● ● ● ● 大門実紀史 Daimon Mikishi  ● ● ● ●

国民負担増で景気はどうなるか−経済論戦の焦点(「前衛」2005年5月号)
 大企業は、政府の支援も受けながらリストラと賃金抑制、非正規雇用の拡大など「構造調整」をすすめ、輸出の伸びも加わって大幅に利益を回復してきた。とくにこの間、IT関連や製造業の大企業は、七〇年代の高度成長期を上まわる生産の伸びを示している。小泉内閣は「こういう企業の利益が家計に波及するから、定率減税の縮小・廃止など国民負担増をかけても景気は持ちこたえる」とし、二〇〇五年度政府予算案を押し通した。
 本当に企業利益は家計に波及するのか。
 小泉内閣の経済運営のかじ取りを握る竹中平蔵・経済財政担当大臣とは、景気と経済をめぐって幾度も論戦をかわしてきた。竹中大臣の景気論とは、「構造調整」によって企業が利益をあげるようになれば、投資がふえ、それが新しい需要をつくりだし、モノが売れて景気がよくなるというものである。この理論については、すでに二〇〇一年末の段階できびしく批判した(本誌二〇〇二年二月号・拙稿「竹中構造改革の三つの欠陥」参照)。ひと言でいえば、不況のもとで企業が賃金抑制による利益の向上だけに走れば、ますます需要を冷え込ます悪循環におちいり、景気の自律的回復がかえって遠のいてしまうということである。
 小泉内閣が発足して四年が経った。もはや理論でなく、実践とその結果によって、竹中大臣の景気論は検証されなければならない。本稿ではこの間の国会論戦をふまえ、この点を検証する。

企業利益と賃金の「逆相関」

 企業利益が家計に波及するかどうかは、企業が利益を雇用と賃金の増加にまわすかどうかにかかっている。
 二月三日、衆院予算委員会の総括質問で、日本共産党の志位委員長は、現状は企業の利益が伸びても家計の所得(雇用者報酬)が減りつづける「逆相関」になっていることを示し、小泉首相の「企業の利益がだんだん家計にもまわってくる」(衆院本会議答弁)という判断に根拠がないことを指摘した。志位委員長の追及に、とうとう小泉首相は「所得にもいい影響を与えるような状況になってもらいたいなあ…」と、自らの判断がただの希望的観測にすぎないことを露呈した。
 ちなみに小泉首相は、今回の衆院予算委員会審議で「これだけ利益があがっているのだから、企業も給与の引き上げに努力して欲しいものだ」と、企業にたいする期待の言葉を繰り返しのべている(二月三日、民主党の中塚一宏議員への答弁など)。政府あげて企業の賃金抑制を支援してきた責任を棚に上げた、傍観者的発言である。

