ金利用者、多重債務者とも若い層が増加している。大手サラ金会社で構成する消費者金融連絡会の『TAPALS白書』によれば、サラ金利用者の新規契約者のうち二〇歳代が四四%、三〇歳代が二四%となっている。リストラ、倒産、失業と非正規雇用の拡大、若年層の低賃金の固定化など、まさに小泉「構造改革」の結果うみだされた生活困窮者が、多重債務者となっているのである。
 また遊興やギャンブルなど、本人の弱点からサラ金に手をだす場合でも、そういう人間の負の側面を高金利で食い物にすることが許されるものではない。
 この間、全国各地でサラ金、クレジットの被害を告発する集会が開催されている。筆者も何ヵ所かに参加し、サラ金被害者たちの生々しい実態を聞いてきた。
 会社員のAさんは、両親と妻、子供二人の六人家族で、住宅ローン返済などで生活費が圧迫されるなか、アイフルから借り入れたお金が、返済しきれず、他のサラ金から借りて返済する自転車操業に陥った。やがて返済が滞るようになり、各サラ金から自宅だけでなく会社まで毎日電話がかかるという厳しい取り立てにあい、夜逃げや自殺も考えたという。
 ある女性は、病気で入退院を繰り返すなか、入院費と生活費を仕方なく武富士から借りた。月一五万円の収入のなか、生活をきりつめ六万円を返済していたが、再度の入院で返済不能に陥った。武富士の恫喝的な取立てに自殺を考えたが、子供に迷惑をかけたくないと思いとどまった。他にもサラ金から借りた借金がふくらみ自宅まで取られたが、実際には一〇〇〇万円以上の過払いだったという事例や、サラ金に追い立てられ夫婦で自殺未遂までした話もあった。
 ある集会では、元大手サラ金社員が、激しい回収ノルマを与えられ滞納者を自殺に追いこんでしまったこと、さらにその自殺した人にかけていた生命保険(消費者信用団体生命保険・後述)で借入金を精算したことなど、営業現場の異様な実態が報告された。彼はこういうサラ金のやり方に疑問を感じ、会社を辞めたとのことだった。
 全国で多重債務に苦しめられ、自殺や離婚、家庭崩壊に追い込まれた例は、枚挙にいとまがない。本人だけでなく、家族、親族にも悲惨な結果をもたらす。この多重債務をうみだす根底にあるのが、・グレーゾーン金利」の存在である。

「グレーゾーン金利」
 図2は、・グレーゾーン金利」を図解したものである。・グレーゾーン金利」とは、利息制限法の上限金利(年一五〜二〇%)と出資法の上限金利(年二九・二%)の間の金利のことをいう。つねにその正当性に疑問が突きつけられてきたため、灰色=「グレーゾーン」と呼ばれてきた。
 出資法の上限金利をこえた場合は、刑事罰が適用される。また、貸金業者が貸し付けをおこなう際、利息制限法を上回る利息は基本的に無効となる。ところが、借り手が自らの意志で利息を支払い、貸金業者が適切な契約書を結び、受領書を出している場合には、利息制限法をこえた利息も有効とみなす「みなし弁済」規定が貸金業規制法四三条に存在する。サラ金やクレジット会社は借り手の弱みや無知につけこんで、この「みなし弁済」規定を悪用し、ほぼ出資法の上限いっぱいで貸し付けてきた。この「グレーゾーン」の存在が、高利をはびこらせ、多重債務者をうむ要因となってきたのである。
 貸金業の金利には、利息制限法、出資法、貸金業規制法の三つの法律が絡み合っている。利息制限法は一九五四年に施行され、個人間の貸し借りなどの金利の上限を規定するもので、罰則規定はない。出資法は、同年、・ヤミ金融」取り締まりを目的に制定されたもので刑事罰がある。七〇年代後半のいわゆる「サラ金地獄」や二〇〇〇年の「商工ローン」事件で、刑罰対象となる上限金利が引き下げられてきた(二〇〇〇年五月末までは年四〇・〇〇四%以下、以降は現在の二九・二%以下)。貸金業規制法は「サラ金地獄」に社会的批判が強まるなか、一九八三年に議員立法で制定された。貸金業に登録制を導入して行政の監督下に置くこととしたが、同時に「グレーゾーン金利」での営業を容認するものであった(後述)。
 そもそも三〇%近い金利とはどういう結果をうむのか。前述の「全情連」の調査によれば、サラ金からの一人あたりの借入残高は、約一〇〇万円であり、三〇%近い金利を要求されたら、利息だけで年間約三〇万円も支払うことになる。そもそも生活費に余裕がないから借金したのに、これだけ高い利息を要求されたら、相当、生活をきりつめないと返済できない。いったん返済が滞ると、他のサラ金から借りて返さざるをえなくなり、やがて多重債務に陥ってしまう。借入先が四社以上になると、借金残高は二〇〇万円をこえる。三〇%近い金利だと年間約六〇万円・毎月・利息だけで五万円の支払いとなる。サラ金利用者の多数を占める年収四〇〇万円以下の層では、元利の返済が困難になるのは当然である。
