● ● ● ● 大門実紀史 Daimon Mikishi  ● ● ● ●

"官から民へ"に群がる現代の政商たち(「前衛」2006年9月号)
 小泉内閣は「民間にできることは民間に」と繰り返し叫び、"官から民へ"・・すなわち官業の民間企業への開放が、行政の効率化に貢献し、経済を活性化させるものだと主張してきた。しかし"官から民へ"とは、そんなきれいごとではない。裏を返せば、ただの一部の企業のもうけ話にすぎない。実際、財界や関係企業は、官業の民間開放で五十兆円のビジネスチャンスが生まれるとし、虎こ視し眈たん々たんと受注の機会を狙っている。
 しかも彼らは、ただじっと仕事を待っているわけではない。政府の審議会や有識者会議などに自ら参加し、自分たちの企業に仕事が出るような政策決定に深く関与している。
従来のように、賄わい賂ろや献金によって仕事を受注するのではなく、川上でビジネスチャンスの大きな流れをつくり、川下で自分の関係企業に仕事を受注させる・・限りなく利害の抵触に近いが、これが現代の政商たちのやり方である。
 ここではその典型である、オリックス・グループ、セコム・グループ、不動産開発会社(森ビル、三井不動産、三菱地所)の三者を取り上げる。

オリックス・グループ

 「規制改革・民間開放推進会議」とオリックス・グループオリックス・グループ会長の宮内義彦氏が議長をつとめる「規制改革・民間開放推進会議」が、どのように政府の政策決定に関与してきたかについては、本誌二月号の拙稿「アメリカの経済介入はどのように進められてきたか」を参照していただきたい。またこの間、宮内氏の村上ファンドへの関与が露見したことを発端に、すでに「しんぶん赤旗」をはじめ各新聞、雑誌で、オリックス・グループと規制緩和の関係が繁に取り上げられてきた。
 ここでは"官から民へ"や規制緩和の流れのなかで、オリックス・グループがどのように事業展開してきたかを概括的にふれることにする。
 一九六四年、日商岩井(現・双日)などの商社と、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)などの銀行の共同出資で、オリエント・リース株式会社(現・オリックス株式会社)が設立された。設立時の社員は十三人で、宮内義彦氏もそのメンバーの一人であった。リース業で成功を収めたオリックスは・その後・他の事業分野へも積極的に進出を果たしていく。
 宮内会長は、九六年に「行政改革委員会・規制緩和小委員会」座長に就任、九八年には「行政改革推進本部・規制改革委員会」委員長、〇一年に「総合規制改革会議」議長、そして〇四年からは、「規制改革・民間開放推進会議」議長をつとめている。この「規制改革・民間開放推進会議」がまとめた「規制改革・民間開放推進三か年計画」(毎年改定される)が閣議決定され、各分野の規制緩和と官業の民間開放がすすめられてきた。

