● ● ● ● 大門実紀史 Daimon Mikishi  ● ● ● ●

対米従属の「構造改革」と対決を(「労働運動」2004年1月号)
 財界は、日本の社会を自分たちの都合のいいようにつくりかえようとしている。
 その戦略は、雇用・労働、社会保障、税制、金融から都市政策、産業政策、教育、外交・安保、さらに政界のあり方にまで及ぶ全般的かつ急進的なものである。まさに財界の「日本つくりかえ計画」と呼ぶにふさわしい。小泉「構造改革」も、財界の「日本つくりかえ計画」を実現するためのものにすぎない。そして、いまや自民党も民主党も「構造改革」という同じレールの上で競争しているだけである。
 しかも、この財界の「日本つくりかえ計画」(=「構造改革」路線)は、アメリカにそのルーツをもち、アメリカの模倣を主な内容とし、アメリカとの従属的な関係のもとですすめられている。

表舞台に登場してきた財界
 戦後、日本の財界、大企業は対米輸出に依存して成長した。やがてそれは貿易摩擦を引き起こし、アメリカから激しい円高攻勢をしかけられる。
 しかし、日本の大企業は、人減らしと賃金抑制による徹底したコスト削減で国際競争力を回復し、バブル期には世界のトップ企業にのし上がっていった。ただ、それは長続きせず、バブル崩壊を境に凋落が始まる。
 一九九二年には、世界企業の売上高ランキング上位一〇〇社に、日本の製造業・大企業は二〇社も入っていたが、二〇〇三年には九社に半減している(『フォーチュン』誌)。日本の国際競争力も、九二年には世界一を誇ったが、九六年には三位、九九年には一〇位に転落、二〇〇三年でも一一位で低迷している(国際経営開発研究所「世界競争力報告書」、人口二〇〇〇万人以上の国・地域での比較)。ただし、国際競争力を高めることが、国民の暮らしの向上に結びつくとは限らない。ポール・グルーグマン(プリンストン大学教授)は、論文「競争力という名の危険な妄想」(『フォーリン・アフェアーズ』誌九四年五月号)のなかで、「世界市場で成功をおさめることと、国民の生活水準を引き上げることの間に関連はない」と批判している。むしろ日本の大企業は、国際競争力を維持、回復するためにリストラや賃金の抑制をすすめ、国民の暮らしを犠牲にしてきたといえる。
 バブル崩壊後の長期低迷は財界の危機感を募らせた。当初は、大型公共事業による需要拡大策に期待していた財界も、次第に供給サイドの改革、すなわち「構造改革」論に傾斜していくようになる。
 九八年五月の経団連・第六〇回総会では、今井敬氏が新会長に就任し、総会決議で「経済活性化のために構造改革を実現」(@規制緩和による高コスト構造の是正、A直間比率の見直し、累進税率の緩和および法人実効税率の引き下げ、B不良債権の早期処理、C社会資本の「重点的」整備、D公的部門の民営化など)がかかげられた。当時は、橋本内閣が九兆円の負担増を国民に押しつけたうえ、九七年七月の「アジア通貨危機」の発生、北海道拓殖銀行や山一證券などの破・綻、金融不安の広がりなどで、家計消費も企業の投資も急速に低下、景気は厳しさを増していた。
 九八年七月に発足した小渕内閣は公共事業のばらまきを中心とした大型「景気対策」を連発するが、財界の反応は冷ややかだった。今井経団連会長は「財政の現状からみて、需要喚起策は限界に近づきつつある」「景気の本格回復にはサプライ・サイドの改革が欠かせない」と述べ、「構造改革」路線への政策転換を強く求めた(九九年、第六一回総会)。
 二〇〇一年四月には、「構造改革」をかかげ小泉内閣が発足する。五月の経団連総会の決議では、小泉新内閣が、「聖域なき構造改革」への取り組みを表明したことを高く評価し、今井会長も「今こそ、日本経済の構造改革の断行を」と題するスピーチを行っている。その直後に行われた参院選の結果にたいするコメントでも、「今後、聖域なき構造改革の推進に全力を傾注してほしい」(今井経団連会長)、「有権者が小泉内閣の路線を支持した」(奥田碩・日経連会長)、「挙党体制で構造改革にあたることを希望する」(小林陽太郎・経済同友会代表幹事)と、財界こぞって小泉「構造改革」への強い支持を表明している。
 二〇〇二年五月に、経団連と日経連が合同し、日本経団連が発足した。これはたんに財界の政策団体と労務対策の団体が一つになったということではない。今後は、財界が日本社会全般にわたって口を出し、自分たちの思うようにつくりかえようという意志のあらわれである。奥田会長の就任挨拶でも「このような時代におきましては、経済団体も新たなかたちで、より幅広く、力強い活動が求められております……経済や産業に関する課題と、人や社会に関する課題とを別々に考えることができなくなってまいりました。こうした考えに立ちまして、新団体の発足というはこびになった次第でございます」と述べている。
 財界の日本をつくりかえようという意志は、必然的に政治にたいするアプローチの強化へと向かう。日本経団連発足の総会決議では「政治と経済界の新たな関係を確立する」と抽象的な表現にとどめられているが、それはやがて「奥田ビジョン」(二〇〇三年一月「活力と魅力溢れる日本をめざして」)における「経済界の考えに共鳴し行動する政治家への支援」宣言、「政策本位の政治に向けた企業・団体寄付の促進について」(同年五月)における企業献金の「再開・促進宣言」や、「『優先政策事項』『企業の政治寄付の意義』について」(同年九月)による政党の「評価」などに具体化されていくことになる。