 しかも現在はゼロ金利の時代である。銀行の普通預金利率が〇・〇〇一%程度のときに、その三万倍ちかい利息をとること自体、常軌を逸している。

「グレーゾーン金利」ができた理由
 そもそもなぜこんな「グレーゾーン」がつくられたのか。
 一九八三年五月、自民党と「新自連」(当時の新自由クラブと社民連が合同)の共同提案で「サラ金二法」(議員立法の「貸金業規制法」と「出資法」改正)が国会で可決成立、一一月から施行された。七〇年代後半から八〇年代前半にかけ、いわゆる「サラ金地獄」が社会問題化していた。サラ金の高金利引き下げと規制強化をのぞむ国民世論が高まったが、成立した「サラ金二法」は、到底それに応えるような内容ではなく、むしろサラ金の暴利を公認するものとなった。業者に登録制を導入し取立行為の内容などを規定したものの、肝心の貸金業の金利を利息制限法の適用除外にするという重大な「抜け道」を持ち込んだのである。
 じつは六〇年代に最高裁は利息制限法の上限金利をこえる利息の支払いは民事上無効であるという判決を二回にわたり下していた。さらにこれらの判決は、利息制限法をこえても出資法の上限金利(当時は一〇九・五%)をこえなければ刑事罰の対象にしないという法制上の不備も指摘していた。
 業界団体はこの判例に危惧をいだき、・任意に支払った超過利息は返還できない」という利息制限法の一条二項などを、・貸金業法」の登録業者に限って認めるように与党議員などに強くはたらきかけていた。つまり、民事上無効な利息制限法をこえた金利の返還を求められた場合に、それに応じなくてもよいという根拠が欲しかったのである。
 そして成立した貸金業規制法は、業界団体の要望どおり、登録業者になれば、借り手が任意に支払うなら利息制限法をこえた利息も有効とみなす「みなし弁済」規定を四三条に盛り込んだ。貸金業規制法(議員立法)の提案者の一人である自民党の大原一三議員は当時の国会で「いろいろの規制との『交換条件』で、『みなし弁済』規定を設けた」と、あけすけに答弁している(八二年八月一九日、参議院大蔵委員会)。貸金業者に一定の規制を飲ませるためのアメとして、・グレーゾーン金利」を法律で認知したのである。この法律が衆院で可決された直後、日本消費者金融協会(JCFA)の前中研会長も「こんな喜ばしいことはない。法の成立はわれわれ業界の悲願であった」と述べている(・東京新聞」八三年四月三〇日付)。
 以降、サラ金や商工ローンが堂々と高金利で貸付できるようになり、日本の貸金業は世界に類のない巨大産業に成長することになる。

本年一月の最高裁判決と与党、業界団体の動き
 それから二〇年以上たった今年一月一三日、最高裁第二小法廷はこの「みなし弁済」規定を事実上否定する判決を下した。アイフル系の商工ローン業者「シティズ」の「みなし弁済」を否定したものだが、判決は、・みなし弁済」について、利息制限法に定める上限金利をこえる利息を支払うことが事実上強制される場合には「任意に支払った」とは言えず、有効な利息の支払とみなすことはできないとし、任意性の要件についても厳格に解釈する立場を示した。最高裁はこれまでも「みなし弁済」規定について、規定自体の厳密な解釈を要求していたが(〇四年二月二〇日判決など)、利息制限法をこえる利息については容易に認めるべきではないという司法の判断をいっそう明確に示すものとなった。これらの判例によって、・みなし弁済」規定を貸金業者が法廷で主張することは、事実上困難となった。最高裁判決が出された背景には、長い間、訴訟をつうじサラ金被害を争ってきた弁護士、被害者の会などの粘り強い奮闘と、多重債務が社会問題化してきたことがある。
 最高裁判決をありのままに受け止めれば、政府と国会は法改正で「みなし弁済」規定をなくし、きっぱり「グレーゾーン金利」を廃止することが求められることになる。