オリックス・グループの事業展開
 これら一連の規制緩和推進のための「会議」が打ち出した政策とオリックス・グループの事業展開との関係を図1に示した。
 「サービサー(債権回収会社)法」は、九九年二月に施行され、オリックス・グループは「オリックス債権回収」を同年四月に設立している。さらに〇一年の改正で、それまでサービサーが管理・回収できる債権が、金融機関等の貸付債権、リース・クレジット債権、金融機関などの系列貸金業者の持つ一定の債権などに限定されていたが、倒産処理にかかる金銭債権等も取り扱えるようになった。この改正は、宮内氏が委員長だった「規制改革委員会」が二〇〇〇年一二月に要望していたものである。さらに、〇五年七月の省令改正では、信用保証協会保証付き債権もサービサーに譲渡できるよう規制緩和がはかられた。これも〇五年三月に宮内氏が座長としてまとめた「規制改革・民間開放推進三か年計画」に盛り込まれていたものである。「債権回収」での規制緩和は、そのまま宮内氏のオリックス・グループの事業拡大につながってきた。
 「規制改革・民間開放推進会議」が、この数年、最も強く求めてきたのが、PFI(公共施設の整備に民間資金、技術力、経営能力を活用する手法)の促進と市場化テストの導入である。PFI法は九九年に施行され、〇二年に改正された。〇六年四月現在で二百三十一事業が対象(国の事業三十、都道府県五十六、政令都市二十七、市区町村八十八、特殊法人・公益法人二十八、事業組合六)となっている。うちオリックスの応募、入札参加は十九件にのぼり、神奈川県の「海洋総合文化ゾーン体験学習施設等特定事業・、埼玉県の「彩の国資源循環工場整備事業・、国土交通省・千代田区九段第三合同庁舎・千代田区役所本庁舎整備等事業などを落札している。また、オリックスの本業であるリースや融資事業(従来のプロジェクトファイナンス)では、神奈川県湘南海岸公園海洋総合文化ゾーン、越谷市広域斎場などのPFI事業に参加している。
 市場化テスト法は〇六年に成立(〇五年よりモデル事業)したばかりであるが、この点でオリックスがもくろんでいるのは、国民年金保険料徴収事務への参入と言われている。金融関係者は「(年金保険料徴収は)債券回収ビジネスで実績のあるオリックスの得意分野で、社会保険料のクレジットカード決裁が始まればまさに我田引水」と述べている(『THEMIS』〇六年二月号)。また宮内氏自身、年金未納者への差し押さえなど公権力の行使まで民間に任せることについて、「公権力についての委任契約を交わすことにより問題が起きない」と主張している(日本評価学会講演・〇五年五月)」
 オリックス・グループは環境ビジネスにも積極的である。宮内氏は「環境問題は市場化によってクリアできるのだろうか」との問いに対し、「市場の中で環境問題を内部化することで、企業活動による環境整備は可能である」(日本評価学会講演)と述べ、傘下のオリックス資源回収株式会社がリサイクル事業での入札参加をすすめている。
 医療の民間企業への開放にもオリックス・グループは食指を伸ばしてきた。本誌二月号の拙稿では、オリックスが「構造改革・特区」で開設された株式会社診療所「バイオマスター」に出資していることや、混合診療の導入問題で宮内氏が「(導入に慎重な)国会決議など無視しろ」という暴言を吐いた事実を明らかにした。さらに、高知医療センターが、オリックスなど十一社で設立され、医療関連サービス業務、施設維持管理業務、IT整備運営業務などをおこなっている。このセンターは県立病院と市立病院を合同させPFI方式で設立されたもので、病院の建物の建設、医療機器のリースなど、医療の本体以外のすべてをオリックスなど民間企業が仕切っている。
 村上ファンドとオリックスの関係は、すでに「しんぶん赤旗」(六月八日付など)でくわしく報道されている。要するに村上ファンドの「生みの親」が、オリックスであり、宮内義彦氏であった。
 村上ファンドの活動は、〇一年の商法改正や、九八年以来の投資顧問業法等の改正で大きく発展することになる。村上ファンドは投資顧問業者であるが、投資顧問業者は、相対契約をした顧客に対し忠実に投資顧問業をおこなう必要があり、複数の契約を一括して運用してはならないことになっていた(投資顧問業法施行則二十九条第一項第五号)。この点は二〇〇〇年の施行規則の改正で、複数の契約が一括して合同運用できるようになり、巨額の資金を効率的に運用することが可能になった。この改正も九九年十二月の宮内氏が主導した「規制改革についての第二次見解」(行政改革推進本部・規制改革委員会)のなかで要望されていたものである。
 このほか、不動産投資信託(日本版REIT)が二〇〇〇年十一月から規制緩和で解禁になったが、オリックスは九九年に不動産ファイナンス本部を新設し、日本地所を買収したうえ、〇一年には投資法人(ファンド)を立ち上げている。これまた宮内氏がまとめた前年の「規制改革計画」に盛り込まれていたものである。
 オリックス株式会社が自らの会長が議長をしている「規制改革・民間開放推進会議」などに提出した規制緩和要望は四八件にのぼり、民間企業では最も多い。うちすでに一七件が採用されている。利害の抵触とは「ある職務に就いている者が、その立場や権限を利用することで、個人の利得を得ることが可能となる状態」のことをいう。宮内氏が政府の諸会議をリードし、自分のオリックス・グループに利益を得させてきたことは客観的事実であり、利害の抵触そのものである。