財界の「日本つくりかえ計画」−−
「構造改革」路線とは

 二〇〇一年一〇月には「経団連・規制改革要望」(「経済社会の構造改革と行政改革の断行に向けて」)が打ち出されている。その内容は「雇用・労働」「年金」「医療・介護・福祉」「教育」「流通」「土地・住宅」「廃棄物・環境保全」「危険物・防災・保安」「情報・通信」「金融・保険・証券」「運輸」「エネルギー」「通商」「農業」「その他」の一五分野にも及ぶ規制緩和の要求である。また、二〇〇一年四月には内閣府の「総合規制改革会議」が発足、七月に「重点六分野に関する中間取りまとめ」を公表している。これは小泉内閣の「改革先行プログラム」や「改革工程表」における規制改革の前倒し実施方針の基礎となった。その後も「規制改革要望」は、毎年出されている。小泉内閣はこの財界の要求にそって「構造改革」をすすめてきたといえる。
 この「規制改革要望」は、日本社会のあり方全般に及ぶ膨大なものである。ここでは、国民の暮らしに直接、関係する「雇用・労働」「社会保障」「税制」の三分野にかぎって、財界のねらいだけを簡潔に記しておく。

<雇用・労働>
 この点ではすでに九五年に日経連が「新時代の『日本的経営』」を発表し、財界の二一世紀の雇用戦略をまとまった形であらわしている。「グローバル化のなかでの国際競争に日本の企業が生き抜いていくためには、高コスト構造を変えていかなくてはならない」とし、終身雇用制、年功賃金制の廃止、雇用の流動化などをかかげた。
 要するに、失業率を一定の高水準に保ち、雇用不安をかきたてたうえで、労働者の大半を不安定、低賃金、長時間労働の仕事でもガマンさせるようにするための賃金構造と働き方の「構造改革」である。富士通の秋草社長(当時)は「経営と雇用の責任は両立しない。失業率五%はひとつの通過点にすぎない。もっとあがって初めて雇用の流動性を高める起爆剤になる。米国のレイオフ(一時解雇)も高い失業率が定着して、出てきた」(「朝日」二〇〇一年一〇月三日付)と露骨に言い放っている。
 しかし、この「新時代の『日本的経営』」はアメリカの模倣にすぎない。アメリカでは一九八〇年代後半から九〇年代にかけて、「雇用の流動化」政策がとられた。特に九〇年後半は好況期であったにもかかわらず、激しい解雇(レイオフ含む)と非正規雇用が増加し、雇用状況が不安定化した。この結果、九五年にはパートを含む労働者の賃金は一九五〇年代後半の水準まで下がっている。
 日本の財界も、各企業が徹底したリストラを行うとともに、政府に働きかけ、派遣労働や有期雇用契約の拡大、裁量労働制の導入などを実現させてきた。さらに今年度も、労働者派遣の対象業務の拡大と派遣期間制限の見直し、「企画業務型裁量労働制」や有期労働契約にかかわる規制のいっそうの緩和、産業別最低賃金の廃止、勤労者財産形成制度の見直しなどを求めている。財界がめざしているのは、労働者を必要なときに必要な分(数、時間)だけ、しかもできるだけ低賃金で使える社会である。