 〇四年にいわゆる「ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法の一部改正)」が施行されたが、この附則において、貸金業制度のあり方や出資法の上限金利について施行後三年を目途として必要な見直しをおこなう旨が規定されており、そのため金融庁では〇五年三月より「貸金業制度等に関する懇談会」が開催され検討が始まっていた。しかし今年二月の段階では、金融庁の担当者は、筆者のヒアリングにたいし、出資法の上限金利を引き下げるにしても、業界の事情を考えると、利息制限法まで下げるのは難しいという見解を示していた。
 また国会の中では、むしろサラ金業界の意向を受けた与党議員や民主党議員の一部が、金利引き下げに抵抗するための動きを強めていた。
 その背景には、貸金業界による活発な政府と与党国会議員への働きかけがあった。貸金業団体は「全政連(全国貸金業政治連盟)」という政治団体をつくっている。この組織は元々、貸金業規制法が議員立法であることを想定し、国会議員への直接的な工作を目的としてつくられた政治連盟である。例えば、・全政連」第五回定時総会議案書(〇五年五月)は、・当連盟は政治団体として貸金業界と議員立法を担う国会議員とのパイプを築き、それを盤石なものとしていく役割を担っている」・創立以来の活動により、与党議員連盟を始め多くの議員が業界に理解を示し、要望を国政に展開させる環境は整った」と述べている。
 また、〇五年一月に、・全政連」の名誉会長である小倉利夫氏(全国貸金業協会連合会・会長)は「全政連では議員の方とパーティー券購入などのお付き合いをしているが、前回の法改正と同様に、議員連盟をつくってほしいと何人かの議員にお願いをしている」(・日本金融新聞」〇五年一月一日付)とのべているが、実際、その三ヵ月後の四月には、自民党の「金融サービス制度を検討する会」という議員連盟が再開されている。
 国会議員の重要な活動として議員立法一般は活発化させるべきだが、もしもその議員立法が、一部の業界団体から献金を受けたり、パーティー券を買ってもらっている議員が中心になり、その業界に有利な法律をつくるとすれば大問題である。国会議員が特定の団体から献金を受け、その団体のために政府に質問をしても、受託収賄罪に問われるケースがある。ましてや、自ら立法の提案者になるなど、受託収賄の疑いがもっと濃厚である。
 今年に入り前述の最高裁判決が出され、・全政連」とそれに関係する与党議員は危機感を強めた。与党だけでなく、野党も巻き込んだ業界を守るための議員連盟の結成が画策され、民主党への働きかけがおこなわれた。民主党のある参院議員が「事務局長」の役割を担い、・金融システム整備による経済活性化を推進する議員連盟」を各党に呼びかけた。呼びかけ文には、業界の健全育成がうたわれているだけで、高金利引き下げの一文字もない。呼びかけ人には、かねてから貸金業界との関係の深い自民党議員数人が名を連ねていた。彼らの主張は、金利引き下げどころか、こともあろうに利息制限法の上限金利(一五〜二〇%)を出資法の二九・二%に引き上げようというものであった。当然、わが党はこの「議員連盟」への参加を断った。

国会で高金利引き下げの流れをつくる
 国会の動きとは逆に、最高裁判決をうけ、高金利引き下げの世論は急速に高まりつつあった。サラ金被害者の会や日弁連を中心とした各団体の国会要請、署名活動が活発化し、全国各地で集会が開催されていた。地方議会からも高金利引き下げを求める意見書も次々と寄せられつつあった。
 国会においても、高金利引き下げの流れをつくらなければならない。筆者と、わが党の仁比聡平参院議員はそのために、実質四ヵ月の間に合計一一回の質問を連打した。重要課題とはいえ、法案審議以外のテーマでこれだけの質問回数は異例のことであり、内容において他党を圧倒し、論戦をリードしたといえる。以下、主要な論戦の到達点を簡潔に述べる。 
 三月一五日の参院予算委員会・テレビ放映(大門)では、表(95GG・・2F48)を示し、サラ金大手が大銀行と提携し、一%台の金利で調達した資金を二十数%で貸し付け、莫大な利益をあげている構図を明らかにした。これに対し、小泉首相は「高金利をむさぼっている業者に被害を受けないような対策を講じなければならない」と答弁、これが流れを決定づけた。