なぜ「逆相関」になってきたのか
 企業利益と雇用者報酬は、なぜ「逆相関」になってきたのか。
 国民経済計算における雇用者報酬とは、基本的に、一人当たりの賃金に雇用者数を掛けたものである。たんに雇用者数が増えても、一人当たり賃金が大幅に低下すれば、全体として雇用者報酬は増えない。
 図1に、九〇年から二〇〇四年までの企業の利益率、賃金、雇用者数と雇用形態(正社員、非正社員)の推移を示した。この図は、昨年三月十六日の参院予算委員会で、小泉首相、竹中大臣に質問した際に使ったパネルに、九〇年〜九六年の数字と最新の数字を加えたものである。九七年以降の企業利益と賃金の「逆相関」がくっきり表れている。
 企業の利益率が九八年に一時的に下がっているのは、九七年の九兆円の負担増で消費が急速に落ち込み、売上が減少した結果である。二〇〇〇年、〇一年あたりの利益率の低下は、大規模なリストラで退職金などの一時的費用が増えたためである。いずれにせよ、企業利益は一貫して上昇傾向にある。
 それにくらべ、賃金は九七年を境に下降の一途をたどっている。この八年間で月額、約四万円の減少、年間にすると約四七万円の減少である。
 昨年の参院予算委員会では、二〇〇三年時点の数字で議論したが、その際、竹中大臣は「企業利益が改善するなかで、賃金が下げ止まり、家計や消費にむかう重要な局面にある」と答えている。一年前も今と同じことを言っていたのである。
 ところが実際には、その後も賃金は下がり続けた。この点を今年三月十日の参院予算委員会でただすと、竹中大臣は「企業部門から家計部門に至るプロセスが従来に比べて非常に遅いことを注意深く見ている」と他人事のような答弁をした。彼の予測が当たらなかったことを責めたわけではない。当たらない予測にもとづいて国民負担増を決めたことが問題なのである。
 なぜ九七年あたりから企業利益と賃金の「逆相関」が始まったのだろうか。
 この背景には、九五年に当時の日経連が発表した「新時代の『日本的経営』」にもとづく、財界の雇用政策の転換がある。「新時代の『日本的経営』」では「グローバル化のなかで国際競争に日本の企業が生き抜いていくためには、高コスト構造を変えていかなくてはならない」とし、終身雇用制と年功賃金制の廃止、「雇用の流動化」などをかかげた。まさに働き方の「構造改革」である。
 なお、日本における「雇用の流動化」は米国の強い要求でもあった。九三年より日米包括経済協議にもとづく作業部会が開催され、九五年四月には、派遣労働や有期雇用をふくむ「規制緩和推進計画」が決定されている。
 さらに「新時代の『日本的経営』」そのものが米国の模倣にすぎない。米国では、一九八〇年代後半から九〇年代にかけて「雇用の流動化」政策がとられた。はげしいリストラ・解雇(レイオフふくむ)がおこなわれ、非正規雇用も急増した。この結果、九五年にはパートをふくむ労働者全体の賃金が、一九五〇年代後半の水準まで下がっている。
 日本でも、九七年頃より大企業は徹底したリストラに着手するとともに、政府にはたらきかけ、派遣労働や有期雇用の拡大、裁量労働制の導入などを実現させてきた。このなかで急増してきたのが、派遣社員やパートなどの非正社員である。
 図1の雇用者数(棒グラフ)を見ると、正社員は九〇年から九七年までに三四〇万人増加したが、逆に九七年から二〇〇四年の間には四〇二万人も減少している。一方、非正社員は九〇年から九七年までは二八二万人の増加だったが、九七年から二〇〇四年までの間に四一二万人も増加している。九〇年と二〇〇四年を比較すると、非正社員の数は一・八倍の増加である。
 また厚生労働省の「労働者派遣事業平成十五年度事業報告」によれば、二〇〇三年の派遣労働者数は約二三六万人(前年度比一〇・九%増)に達しており、九七年の八五・五万人の二・七倍になっている。
 非正社員の増加は、全体として一人当たり賃金を押し下げる。一カ月あたり給与で見ると、正社員は約四一万円、派遣社員は約三一万円、パートは約九万円である(厚生労働省「毎月勤労統計」及び「労働者派遣事業実態調査報告」)。ただし派遣社員は通年で就労できるわけではなく、実際の年収は正社員の半分程度が圧倒的多数である。正社員と非正社員を、フルタイム労働とパートタイム労働という区分で分ければ、パートタイム労働者の賃金はフルタイム労働者の約半分となっている(日本労働研究機構「調査研究報告二〇〇三」)。

請負労働者の賃金はきわめて低く、労働条件は劣悪
 とくにこの間、利益を大幅に伸ばしている自動車や電機メーカーなどの製造現場で働く正社員と請負労働者の賃金格差はもっとすさまじい。請負労働者とは、メーカーのあるラインの仕事を完成させるため、請負会社から製造現場に送りこまれる労働者のことである。
 図2は、徳島県のトヨタの関連工場で実際に働いている正社員と請負労働者の賃金の比較である。正社員は、社会保険料の負担もふくめて時給に換算すると三千四百円、請負労働者の方は、関連工場から請負会社に支払われるのは時給千七百円であるが、そのうち六百円を請負会社がマージンとしてピンはねし、実際に労働者が受け取るのは千百円である。正社員の三分の一以下の賃金で働かされている。
 現在、日本には約一万社の請負会社があり、請負労働者の数は百万人以上といわれている。二〇代、三〇代の青年が全体の七割をしめ、夜勤二交代・一二時間労働など労働条件も劣悪で、仕事がなければいつでも首を切られる。
 また危険作業ほど請負労働者が従事させられるケースが多い。三月十七日の参院予算委員会でもとりあげたが、昨年九月二十八日に、日立製作所の構内で請負労働者二名が火災事故にあい、一人が全身八五%の火傷で死亡、一人が四五%火傷の重傷を負った。二人は直接、日立の監督下におかれていた可能性が高く、違法派遣の疑いもある。現在、大企業の製造現場で労災事故にあう半分以上は、派遣社員や請負労働者である。大企業の空前の利益は、こういう青年たちの劣悪な労働条件と生命の犠牲のうえに成り立っているのである。