<社会保障>
 財界の社会保障制度にたいする要求は、第一に、企業の社会保障負担を限りなく軽減せよ、ということである。
 日本経団連は「社会保険料は、企業活動にとって法人税以上に重い足枷である」(二〇〇三年五月「『近い将来の税制改革』についての意見」)、「保険料の引上げは、企業の活力を奪い、経済活性化を阻害し、さらには企業の雇用維持努力に悪影響を生じさせるため、安易に行うべきではない」(同年九月「今次年金制度改革についての意見」)と述べ、「平成一六年度税制改正に関する提言」(同年九月)では「社会保険料の上昇に対応するため、利益を出している企業でさえ、雇用の削減を通じて、総額での社会保障費の圧縮に努めざるを得ない状況にある。今後、社会保険料の引上げが続けば、雇用リストラの動きがますます進行し、経済全体に深刻な影響が出ることが予想される」などと、リストラを社会保険料のせいにしたうえ、脅しまでかけている。
 財界の第二の要求は、社会保障分野への民間企業の参入の促進である。二〇〇一年度の「規制改革要望」では、「医療分野を通じた情報の共有化や多様な経営主体の参入促進等を通じて、医療サービスの質的向上と、医療保険コストの合理化を実現」「営利法人による保険医療機関の経営を特区以外にも広げていくこと」「営利法人による保険医療機関の経営」などが盛り込まれている。「医療制度の抜本改革に関する基本的考え方と『厚生労働省試案』に関する見解」(二〇〇三年一月)でも、「公的医療保険制度の守備範囲を見直す必要がある」「民間事業者等へのアウトソーシングによる効率化」などがあげられている。

<税制>
 財界がめざすのは、累進税率の緩和と企業の税負担のかぎりない軽減、そして消費税の増税である。
 二〇〇三年五月の「近い将来の税制改革についての意見」では、所得税について「国民一人ひとりが広く薄く税負担を分かち合うという基本理念に立ち、所得課税について課税ベースを適正化するとともに、累進税率構造の緩和を進めることによって、活力を引き出すことが喫緊の課題」と述べている。法人企業の税負担については、「企業負担が相対的に高い経済は、国内産業の空洞化と海外資本の逃避を招き、必要な雇用を維持することすら極めて困難となる」とし、法人の実効税率のさらなる引き下げや地方法人課税の軽減、欠損金の取り扱い、減価償却制度の抜本的見直しなどを求めている。
 その一方で消費税の増税を求めている。日本の社会保障の財源にあてようというのである。消費税を社会保障の財源にあてれば企業負担をなくすことができる。加えて、消費税は、輸出品には消費税がかけられないため、輸出大企業にたいして、輸出品製造のための仕入れにかかった消費税相当分を還付する仕組みになっており、輸出大企業には莫大な「輸出戻し税」が懐に入ることになる。財界にとって「理想」の税金である。
 「医療制度の抜本改革に関する基本的考え方と『厚生労働省試案』に関する見解」では、老人保健拠出金制度の廃止と現役世代の保険制度から分離した六五歳以上を対象とする「シニア医療制度」の創設、その公費分の財源として消費税の充当を求めている。「今次年金制度改革についての意見」でも、「基礎年金国庫負担の二分の一への引き上げを消費税の活用でおこなうべき」「基礎年金は、現行の保険料を中心とする方式から消費税を活用した間接税方式へ移行すべき」としている。
 税率についても「近い将来の税制改革についての意見」では、「当面する二〇〇四年における基礎年金の公費負担の増加、高齢者医療、介護の財源として、消費税率を、第一段階として三%程度は引き上げるべ」、さらに「二〇〇七年度までには一〇%とすべきである」「二〇二五年度までの消費税率の増加を一八%程度までに抑えることが必要である」などと述べている。
 要するに財界の「日本つくりかえ計画」とは、企業コストを限りなく削減し、大企業がより儲けられる環境をつくることである。いいかえれば、国民、中小企業がみずからを犠牲にして大企業の利益のために奉仕する社会をつくることである。

アメリカの模倣と従属の「構造改革」路線
 そもそも、「構造改革」は、そのルーツをアメリカにもち、対米従属のもとですすめられている。ここでは、簡単に経緯だけふれておきたい。