 さらに与謝野馨金融担当相は、・サラ金」という言葉を口にして、サラ金会社のテレビCMを「不愉快だ」とのべ、・(高金利が当たり前の)社会をつくってはいけない」と発言した。じつは、サラ金からの広告収入が大きいマスメディアは、サラ金から「サラ金」という言葉はイメージが悪いので使うなと言われ、・消費者金融」と表現していた。それを大臣がテレビカメラの前で二回も「サラ金」といい、しかも不快感を示したのである。この与謝野発言はテレビ、新聞でも一斉に取り上げられ、大きな波紋を呼んだ。
 ある全国紙の著名な論説委員がこの質問のあと筆者の部屋を訪れ、サラ金問題追及に腰が引けていたマスコミの実状を話してくれた。それまでのマスコミは「サラ金」という言葉どころか、サラ金の横暴や高金利を批判することも、広告収入を考えて控える傾向があったという。サラ金に批判的な現場の良心的な記者たちが悶々としていたところに、その日の大臣の不快感発言でサラ金問題が取り上げやすくなったとのことだった。事実、この質問のあと、いくつかの全国紙ではサラ金、高金利問題取材チームを立ち上げ、マスコミ全体の論調も、業界に配慮したものが影をひそめ高金利引き下げの方向を強く打ち出すようになった。このことが「グレーゾーン」廃止への大きな追い風となった。
 さらにこの質問のあと、サラ金各社もテレビCMの自粛を打ち出し、・朝日新聞」は四月にサラ金広告について「上限金利を超える金利の支払いは任意という説明をつけない限り掲載しない」という措置をとり、六月には「グレーゾーン金利での融資広告そのものの掲載を見合わせる」ことを決めた。サラ金から借りるきっかけの六割以上がテレビ・新聞の広告であることを考えると、与謝野発言はこの点でも多大な影響を与えた。
 またこの日の質問では、前述の「全政連」の活動と、業界よりの「超党派議員連盟」結成の動きについて、テレビの前で暴露と厳しい批判をおこなった。以来、この超党派の「議員連盟」結成の動きはぴたりと止まり、雲散霧消した。画策の中心人物であった業界と関係の深い自民党議員たちは、以降、与党内の「懇談会」だけに封じ込められることになる。一方、この質問を見た金融担当のある自民党議員から激励の言葉が筆者に寄せられ、自民党の中にも高金利引き下げは当然とする良識ある議員が存在し、金融庁の懇談会や与党内で努力していることもわかった。
 四月二〇日の参院法務委員会で仁比聡平参院議員は、・多重債務の原因は異常な高金利、過剰融資にある」と利息制限法までの金利引き下げを要求。金融庁の後藤田政務官は「消費者保護の観点から、(利息制限法を超える金利を認めなかった)最高裁の判断に重きをおくという流れだ」と答弁し、河野太郎法務副大臣も「上限金利について法務省は、金融庁が懇談会をふまえて出した結論に全面的に賛同していきたい」とこたえた。
 債務者に生命保険かけて回収に
 また、高金利問題だけでなくサラ金の悪あく辣らつな手口を暴露することも、サラ金を包囲するうえで重要だった。
 仁比議員は、三月一六日、三月二二日の参院法務委員会で二回にわたり「日掛け金融」問題を取り上げた。・日掛け金融」とは、毎日、少額を返済したい小規模業者むけの貸金業で、集金コストがかかるという理由で、特例的に出資法の上限を上回る五四・七五%という超高金利が認められている。ところが、サラ金からの借金で多重債務に陥った個人にも融資したり・主婦に貸し込んだり・暴力的な取り立てをおこなう悪質業者が多く、とくに九州・沖縄地方を中心に大きな被害をもたらしている。仁比議員は、悪質業者の無法行為や暴利の不当性を暴露し、厳しい処罰と特例金利の廃止を求めた。
 その後、金融庁の貸金業制度等に関する懇談会の「中間整理」(四月二一日)でも、与党の「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」(七月六日)でも、・日掛け金融」の特例については廃止の方向が打ち出されることになった。
 また筆者は、サラ金の「不動産担保ローン」や「消費者信用団体生命保険」を取り上げた。
 「不動産担保ローン」とは、サラ金のアイフルがおこなってきた手口で、複数のサラ金から借りている多重債務者の借金を、・おまとめローン」としてまとめ、その代わり債務者あるいは保証人の不動産を担保に取るというやり方である。月八万円の年金生活者に貸し込んで、自宅を取りあげた悪質な例もある。この「不動産担保ローン」が、アイフルの営業収入の二割近くを占めているのである。