セコム・グループ

 利害の抵触は、オリックスだけに限らない。小泉内閣の目玉である・行政改革・におけるセコム・グループも同様である。

「行政減量・効率化有識者会議」とセコム・グループ
 セコム・グループは、一九六二年(昭和三七年)に、飯田亮氏(現・最高顧問)と戸田寿一氏(同じく現・最高顧問)の二人が、日本で最初の警備保障会社である日本警備保障株式会社(現・セコム株式会社)を創立したことに始まる。その後、セキュリティ分野だけでなく、在宅医療サービスなどの医療分野、損害保険、不動産開発、刑務所事業などに進出。グループの総売上高は五千六百七十三億円、社員総数が約三万九千人の大企業である。
 最高顧問である飯田亮氏も宮内義彦氏同様、一貫して政府の規制緩和や官業の民間開放の政策決定に関わってきた人物である。「総合規制改革会議」の議長代理(〇一年五月〜〇二年三月。議長は宮内義彦オリックス会長)をつとめ、その後は「特殊法人等改革推進本部参与会議」および「独立法人に関する有識者会議」の座長を歴任。さらに今年一月からは、「独立法人に関する有識者会議」が名称変更された「行政減量・効率化有識者会議」の座長もつとめている。
 「行政減量・効率化有識者会議」は、行政改革推進本部長(小泉首相)決定により設けられた諮問会議で、行政機関の業務の構造的な見直しを提言することを任務とし、「行革」推進の中核をになう会議である。

セコム・グループの事業展開

 セコム・グループも、飯田氏が議長代理や座長をつとめる諸会議が打ち出す規制緩和と官業の民間開放の政策の流れのなかで、事業を拡大してきた。
 政府の「電子政府構想(中央政府の業務処理や行政手続きをすべて電子化する)」をすすめるため、〇一年四月に電子署名法が施行。セコム・グループはセコム・トラストネットを設立し、各省庁の電子認証システムの受注に入札参加。セコム山陰は松江市につづき、〇五年四月に鳥取市にもデータセンターを開設し、地域の企業や行政情報を管理、運営する「セキュリティー・サービス・プロバイダー」の機能を果たそうとしている。
 またセコム株式会社は、学校警備の民間委託にも力を入れ、「セコム・スクールセキュリティ」を発売、現在、全国の小・中・高校などで約千二百校と契約している。
 医療、保険分野にも急速に進出している。セコム医療システム株式会社は、薬剤提供事業、訪問看護、介護事業、デイサービス、健康食品、電子カルテ事業、ホスピネット事業、福祉機器事業に進出。提携病院(介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどを含む)は、十一グループに及ぶ。また、〇五年九月には富国生命とセコム損害保険が「自由診療保険メディコムプラス」の生保・損保一体型新商品(自由診療による高額な入院治療費も補償するがん保険)を発売。公的医療の民間開放を見込んだ事業展開をすすめている。
 飯田氏は、保険業法の自由化を受け、九八年に損害保険へ参入したとき(現セコム損害保険)「(警備の)契約先には一般の損保より三〇%割安の保険を提供できるようになりました。セキュリティと損保のシナジー効果です」(『財界にっぽん』二〇〇一年一月)とのべている。医療と医療保険、警備と損害保険のように、どちらにころんでも儲かるスキームを構築するのが、セコムの戦略である。
 さらに現在、セコム・グループが力を入れているのが、刑務所事業である。すでに〇五年四月に第一号刑務所PFI事業(山口県美祢社会復帰促進センター整備・運営事業)を五百十七億円で受注し、二〇二六年までの二〇年間にわたり、施設の建設・維持管理、施設の運営や職業訓練、警備、医療・清掃業務、購買事業や食堂運営まで受託することになる。第二号刑務所PFI事業(島根あさひ社会復帰促進センター整備・運営事業。予算上限千二十六億円)にも入札参加している。さらに既存の刑務所の業務の市場化テスト・モデル事業にも積極的に参加をしている。
 飯田氏が座長をつとめる「行政減量・効率化有識者会議」では、「国の行政機関の定員の純減方策について」(最終取りまとめ・今年五月三十日)で、重点八事項の一つとして、刑務所のPFI化を促進、刑務所業務の民間委託推進を提言した。その仕事を飯田氏のセコムが入札参加、受注していくわけである。・お手盛り」以外の何物でもない。
 五月二十五日の参院行政改革特別委員会で、小泉首相にたいし、飯田氏が「行政減量・効率化有識者会議」の座長を務め、自らの企業に仕事が出るような方針を打ち出しているのは、利害の抵触にあたると追及したが、首相は「(受注手続きが)不正でない限り、問題がない」と倫理感のかけらもない答弁をした。この「会議」が直接、セコムに発注でもしたら、利害の抵触どころか、汚職事件そのものである。