非正社員の急増
 これら非正社員の急増が、企業が利益を上げても賃金が下がり続ける「逆相関」の最大の原因になっている。この点では「日本銀行・調査季報」(二〇〇五年一月)も、「一人当たり賃金がなかなか増加しないのは、非正規雇用の賃金水準が正社員よりも低く、その非正規雇用のウエイトが高まり続けているために、一人当たり平均でみた賃金が押し下げられていることによる面が大きい」と指摘している。
 現在、賃金が若干、改善しているは、製造業の大企業の正社員だけである。「毎月勤労統計二〇〇四年結果確報」の賃金指数をみると、全産業平均の現金給与総額は依然、前年比マイナスが続いているが、製造業(規模三〇人以上)は、二〇〇三年からプラスに転じている。また総務省「家計調査」では、企業規模一〜二九人の企業に勤める世帯主の実収入は減少し続けているが、五〇〇人以上の企業に勤める世帯主の実収入は二〇〇四年にプラスに転じている。しかしこれも、米国や中国などへの輸出の動向によって今後どうなるかわからず、現時点では製造業の大企業と他産業、中小企業の所得格差の拡大を示すだけで、全体の雇用者報酬の伸びにつながるものとは言えない。
 雇用者報酬だけでなく、九七年の九兆円の負担増を出発点に、可処分所得(収入から税金や社会保険料等を引いたもの)も減少している。図3は、可処分所得の内訳の推移を示したものである。可処分所得は基本的に貯蓄か消費にまわされる。九七年から二〇〇三年の七年間で見ると、可処分所得は十五兆円も減っている。しかし消費は七兆円の減少で持ちこたえ、そのかわり貯蓄にまわしたお金が九兆円も減少している。これは「ラチェット効果」(人々は収入が低下しても、生活水準を一度に落とせない)のあらわれである。また日本の家計貯蓄率はこの十年間で一四%台から七%台に半減している。つまり、多くの国民は貯金へまわすお金を減らす、あるいは貯金を取りくずしながら、必死にいまの生活水準を維持しようとしているのである。こんなときに今後、二年度にわたり七兆円もの大負担増をかぶせたら、いったい家計はどうなってしまうのか。

労働分配率をどうみるか

 竹中大臣は、二月三日、志位委員長の質問の際に、日本の労働分配率について言及した。労働分配率とは、生産によって生み出された付加価値(利益)が、人件費にどれだけ分配されたかを示すものである。竹中大臣は、日本の労働分配率が過去、三分の二程度で推移していたが、九〇年代に入り、四分の三ぐらいまで上昇したこと、企業がいま「構造調整」でそれを低下させつつあるとしたうえで、・労働分配率の修正はまだ半分くらい。(今後も)調整に時間をかけていかなければならない」とのべた。人件費は、さらに引き下げる必要があるという認識である。
 図4は、労働分配率の推移を示したものである。たしかに労働分配率は九〇年代に上昇しているが、これは労働者の収入が増えたことを示すものではない。九〇年代のバブル崩壊後の長期不況で企業利益が減少し、相対的に人件費の割合が上昇したのである。
 なお、非製造業、とくにサービス業などは、労働集約型であるため、サービス業の従事者が増加すれば人件費の割合が高くなり、全体の労働分配率が高まるという見解もあるが、この間、日本のサービス産業の伸びは鈍化しており、それが主要な原因とは言えない。
 小泉内閣が発足して間もない頃、鳴り物入りで「五三〇万人雇用創出プラン」が打ち出された。五年間で、サービス産業で新たに五三〇万人分の雇用を創出しようというものである。この「プラン」については当時、「絵に描いた餅である」と竹中大臣を追及したことがある。最近の内閣府の集計では、この四年間でやっと二八五万人の増加である。五三〇万人の目標を達成するには、あと一年で二五〇万人分もの雇用を増やさなければならない。すでに「絵に描いた餅」であることは明らかである。通常、サービス産業の仕事は、経済が現代化し、家計消費が伸びれば増加する傾向をもつが、九七年以降の消費不況のために伸びが鈍化しているのである。
 また、竹中大臣の言うように、労働分配率の「修正」は本当に「道なかば」なのだろうか。
 図5は、三月十五日、参院予算委員会公聴会に公述人として出席した三菱証券チーフエコノミストの水野和夫氏が示した資料である。労働分配率の推移を、大企業・製造業と中小企業・非製造業にわけてとらえている。最近の大企業・製造業の労働分配率は六五・九%で、すでに七五年―八九年平均の六九・八%を下まわっている。すでに十分、引き下げられているのである。
 労働分配率が高いのは、中小企業・非製造業である。中小企業は、もともと人件費比率が高く、国内の不況や大企業の下請けたたきで、低収益状態におかれている。国内需要に依存する非製造業の労働分配率の高さも、消費不況による低収益が主な原因と見るべきであろう。
 こういう労働分配率の実態を無視し、各企業がさらなる人件費抑制だけに走れば、ますます家計を冷え込ませ→企業の売り上げが低下→利益の減少→相対的人件費の上昇=労働分配率の上昇→さらなる人件費抑制という悪循環におちいることになる。竹中大臣の言葉は、大企業のさらなる賃金抑制を正当化するとともに、他の企業をいっそう賃金引き下げの悪循環におとしいれるものでしかない。