 「消費者信用団体生命保険」とは、サラ金が債務者に生命保険をかけ、死亡した場合、保険金から借金を回収しようというものである。債務者が死亡しても借金を取りはぐれることもなく、厳しい取り立てで自殺に追い込んでも、借金を回収できる。実際にアイフルは、わずか六〇万円の借金を苦に自殺した女性の遺族にたいし、保険金を受け取るために死亡診断書の提出を再三にわたって求めたという。もはや、人間のやることではない。こういうやり方はアイフルだけでなく、他のサラ金でも日常的におこなわれている。そもそも住宅ローンなどとちがい、少額短期の融資のはずのサラ金がどうして「団体生命保険」に債務者を加入させる必要があるのか。筆者の疑問に与謝野大臣も「それ(サラ金)に生命保険が本当に必要かという疑問を持たれるのは当然」と答えた(五月一六日、参院財政金融委員会)。さらに、五月二二日の質問では、サラ金各社が、保険会社との契約で遺族からの「死亡診断書」の提出を省略し、自分で住民票を取って秘密裏に保険金を回収している事実を暴露し、金融庁も保険金支払い要件の厳格化などの是正指導に乗り出すことになった。
 この他、一一回の質問のすべてをここに紹介する余裕はないが、日本共産党の質問の連打が、国会の場で高金利引き下げの流れをつくる大きな役割を果たしたことは間違いない。

今後の課題
 七月六日に出された与党の「貸金業制度等の改革に関する基本的考え方」は、・グレーゾーン金利」の廃止を打ち出したものの、・少額・短期融資には上限をこえた金利で貸し付けられる特例措置」や、・出資法と利息制限法の上限金利を二〇%に一本化する案」なども検討課題にかかげた。これは前日五日の自民党小委員会において、業界と関係の深い議員たちが強く要求して盛り込ませたものである。雑誌『金融財政事情』(七月一七日号)によれば、この日の小委員会は「上限金利引下げに慎重な議員から怒号が飛び交う」なかでおこなわれたという。この期に及んでも、業界と癒着した自民党議員たちの抵抗は執拗である。
 しかし、・少額短期の特例」というが、元々、サラ金利用者の一社あたりの借り入れは少額短期であり、そんな「特例」を設けたら、・特例」でも何でもなくなり、・ぬけ道」どころか大穴の開いた「ザル法」になってしまう。また、出資法と現在の利息制限法の上限金利を二〇%に一本化すれば、むしろ金利の引き上げである。そもそも利息制限法の一五〜二〇%の金利も、ゼロ金利のときに高すぎることを忘れてはならない。
 また貸金業界や関係議員は、金利を引き下げると、貸し倒れリスクの高い借り手(低所得者など)にサラ金が貸せなくなり「ヤミ金融」がはびこると主張しているが、これも論外である。本来、・ヤミ金融」は犯罪であり根絶されるべきものであって、それを前提にした議論は成り立たない。彼らのいう「リスク論」も誤りである。現状は、高金利で貸すから返済できなくなり、いっそう貸し倒れリスクが高まるという悪循環に陥っている。金利を引き下げれば返済、完済できる人が増加し、貸し倒れリスクも低まり、適切な金利で貸せるようになる。刹那的な高金利と多重債務者に依存してきた不健全な業界のあり方そのものを真剣に見直すべきときである。一方、生活資金が不足し緊急融資が必要な個人には、国や自治体の政策金融で応えるべきである。
 いずれにせよ、業界や関係議員たちの主張は、苦しまぎれの屁理屈に過ぎない。論で打ち破ることも重要だが、もともと「グレーゾーン」が、業界と与党のなれあい、癒着のなかでつくられた歴史を思い起こすと、関係議員の巻き返しの動きを包囲し、現実的に封じ込めることが「グレーゾーン」廃止に不可欠だと考える。
 現在、高金利の引き下げなどを求める地方議会の意見書は、三月時点で一六都府県だったのが現在、三八都道府県に、市区町村も二六九から八四九議会に急速に広がっている(七月二七日現在)。また被害者の会、日弁連、労働団体が共同で春から始めた「高金利引き下げを求める百万人署名」も、短期のあいだに二七万四〇〇〇筆が集められている(同日現在)。法案提出が一〇月開催予定の臨時国会か来年の通常国会になるか、現時点では決まっていない。どちらにしても、この秋のたたかいが正念場である。今回こそサラ金被害を根絶するために、世論と運動をいっそう強めていく必要がある。日本共産党国会議員団は、引き続き、国会論戦の先頭に立って奮闘する決意である。
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