<「構造改革」のルーツはアメリカにあり>
 日本の「構造改革」路線は、もともと八〇年代の中曽根内閣から始まり、取り組みの強弱の差はあれ、歴代内閣にひきつがれてきた。中曽根内閣は、累進税率の緩和や民営化路線など、アメリカのレーガノミックス(レーガン大統領の経済政策)の真似をしたことで有名である。
 レーガノミックスとは、@累進税率の緩和(企業や高額所得者にたいする大幅な減税)、A規制緩和、B「小さな政府」の実現(行革と民営化)、などから構成されていた。これは、それまでアメリカ政府がとってきたケインズ経済学的な需要拡大政策や福祉政策からの大きな方向転換を意味した。
 このレーガノミックスは、「サプライ・サイド(供給側)経済学」とも呼ばれ、「構造改革」論の基調をなすものである。需要を重視するケインズ経済学の立場とは対照的に、サプライ・サイド(企業などモノを生産し供給する側)を一面的に重視することに特徴がある。
 たとえば、社会保障や税制における重い企業負担は、企業の投資を抑え経済成長の足を引っぱるとし、負担の軽減こそ経済活性化のカギであると主張する。「小さな政府」論も、根底にあるのは、企業の社会保障負担の軽減と規制緩和である。所得の再分配機能までも否定し、一九世紀の自由放任、弱肉強食の資本主義への逆戻りを志向するものでしかない。
 この「サプライ・サイド経済学」は、レーガン政権以降、注目されるようになり、大企業や金持ちへの減税や、福祉切り捨てなどを「正当化」する理論として日本にも伝来した。
 しかし、日本の政府が「構造改革」路線に傾斜していったのは、たんにレーガンの真似をしてきたというだけではない。
 八〇年代後半ごろから、アメリカ主導の「グローバル化」(筆者はそれをアメリカン・グローバリズムと呼んでいる)の大きな波が日本にも押し寄せてきたことも大きな要因である。
 アメリカン・グローバリズムの本質は、「構造改革」を流布しながら、世界のあらゆる市場へアメリカ企業の進出をはかることにある。
 アメリカの世界各国にたいする経済戦略は、「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれるもので、世界に広げるべき政策として、@財政の規律、A公共投資を利益率の高い分野に向けること、B税率を低くし課税対象を広げること、C為替レートを競争させること、D金利の自由化、E貿易の自由化、F直接投資の自由化、G民営化の促進、H規制の撤廃、I財産権の確保をあげている。まさに「構造改革」の世界への輸出戦略である。
 そしてそれは、やがて日本にも押し寄せてくる。