根拠のない「これからよくなる」論

 政府の「構造改革と経済財政の中期展望・二〇〇四年度改定」(今年一月二十一日発表)では、雇用者報酬を〇四年度で前年比プラス〇・二%、〇五年度でプラス〇・五%の伸びと見込んでいる。
 しかし、雇用者報酬がこれから上向くと判断するだけの根拠がいまあるのだろうか。
 竹中大臣は、雇用者報酬の伸びを見込んだ理由として具体的に二点あげている。
 第一は、・正社員の減少が下げ止まってきた」ことである。「これから雇用者報酬がよくなるという根拠はなにか」という私の質問にたいし、大臣は「正規従業員の比率は低下してきたが、底を打ちつつある」(三月十日、参院予算委員会)ことをあげた。
 総務省「労働力調査」によれば、たしかに昨年一〇―一二月平均の正社員数は、前年比で十八万人増えているが、パートや派遣社員などの非正社員はその三倍の五十七万人も増えている。二〇〇四年全体でみると、図1のとおり、前年より非正社員が六〇万人増え、正社員は三四万人減少している。そもそも注目すべきは、正社員の減少が下げ止まったかどうかではなく、それ以上に非正社員化が急速に進行しているという事実である。 
 第二は、・直近の雇用者報酬が前年比でプラスになった」という点である。竹中大臣が私の質問の際にあげたのは、昨年一〇―一二月期の雇用者報酬が前年比で名目プラス〇・五%、実質プラス〇・三%となったことである。
 しかし、内閣府の「四半期別GDP時系列表」を見ると、四半期で一時的に前年比プラスになったことは過去に何度もある。例えば、二〇〇〇年一〇―一二月期は、名目プラス〇・・・九%、実質プラス一・一%の増加で、大臣のあげた昨年の数字よりよかったが、その後は下降の一途をたどった。また二〇〇三年一―三月期も、前年比名目プラス一・二%、実質プラス一・五%にもなったが、やはりその後は下降していった。
 しかも昨年の一〇―一二月期は、十一月分の特別給与が、前年の公務員給与支給との関係などで、前年比五割以上の増加という通常ありえない数字をふくんでいる。実際の十二月のボーナスは、前年比マイナス〇・五%である(厚生労働省「毎月勤労統計調査・)。また暦年でみれば、結局二〇〇四年のほうが、二〇〇三年より、前年比の伸び率が名目、実質とも悪くなっている(〇三年…名目マイナス〇・五、実質プラス〇・四%、〇四年…名目マイナス〇・八、実質マイナス〇・二%)。どうしてこれらの数字をもって、今後、雇用者報酬が上向くなどと言い切れるのか。
 竹中大臣は、つねに短期的な前年比の数字などを針小棒大にとりあげて当座をつくろう傾向があるが、登山でいえば下山途中のアップダウンのようなもので、雇用者報酬はずっと下降の一途をたどってきたのである。
 さらに雇用者報酬の内訳にも注目する必要がある。じつは雇用者報酬というのは、事業主の社会保険料負担も雇用者の収入とみなされている。したがって、事業主の社会保険料負担が上がれば、雇用者報酬が見かけのうえで引き上げられることになる。
 図6は、九七年と二〇〇三年の雇用者報酬の内訳を比較したものである。
 雇用者報酬は、二八〇兆円から二六六兆円に、一四兆円減少している。しかし、同時期に事業主の社会保険料負担は、三八兆円から四二兆円に、四兆円増加している。つまり雇用者報酬は、見かけのうえでは十四兆円しか減少していないが、実際の賃金報酬、手取りの部分は、二四二兆円から二二四兆円に、十八兆円も下がっているのである。今後も社会保険料の負担増は予定されている。実際の賃金が上がらないのに、雇用者報酬が押し上げられるという傾向は続くであろう。これが雇用者報酬の実際の姿である。
 これらの事実をつきつけ、竹中大臣に「賃金がこれからよくなるという根拠はないではないか」と迫ったところ、大臣はまともに反論できず、「全体としてのやはりバランスを見なければいけない。社会保障給付も年金の受給も増えているから、それもふまえた家計の力というものを総合的に評価する必要がある」と、賃金とは関係のない話にすりかえる始末であった。
 いまの段階で雇用者報酬全体が上向くと判断するだけの根拠は何もない。かりに今後、少々の改善があったとしても、小泉内閣が踏み出した大負担増路線が全部帳消しにしたうえ、家計と景気に深刻な打撃を与えることはまちがいないであろう。