不動産開発会社

 "官から民へ"とは事業の民間企業への明け渡しだけではない。政府の「行革」の目玉の一つである、国有地の売却でも同じ構図になっている。

「国家公務員宿舎移転・跡地利用有識者会議」と業界関係者
 「国家公務員宿舎の移転・跡地利用に関する有識者会議」は、昨年十二月、東京二十三区内の国家公務員宿舎の移転や跡地の売却を促進し、民間での土地活用計画を検討するために財務省内にもうけられた。六月に報告をまとめた後は、検討対象を国有財産全体に広げ、「国有財産活用委員会」(仮称)として継続する予定である。
 座長は伊藤滋早稲田大学特命教授で、森ビルと大変関係の深い人物である。伊藤氏は、森ビル株式会社の再開発(六本木ヒルズ等)に関わり、現在、森ビルが運営するアカデミーヒルズ会長、森記念財団会長、アーク都市塾名誉塾長、日本都市計画家協会会長(森トラストグループ)を兼ね、森ビルのプロジェクトを支える「アドバイザリーメンバー」でもある。さらに伊藤氏は小泉首相とも以前から親交があり、三月に伊藤氏が「有識者会議」を公務員宿舎だけでなく国有財産全般の検討をおこなうことを自ら小泉首相に提案、首相もこれを了承している。
 小泉首相自身も森ビルと関係が深い。〇二年四月におこなわれた六本木ヒルズの上棟記念パーティーに、小泉首相が挨あい拶さつし、「森ビルの再開発事業が全国の都市再生の模範となるよう祈る」と、最大限の賛辞を述べている。その後も小泉首相は六本木ヒルズ・森タワー五十一階内にある会員制高級クラブで中川国対委員長ら党国対メンバー、福田官房長官(当時)、さらには自民党若手議員と懇談(「日経」〇三年五月二十日付、及び「読売」同六月五日付)。今年二月にも、表参道ヒルズのオープニングセレモニーに出席、「成功者をねたんだり、才能がある人の足を引っ張ることは厳に慎まないと、社会全体に活気がなくなる」と力説している(「読売」二月三日付)。
 さらにこの「有識者会議」の委員には、三井不動産の不動産投資サービス本部長、三菱地所のビル事業本部長など不動産開発会社の現場関係者が直接参加している。森ビル、三井不動産、三菱地所はすでに国有地の売却を受け、開発で大儲けしている企業である。ちなみに三菱地所には、元国土庁の土地局長が天下りして取締役専務になっており、国有地ビジネスになみなみならぬ意欲を示している。これら国有地売却の利害関係者が政府の会議に直接、参加し、今後の国有地の売却、活用の方向を決めているのである。
 しかもこの「有識者会議」の運営や議論の中身も異常である。
 第一回(今年一月十九日)では、座長の伊藤氏が突然、慶應義塾大学の非常勤講師をしている自分の教え子を「私のそばで知恵袋にしたいから、委員に加えてほしい」と提案、参加者の「異議なし」承認を受けている。座長が自分の教え子を秘書役にしたいからと急に委員に追加させるなど、今までの政府の審議会などでは聞いたことがない。公的な会議の私物化である。
 さらに伊藤氏は「…毎年千戸造っちゃうとして…PFIでやれば、三井不動産は三年で千五百戸、三菱地所は三年で千五百戸とか、住友で千戸とかとやれば、四千戸ぐらいすぐできちゃうんですよ。実行力があるわけね。…ここで議論しなきゃいけないのは、省庁で固まってまだ住む気かよと、国家公務員は、普通のマンションに全部入れちゃっていいじゃないか…そういう不動産市場を、株式会社を作って、国家公務員御専門で、三井何とかの一五階にどうぞお入りくださいとかね」といいたい放題である。政府の会議というより、まるで不動産会社の談合である。この伊藤氏を増長させているのは、親交の深い小泉首相に他ならない。なお、五月二十五日の参院行革特別委員会で、私がこのことを国会質問で取り上げて以降、会議録は公開されなくなった。
 現在、国有地、とりわけ一等地にある公務員宿舎跡地は、不動産開発業者にとって、喉のどから手が出るほど欲しい優良物件となっている。ちなみに三菱地所が大株主である藤和不動産は、今年四月一日付で公的機関からの土地情報に対応するため住宅開発部を設置し、「首都圏の用地仕入れ体制の強化を図る」としている(同社ニュース・リリース)。
 小泉首相も公務員宿舎の売却をあおってきた。小泉内閣のメールマガジン(三月九日)では、「国有財産の売却もどんどん進めます。東京都心にある公務員宿舎や国有地など、これから民間に売却したり有効に活用していく方針で、すでに、具体案をつくるように支持しました」と述べている。