<ブッシュ政権の「対日経済指針」>
 アメリカの「外交問題評議会」が二〇〇〇年一二月にまとめた提言「新政権(ブッシュ政権)のための対日経済指針」では、日本市場へのアメリカ企業の参入をすすめるためには、日本の「構造改革」勢力を支援することが重要であると強調したうえで、各分野で今後なにをどのように日本に要求すべきかについて述べている。
 主な内容としてあげられているのは、日本の不良債権処理加速と不良債権ビジネスへのアメリカ企業の参入、日本への直接投資(企業の合併・買収など)促進のための「規制緩和」、アメリカ企業が日本で活動しやすくするための環境整備(会計、監査基準、税制、商法、金融取引制度などの「改正」)などである。
 二〇〇一年一月に発足したブッシュ政権はこの「対日経済指針」どおりに、日本に働きかける。そして六月末に出された小泉内閣の「骨太方針」には、「対日経済指針」で提言された「規制緩和」や不良債権の「早期最終処理」などの「構造改革」メニューが盛り込まれた。
 また六月の日米首脳会談では、新たな日米経済関係の枠組みとして「成長のための日米経済パートナーシップ」を発表した。
 「日米経済パートナーシップ」の具体的なテーマには、@「規制改革及び競争政策イニシアティブ」(電気通信、情報技術、エネルギー及び医療機器・医薬品、法制度改革、商法改正)、A「財務金融対話」(マクロ、金融問題、不良債権問題で情報交換や意見交換を行う)、B「投資イニシアティブ」(外国直接投資のための環境改善、企業ガバナンス、破産、労働流動性、並びに土地市場の流動性促進など)などがあげられている。「対日指針」が日本に要求すべきとした項目そのものである。
 アメリカの日本への具体的な要望は、二〇〇一年、〇二年に連続して出された「規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本政府への米国政府の年次改革要望書」に網羅されている(その項目は、通信、情報技術〈IT〉、医療、エネルギー、金融、流通、司法、政府慣行、競争政策など一〇項目に及ぶ)。これらアメリカの要望は、小泉内閣の「改革工程表」(二〇〇一年九月)や、二〇〇三年三月に閣議決定した「規制改革推進三ヵ年計画(改定)」に、日本の財界の「規制改革」要望とともに反映されている。
 さらに二〇〇二年六月に出された「日米投資イニシアティブ報告書」(経済産業省)では、今後の具体的な取り組みとして、「会社法改正」(アメリカ型コーポレートガバナンス・システムを選択する余地の拡大、ストックオプション制度の完全自由化)、「会計制度の見直し」(連結会計の導入等・)、「土地流動化」(REIT〈不動産投資信託〉の導入等)、「雇用の流動化」「弁護士・会計士等専門サービスについての制度改革」などをあげている。
 二〇〇二年一一月に開催された「ワーキンググループ」では、アメリカ側から提起された商法等関連事項に関する指摘事項(合併手続きの柔軟化、「産業再生法」改正や「商法」改正によって三角合併及び現金合併などの合併手続きを可能とすること)、企業統治の改善(株主への委任状書類送付期間の拡大など)について意見交換が行われている。
 二〇〇二年五月に成立した商法「改正」では、大企業が社外取締役を起用することを条件に監査役の廃止を認めた。アメリカの要求であったコーポレートガバナンス(企業統治)の「アメリカ化」である。また、株式交換を国外企業にも可能にするなどの「商法改正」は、二〇〇五年度に向け作業が行われる予定になっている(法務省)。また、さらに早い段階からリストラや不採算部門の切り売りをできるようにする会社更生法「改正」も〇二年の臨時国会で与党と民主党などの賛成で成立した。同じく不良債権処理のスピード化をねらった産業再生法の「改正」も〇二年の通常国会で成立した。

<いまや「構造改革」は日米財界の共同作戦>
 これら一連の法「改正」は、リストラ促進や雇用の流動化、破綻大企業の早期「再生」を求める日本の財界の要求と、アメリカ企業が日本で活動しやすいよう環境整備を求めるアメリカの要求をあわせて実現したものである。
 「対日経済指針」では「アメリカの政策決定者と財界指導者は、日本の政治、経済の指導者たちとの間でより協力的でフレンドリーな関係を育み……日本の財界指導者からも日本政府に圧力をかけさせる」との戦術を明言していた。
 「日米経済パートナーシップ」で設置された「官民会議」(日米両国の官庁・民間部門が参加)は、その戦術を具体化したものである。
 さらに、日米の財界人が定期的に諸課題を協議する「日米財界人会議」も、同じ役割を果たしてきた。二〇〇三年一一月の第四〇回会議(ワシントン)では、「規制改革推進」共同声明を発表し、アメリカの対日直接投資の促進のために、国境を越えた企業の合併・買収を容易にする商法や税制の改正、投資誘致に関する地方自治体への権限や財源の委譲など規制改革の一段の推進を日本政府に求めている。また、この会議で奥田日本経団連会長が講演し「日本の改革加速のため、政治に対し大いにモノを申すとともに、改革に真しに取り組む政党には、資金面も含め協力していく」と強調、政治献金をテコに、さらに医療や福祉、教育、農業などの分野を中心とした規制緩和を迫る姿勢を示している。

おわりに
 自民党も民主党も、このアメリカの模倣と従属の「構造改革」路線のうえで競い合っている。
 経済学者のジョセフ・E・スティグリッツは近著『人間が幸福になる経済とはなにか』のなかで、アメリカの二大政党の存在意義にふれ、「われわれ・・民主党と共和党・・・・がどちらも中流階級のためのものなら、どちらも規制に束縛されない市場経済のためのものなら、左派と右派を区別するもの、民主党と共和党を区別するものはいったい何なのか? 民主党は何を代表しているのか? これは政治の・・・・少なくともわれわれの知っていた政治、経済にかかわる政治・・・・終わりではないのか?」と述べている。
 日本では中流階級のためどころか、どちらも財界のためのものになりさがりつつある。
 いま求められているのは、財界の「日本つくりかえ計画」=「構造改革」路線と正面から対決し、国民本位の経済運営への転換をはかることである。それこそが本物の二大対決であり、本物の改革である。
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