竹中大臣の「負担と経済成長」の関係論

 竹中大臣は、私が九七年の九兆円の国民負担増と景気の関係について質問した際、次のようにのべた。「九七年度の国民負担の増加分は八、九兆円の規模でGDP(国内総生産)比にすると一・七%。日本が持っている本来の成長力というのはいま二%弱。二%弱ぐらいで成長する経済に一・七%の国民負担をかけるのは、潜在成長力をゼロにしてしまう非常に大きな負担だった」「そういう点で言うと、私個人は単年度でGDP比〇・五%程度の負担ならやむをえないけれども、それを大きく上回るようなことはやめようではないかということをずっと主張してきた」(二月一日、参院予算委員会)。
 しかし「〇・五%以内の負担なら家計が耐えられるという理由はなにか」とただすと、大臣は具体的な根拠は何も示せなかった。だいたい、GDP比一・七%規模の国民負担を一度にかけるのはよくないが、毎年〇・五%以内なら家計は耐えられるというのは、大きな負担増も段階的にかければショックが少ないというだけの話で、家計の立場からすれば、いっぺんに不幸になるか、だんだん不幸になるかの違いだけである。
 そもそもGDPの〇・五%(約二・五兆円)という数字は、家計が耐えられるかどうかで算出された数字ではない。政府の財政再建目標にかかわる数字である。竹中大臣は「財政をきちっと十年ぐらいかけて再建していこうとすれば、GDP比で〇・五%ずつぐらい歳出を縮減していかなければ、二〇一〇年代に基礎的財政収支を回復できない」とのべている(同予算委員会)。
 いずれにせよ、この負担増と経済成長の関係をはかるものさしは、消費税増税を考えるうえで看過できない。消費税率の二ケタ増税は一〇兆円をこえる負担増になり、GDPの二%に匹敵する。竹中大臣の理屈でいくと、一度に二ケタでなく、段階的な消費税の引き上げを想定していることになるのではないか。経済財政諮問会議の専門調査会が打ち出した「日本二十一世紀ビジョン」(四月十九日発表)の経済・財政試算の中長期展望で、二〇一〇年代初頭までを消費税率五%プラスアルファ、二〇一三年度以降には一〇%プラスアルファのケースを想定しているのも、このことと無関係ではない。

 二月三日の論戦で志位委員長は、内閣府の「日本経済二〇〇四・持続的成長の可能性とリスク」(昨年十二月発表)が「今後、消費が持続的に回復していくためには、所得の回復が鍵である」とのべていることを引用し、この「診断」にたいし、所得を大幅に奪う増税路線への踏み出しは、百八十度違った「処方せん」であり、「風邪と診断しておいて布団をはぐようなものだ」と批判した。
 そもそも、定率減税は「サラリーマン等の家計を支援し景気回復に資するという願いが込められていた」(二月一日、参院予算委員会・大門への谷垣大臣答弁)といいながら、それをいま縮小・廃止するというのも支離滅裂である。
 国民負担増を盛り込んだ二〇〇五年度予算は成立したが、この間の日本共産党の国会論戦は、小泉内閣が景気と国民負担増についてまともな認識と見通しをいっさい持っていないことを明らかにした。
 質問を聞いていたある与党議員は「いまの景気を考えれば、消費税の増税はむずかしいかな」ともらした。
 たとえ将来の財源として消費税増税が必要と考える人でも、景気が悪化すれば元も子もないというのは共通認識のはずである。消費税増税阻止のためには、税制や財政のあり方にたいする立場をこえて、・景気を悪化させるな」の一点での共同を広げることが重要である。そういう点で、今回の経済論戦は、これからのたたかいに大いに生きるものといえるだろう。
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