大手町開発
 国有地がいかに一部の大企業、団体のもうけの場になっているか。ひとつの事例として、東京千代田区・大手町の合同庁舎跡地の開発を紹介する。
 この国有地は、〇五年三月に国からいったん都市再生機構に随意契約によって千三百億円で売却されたあと、十一月に関係企業でつくる「有限会社大手町開発」へ譲渡された。民間企業が随意契約で売却を受けることは困難であるため、都市再生機構が「トンネル」の役割を果たしたのである。
 この跡地開発の企画立案をすすめてきたのが、「大手町まちづくり株式会社」であり、その社長には日本経団連の事務総長。取締役には三菱地所社長が就任している。
 開発の内容は、経団連会館や日経ビルやJAビルなどが、合同庁舎跡地を利用して次つぎに建て替えをおこない、周辺開発をすすめ大もうけしようというものである(図2)。
 この事業は、政府の都市再生本部(小泉総理本部長)が、〇三年一月、第五次都市再生プロジェクトとして、「都市再生・緊急整備地域」に指定。そのことにより、従来の容積率七〇〇%が、二・三倍の一五九〇%にも引き上げられた。このことによって千三百億円で購入した土地が、二・三倍の約三千億円の価値をうむことになる。現在の土地と合同庁舎跡地を等価交換する経団連などは莫大な利益を手に入れることができる。
 随意契約で国有地を安く手に入れ、さらに容積率を緩和してもらい、倍の床面積を手に入れ、それを他に売る・・手品のような仕掛けで、関係企業が大もうけをするしくみである。
 この事業を手がけるのは三菱地所であり、当地の容積率の緩和も、元三菱地所の会長が求めて、実現した(〇一年六月、日本ビルヂング協会連合会会長・高木丈太郎=三菱地所会長・当時が都市再生本部に要望書を提出)。
 この事業は、政府から特定団体、企業への国有地を使った利益供与の疑いさえ濃厚である。
 さらにこの開発には、伊藤滋氏も、経団連、三菱地所などが事業促進のために立ち上げた「大手町まちづくりビジョン委員会」に委員長として関わってきた。
 こういう利害関係者が、国有地の売却、跡地利用をすすめる政府の会議に参加すること自体、明らかに利害の抵触に該当する。この点についても、五月二十五日の参院行政改革特別委員会で、小泉首相にたいし質問したが、「どの点が利害に抵触しているのかわかりません」ととぼける始末であった。
 この質問はマスコミの関心を集め、新聞各社から私への取材が相次いだ。当初、国有地や公務員宿舎の売却は「財政再建の一助」と好意的にみていたマスコミも、「公務員宿舎の売却総額約五千億円。官製の特需で一番大喜びしているのは不動産業界ではないか」(「東京」六月十四日付)、「国有地売却に民間企業の関心が集まっている」(「日経」同日付)、「都心の一等地にある物件が多く(不動産業界にとって)魅力的なビジネスチャンス」(「読売」同日付)と冷やかな見方を示すようになった。
 六月十三日、「国家公務員宿舎の移転・跡地利用に関する有識者会議」は、東京二十三区の公務員宿舎の移転、再配置と跡地利用について「報告書」をまとめた。今後三年間で百三十四個所(六一七〇戸)、十年間で二百三十三個所(一万〇八四〇戸)の公務員住宅を廃止し、約七千戸を移転・建替えするというもので、売却等の具体的場所も示している。
 このまま放置すれば、そのほとんどが特定企業の利権の餌え食じきにされる可能性が高い。国有地を効率的に活用したり、不要な土地を売却したりして財政に資することは必要であるが、それを口実に無理矢理、国有地を吐き出させようというのが不動産開発企業群のもくろみである。


 "官から民へ"に巣食う企業として、オリックス、セコム、不動産開発会社を取り上げた。しかし官業の民間開放で潤うのは、これらの企業だけではない。他の商社、金融機関、生命保険会社、ゼネコンなどにもビジネスチャンスをもたらす。
 日本経団連が毎年の「規制改革要望書」で、執しつ拗ように「行政改革」を求めてきた最大の理由がここにある。"官から民へ"とは、官業の民間大企業への「払い下げ」にすぎない。まさに平成の「殖しよく産さん興業」である。
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